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『約束した未来』

スーパー「それは、突然現れた・・・」

Zoom画面にゆみ、神様。

ゆみ「ん?・・・誰?」

神様「とんでもない、あたしゃ神様だよ」

ゆみ「志村(ピー音カブる)・・・(淡々と)とぼけてんのか、じじい」

神様「とんでもない、あたしゃ神様だよ、アゲイン」と、額の神マークを指差す。

ゆみ「殺すぞ、こら、おい」

閻魔大王、声から先にinしながら「それは無理なことでございますねぇ」

悪魔も、声から先にinしながら「神様殺しちゃったら大変だー。ま、コロセナイケド」

ゆみ「・・・・・」

ゆみ、無言で何やら画面を操作するが、「あれ・・・退出できない・・・」

悪魔「こいつ、Zoomだと思ってんだ!」

閻魔大王「ここはZoomの様であってZoomではない」

神様「お、禅問答かの。負けんぞ」

悪魔「ちゃうよ!大喜利だよ、神様!ギャハハ!」

神様「む」

閻魔大王「神様、お黙りください。今、わたくしが話しているところなのです」

神様「む」

ゆみ「あー、もう、なんなの?お前ら」

悪魔「ウチ、悪魔。こっち閻魔大王」

閻魔大王「お初にお目にかかります」

ゆみ「なんで最後のお前だけ、”和”なんだよ」

閻魔大王「和洋折衷とでも申しますかねぇ」

ゆみ「お前ら、(自分の額を指差して)マーク無いじゃんよ」

悪魔「神様だけ分かりゃいいの。ウチらオマケみたいなモンだからさ。ま!ホントは神様が目立ちたがりってだけなんだけどね。ウキキキキキキキ」

笑いにかぶって、閻魔大王「さて、事情も飲み込めたところで、進めましょうか」

ゆみ「なんも飲み込めてねーよ」

閻魔大王「あなたは亡くなったのでぇす」

SE「チーン」

ゆみ「はあ?」

閻魔大王「しかし、今、あの世では、人口過多によるキャパオーバーとなっています」

悪魔「ハハッ!死人なのに、人口って、なんか変だよねー」

神様「ほっほっほ」

閻魔大王、ジロリと神様と悪魔を見るが、敢えて続ける。

閻魔大王「そこで、若い死亡者には、天使か悪魔の見習いになっていただきます。最近、そういうシステムになったのでぇす」

悪魔「でね、天使か悪魔かを選ぶトコなんだよ、ここは。あの世も結構大変だろ?」

ゆみ「いい加減にしてよね」

神様、閻魔大王、悪魔「?」

ゆみ「ワケのわかんないことばっか言いやがって。もう、帰れよ、お前ら」

悪魔「ほんと、口が悪いなぁ」

神様「お前には言われたくなかろう」

閻魔大王「帰れません。わたくしたちも、あなたも」

ゆみ「あのなぁ」

閻魔大王「(メガネをかけ、記録を読み上げる)箱根ゆみ、16歳」

ゆみ「うん?」

閻魔大王「両親は仲睦まじく、特に不幸な家庭でもない。それなのに、周囲には常にひねくれた態度。クラスメイトともまったくの没交渉」

ゆみ「ちょっ、ええ・・・?」

閻魔大王「9歳の時に足に怪我をし、バレリーナの夢が挫けてしまったことがその根底にある」

ゆみ「やめてよ・・・やめてくだ」

閻魔大王「そして、あまつさえ、死にたいなどど、ことあるごとに口にしたり、SNSに書き込んだりしている」(メガネを外す)

悪魔「生きてても楽しくないんだね。そういうネガティブな発言ばかりしてると、死が訪れ易くなってしまうんだよ。イッツ・オートマティック!」(ニコニコ〜)

ゆみ「ええ・・・そんな・・・そんなの・・・」

神様「なんじゃ?」

閻魔大王「本心ではないとでも言うのかな?死ぬにはまだ早いとでも?」

悪魔「もっと、たっくさん背徳を経験したいの?若くして美しいままに死ぬのもいいじゃないか!あ〜はぁん」

ゆみ「い、イヤだよ。まだ死にたくない・・・!」(うつむき、両手で顔を覆う)

神様「そんなに生きたいか?」

ゆみ、ハッと顔を上げる。

神様「なら、無かったことにしてやろう」

ゆみ「・・・!」

閻魔大王「10代で死んでしまった方々には、確定前に生き返るチャンスを差し上げているのでぇす。最近、そういうシステムになったのでぇす」

悪魔「悪魔としちゃあ、”ケッ”てなシステム改変なんだけどさぁ、人が増え過ぎちゃって、あの世も色々と参ってるってワケだ、これが」

神様「但し、30歳までじゃ」

ゆみ「えっ・・・?」

閻魔大王「30歳で再審査があります。その時にもやはり生きる気力が持てていなければ・・・即アウトになります」

神様「(何故かまとも)これからはもっと素直になって生きるんじゃよ。良いな?」

ゆみ「(呆然と気が抜けている)・・・・・」

閻魔大王「約束できますか?」

ゆみ「はい・・・」

悪魔「声が、小さーい!」

ゆみ「はい!そりゃもう・・・!」

閻魔大王「よろしいですか?」

神様「いいよ」

閻魔大王「では」

ゆみ、悪魔、神様、閻魔大王、と、画面から消えてゆく。


スーパー「10年後・・・」

神様、閻魔大王、悪魔。

閻魔大王「(メガネをかけ、記録を見ている)いけませんねぇ」

悪魔「どしたー?」

閻魔大王「ゆみですよ。次第に大胆になっていますねぇ。生き返った直後は、明るく活発的になっただけだったのですが」

悪魔「(記録を見て)マジか。新興宗教の教祖になってんの?わぁお!」

神様「むー」

悪魔「へー。わたしは神と会話した、か!確かに!」

閻魔大王「崖から飛び降りる、猛電流を浴びる、毒蛇に噛まれる。無謀な真似をやってみせ、その都度お布施で大儲けしていますね」

悪魔「詐欺だ!詐欺詐欺!!あははー。やるー!」

閻魔大王「(メガネを外し、拭きながら)言ってしまえば、30歳まで保証された命になりますからねぇ。恐れるものが何も無くなってしまったのでしょう」(メガネをしまう)

神様「やれやれ。まずかったのう」

閻魔大王「神様、どれになさいますか?」

悪魔「えっ?オプション発動?するの?やっちゃうの?」

神様「うーん・・・これ」

閻魔大王「かしこまりました」

悪魔「(悪魔なので、全然可哀想そうでない)あーあ、可哀想ー」

神様「ポチッとな」

暗転。

SE「ポチッ」

スーパー「事故って、死ぬまでベッドの上コース」

終わり

動画はこちら。
森谷雄ドラマチック×シネマチックスクール制作作品『約束した未来』
出演:中村 一咲、山口 明日美、中野 裕子、浅野 智
作・イラスト・編集・演出:浅野 智


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