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ライトノベル新人賞が受かるコツ その2 ~二次選考~

■二次選考って何?

『二次選考』とは、一次選考で足切りした作品を『さらに絞り込む』段階です。
その過程では、様々な欠点がある作品が弾かれます。

具体的には、『決定的な弱点がある』、『大きな矛盾がある』、『キャラが不快』、『キャラが多すぎ』、『単語や語句に問題あり』、『主人公に魅力がない』、『誤字脱字が多すぎ』など、『小説として最低限の事は出来ているが、何か大きな欠陥がある』作品が落とされる傾向にあります。

■決定的な弱点って何?

一言で表すなら『欠陥』です。
話は一応まとまっている、そして設定やストーリーにも大きな実順はない、けれどライトノベルとしては『致命的』なものを抱えている――その場合、二次選考で落とされる可能性が高いです。

数が多いため、それぞれの項目ごとに分けていきましょう。


・言葉が難解すぎる、クドすぎる


これは比較的初心者が陥りやすい傾向にあります。 
ライトノベル作家を目指す方はヒット作を読み、「よし自分も!」と思う方が多いと思うのですが、その作品の影響を強く受けるあまり、その『劣化コピー』になってしまうパターンですね。

具体的には、Fateシリーズや、西尾維新作品、野崎まど作品、その他個性的な作品――その作者・作品に特徴的な個性がある場合、それの劣化になってしまうパターンです。

私も以前はこのタイプでした。

当時、西尾維新さんの作品や狼の香辛料シリーズなどにハマっていて、難解な言い回しや厨ニ的な文章を書くことに夢中だったのですね。そうしたら起承転結も話の繋がりも微妙で、『作品として未熟なもの』になってしまいました。

当然、新人賞では一次選考で落ちまくりです。良くて二次選考止まりまででした。

個性的な作品は、卓越したセンスがあってこそ成り立っている作品です。そのため『模倣するのが非常に難しく、初心者がお手本とするには難しい作品』とも言えます。

磨かれたセンスによって出来た作品のため、多くの場合は劣化、あるいは中途半端な部分だけ会得する事にでしょう。
例えばですが、

それは、炎のような男だった。
それは、紅蓮のごとき男だった。

このような、厨ニ的文章は、要所要所で使うと効果的な場合もあるのですが、多すぎると読みづらくなって失敗します。書いている本人は良いのですが、読み返してみると多分、「なんだこれ……」とドン引きする場合もあるかもしれません。


対策としては、『応募する前にかならず読み直してみる

ただし、書いた直後に読み直してもあまり意味はありません。執筆した作者は、ランナーズハイみたいな気持ちになっているため、『つまらない文章でも面白く感じる』状態が多いものです。
なので、時間を置く(出来れば三日から二週間くらい。最低でも一日は間を置くべき)と、冷静に自分の作品を評価出来ると思います。

・大きな矛盾がある


これもありがちなミスで、大きな失点に繋がります。
キャラが良くて文章も問題ない、そしてギミックなどにも惹かれるものはある。けれど、『主人公が言ってる事とやってる事が違う』、『説明した設定を無視した展開・ストーリーになっている』、『死んだはずの人物がいつの間にか生き返っていた』など、矛盾が大き過ぎる場合ですね。

大なり小なり、作品では矛盾は起きてしまう事は多いと思います。特にファンタジーなどは、その世界独自の歴史があるので設定も膨大になるため、小さな矛盾は発生してしまう事は多いと思います。

それが些細なものなら問題は薄いですが、(選考している方も気づかずに、あるいは気づいていても見逃してくれる)主人公の言動が滅茶苦茶で、さらに設定通りに話が進んでいかない場合など、大きなマイナス部分があると厳しくなります。

物語は『納得』や『感動』の積み重ねで出来ています
ようするに、架空の舞台で登場人物たちが面白おかしく活躍する、あるいは素晴らしい活躍をすることで、その過程に読者は心揺れ動かされます。

なのに、矛盾がある場合はそれを素直に楽しめません。感動的なシーンも魅力半減です。なので、大きな矛盾点はあればあるだけ減点になります。

例外的に、ヒット作の中にたまに矛盾が指摘されてアマゾンレビューなどで盛り上がる作品がありますが、それは希少な例として思ってください。

自分の作品を直す場合
『友人・知人・家族に読んでもらう』、
『ネットに投稿してみる』、が簡単な方法でしょうか。
思いもよらぬ部分で矛盾が結構が見つかると思います。

・キャラが不快

これはある意味で最も厳しいパターン。
主人公やヒロイン、サブキャラ、悪役全てを含みます。
作品内に矛盾点はなく、文章も綺麗、でもキャラの言動が外道過ぎる。あるいは独善的すぎる――など読んでいてイラッとさせる作品です。

ぽっと出のサブキャラならまだ許容出来るとは思うのですが、主役級のキャラが不快な言動を繰り返すと読む側としては減点です。

特にライトノベルはキャラに感情移入をして読む場合が多いので、独善的なキャラや外道すぎるキャラは嫌われます。

特に重要なのは、主人公とヒロイン

作者の理想が詰め込まれた分身のような主人公だと、作者の陶酔感が溢れすぎていて不快に思うことも多いでしょう。

またヒロインに関しても、『主人公に世話になったのにちっとも感謝しない』、『ひたすら主人公に命令してくる』、『暴力を振ってくる』、『考えなしに無謀なことをする』――など、理不尽や独善的なキャラは嫌われる傾向にあります。

ヒット作品は主人公やヒロインに人気が出るものですが、逆に言えば主人公やヒロインに不快感を覚えると物語としては致命的と言えます。

読者は楽しみたいのであって、不快な思いをするために本を読んでいるわけではない、前の記事でも書きましたが、『読者が読んでくれている』という気持ちを忘れずに書いてください。

このパターンの対策としては、これも友人・知人・家族に読んでもらったり、ネットに投稿して感想をもらうことかと思います。

キャラが不快かどうかは正直作者だけでは判らないことが多いので、『誰かの視点』はかなり重要です。

それが難しい場合は、『別の作品を書いてみて、改めて前の作品を読んでみる』のも良いと思います。
別の作品を書けばひとまず前の作品のことはある程度忘れているはずなので、ある程度は客観的に見ることが出来ると思います。
そこで「このキャラ不快だな」、と思ったら改善すべきです。

・キャラが多すぎ

「どうしてこのキャラ出てるの?」とか、「このキャラ他のと被ってるよね?」と思ってしまうパターン。
新人賞を目指す方は自分の好きな要素を詰め込む場合が大半だと思いますが、その場合う、自分の理想を詰め込みたいあまり、必要以上にキャラを増やす場合があると思います。

主人公の友人キャラが三人だとか、ヒロインの取り巻きが四人だとか、大した役割もないのに2、3ページだけでてもう出てこないなど、『不必要なキャラ』が多いと、読み側としては疲れます。

覚えやすい名前や面白いキャラならまだなんとかなるかもしれませんが、基本、キャラが多いということは個性も分けなければならないと言うこと、そして役割も用意しないといけないため、面白くなるはずのシーンでもつまらなくなる場合があります。

例えば、『このすば』でヒロインが十五人いたらどうなるでしょう。
主人公のカズマは心労でぶっ倒れると思います。読者もクドいと思うでしょう。

一つの物語に、ヒロインは三人~四人まで。サブキャラはメインキャラ一人につき、一人から二人まで。
悪役キャラも合わせて、十人くらいに収める。全体としては、そのくらいのバランスがちょうど良いと思います。

口絵2 - コピー

・グロやエロが多すぎ

これも作者によっては陥りやすいパターンですね。
グロいシーンやちょっとエッチなシーンはヒット作には大抵の場合あるものです。
例えば『リゼロ』にはグロシーン、『このすば』にはちょっとエッチなチーンがあるのは知っている方も多いのではないでしょうか。
それぞれ見る側としてはドキドキしたり、購読意欲がそそられる場合が多いと思います。

ただそれもバランスの問題で、あまりに偏っているとマイナスとなります。
例で言えば『リゼロ』にはグロシーンもありますが、『平和なシーン』も多く記されています。
『このすば』の場合も、キャラが馬鹿やっているシーンが印象深いですが、要所要所で真面目に戦うシーンもあり、バランスが取られています

こういったことを疎かにすると、読む側としてはうんざりします。

読んでも読んでもグロ、グロ、グロ。またはエロばっかり。

メリハリがないのですね。
こういった比重の問題はプロになっても結構陥ります。
書きたいシーンや需要を考えるすぎるあまりドツボにはまるパターンですね。

対策としては、グロテスクなシーンがある場合、『癒やしとしてのシーンを多数入れる』。
エロの場合、そればかりではなく、話の締まりとして真面目なシーンを多少は入れる。それだけでかなり印象は変わります

あとは、単純にグロやエロの描写が『濃すぎる』場合もあります。
描写力が凄すぎて、生々しい、読んでいると顔が引きつるレベルですね。

これは『調整』してください。他のライトノベルを読んで、『どこまでのグロなら大丈夫か』、『どこまでのエロなら許容されるのか』、バランス感覚を養うことで良作に繋がります。

・ダサい、古い

これは主にネーミングがダサい、古いパターンでしょうか。
例えば、技名で『スーパー』何たらとか、『オメガ』なんたらとか、小学生や中学生が考えたようなネーミングは今どき厳しいです。

もちろん地の文章と合っている場合、多少は許容されますが、それでもプラスにはなり辛いでしょう。

また、『すでに使い古されていて、陳腐に思えてしまう』場合もあります。

これは2000年代から2010年代に能力モノや俺tueeeeeeeモノが流行ったおかげで、かなりの単語が使われました。その結果ギリシャ系や北欧系など神話・伝説のワードが結構使われたので、結果的に陳腐に見える場合もがあります。

また、ジャンル自体がそもそも古い場合もあります。
例を挙げると、『不思議な部活モノ』や『変な部活モノ』、『学園バトルモノ』などは、一時期流行ったジャンルはもう需要が過ぎてしまったので、基本的には難しいと思われます。

よほど文章やギミックが優れていれば別でしょうが、歴代の大賞クラスの技量がなければ厳しいでしょう。

・誤字脱字が多すぎ

これは以外と引っかかる方が多いかもしれまん。
書籍ならば校正の方がいるので多少は見逃してもらえるかもしれませんが、新人賞では誤字脱字はあればあるほど減点と思った方が良いです。

一次選考や二次選考を行う下読みの方々は、数多くの作品を読まなければなりません。なので、少ない時間で内容を把握するために、手早く内容を理解する必要があります。
それなのに誤字脱字が散乱していたら、内容を理解することが難しくなります。

ストーリーやキャラが良いのにこれでは勿体ないですよね。
これも『自分以外の誰か』に読んでもらい、間違いを指摘してもらうと良いと思います。

・改行が少なすぎる

これは出版社によって基準は変わると思うのですが、重厚な内容にするべく改行を減らした場合、それだけで弾かれる可能性はあります。

ライトノベルは読みやすさを重視した『娯楽作品』なので、内容を理解されやすいものが好まれます。
その中で、改行は読みやすさの一環を担っており、数行ごとの改行は必須となります。
もちろん内容によりますし、前述の、出版社によって基準は変わりますが。
具体例を挙げると、

○比較的改行が多めで、一行の文字が少なめのレーベル
・ファンタジア文庫
・MF文庫
・ファミ通文庫

 →『読みやすさと軽さ重視

○比較的改行が少なめで、一行に文字が多く書かれているレーベル
・電撃文庫
・ガガガ文庫
・HJ文庫
・オーバラップ文庫

 →『重厚さと臨場感重視


○中間(多め少なめ、どちらも同じくらい)
・GA文庫
・スニーカー文庫
・ダッシュエックス文庫

 →『読みやすさと臨場感が半々

以上、新人賞を設けていて、比較的規模や歴史がある所を列挙致しました。
もちろんこれはあくまで『傾向』であり、作品によっては改行の多さはかなり変わってくると思います。
流行によって若干の変化も見られますし、現在(2021年6月)で分ければおそらくこうなるだろう、という一つの例としてお考えください。

・カテゴリーエラー

『その出版社が望んでいる作風』から大きく外れている作品は弾かれます。
前述の『改行』と少し関係するのですが、全体的な作品の印象として、『合う合わない』というのは存在しています。

軽めの作品を望んでいるレーベルは、重めの作品は避ける傾向にありますし、重厚な作品を望むレーベルは軽めの作品は弾く傾向にあります。

もちろんテーマや完成度によっては例外もあると思います。ただそれはあくまで希少ケースです。なので、『そのレーベルが何を望んでいるか』は重要となります。

大雑把な分け方としては、

流行を取り入れたものを重視する
・ファンタジア文庫
・MF文庫
・GA文庫
・スニーカー文庫
・ダッシュエックス文庫
・HJ文庫
・オーバーラップ文庫

流行に関係なく、小説としての完成度を重視する
・電撃文庫
・ガガガ文庫
・ファミ通文庫
・MF文庫の大賞


もちろん、上記はあくまで大雑把に分けたものです。例外もありますし、その年の編集部の方針によっても変動します。

なので、結局のところ『流行』も小説としての『完成度』も一定以上は必要になります。

なので、あくまで目安の一つとしてお考えください。

そしてもちろん、『程度の差』もあります。いわゆる『なろう系』に近い作品を重視するレーベルもあれば、『なろう系に近いものは弾く』レーベルもあります。
新人賞は新しい才能を見つける場所なので、単純な小説の完成度を重視するタイプか、売れているジャンルなら売れるはずなのでそこを重視する、という考えの違いですね。

■終わりに


今回は主に二次選考を突破する方法について記述してきましたが、これまでのことを意識していけば、二次選考を超えることは出来ると思われます。
ただ、二次以降はカテゴリーエラーも結構重視されますし、その出版社が望んでいる内容かどうかも重要視されます。
なので、二次選考が落ちたからといって悲観することはなく、別のレーベルに送るのも一つの手だとは思います。
(一次選考を突破したということは、小説として基本は出来ているはずなので)

ただ、もし二次選考止まりが何度も続く場合は、致命的な欠点を抱えている場合が多いです。なので、新しい作品を応募するべきとは思います。
(もしくは、決定的な弱点を直すなど)

繰り返しになりますが、二次選考で落ちてしまう作品は、『小説としては問題ない、けれど何かしら大きな欠点がある』作品が多いので、その致命的な部分を改善出来れば、もっと上に行ける可能性はあります。

具体的には、前述しましたが、『友人・知人・家族に読んでもらう』、
『ネットに投稿してみる』など、『自分以外の目で読んでもらう』ことが大切です。

それでも落ちてしまう、そもそもそういった環境が作れない、という場合は、別のテクニックが必要になります。


次回はそういったもう一歩先の技術に関してと、『三次選考・または最終選考』に落ちてしまう場合について、記事を書いていきたいと思います。

何かしら皆様の役に立てれば嬉しいです。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

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