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内申点の謎を解き明かす!「内申点ワールド」始めます

こんにちは、学びクリエイターの朝森久弥です。

日本の学校教育の話題を扱っていると、「内申点」ということばが頻繁に登場します。私は「進学校」の専門家ですが、Googleトレンドによれば「内申点」は「進学校」以上によく検索されていて、世間の関心が高いことがわかります。

Googleトレンドの検索結果画面(2023年8月14日19時に朝森久弥が検索)

そこで私は、進学校について長年調査・分析してきた経験を活かし、内申点の謎を解き明かす企画「内申点ワールド」を始めることにしました。
内申点は世間の関心が高いにもかかわらず、その実情があいまいにしか理解されておらず、しばしばディスコミュニケーションが起こっています。また、内申点の存在自体が議論の対象になることがよくありますが、認識を共有していなければ建設的な議論はできないでしょう。「内申点ワールド」は、世間の内申点に対する解像度を上げることで、よりよい学校生活や教育制度の構築に貢献することを目指します。

内申点の定義

内申点がなぜ世間の注目を集めるのかと言えば、入試の合否に影響を及ぼすからです。しかし、教育委員会が公開している高校入試の募集要項には「内申点」ということばは出てきません。「内申点」は正式な用語ではなく、世間の人が使っている俗語の一種なのです。2023年現在の日本で「内申点」と言った場合、おそらく、

通知表に5段階で記載される、各教科(中学なら9教科)の成績の合計

という認識が一般的ではないでしょうか。ただし、この認識は時として揺らぐことがあります。たとえば「生徒会役員を務めると内申点が上がる」という意見を聞くことがありますが、この場合の「内申点」には“教科の成績および特別活動などの実績”という意味が込められています。

私の「内申点ワールド」では、内申点の定義は次の通りとします。

日本の小学生・中学生・高校生が学校・企業を志願する際に提出される調査書(報告書)の記載事項のうち、点数化されて選抜の資料に利用されるもの

内申点の話題がもっとも頻繁に出るのは高校入試の場面、つまり中学生ですが、最近は中学入試でも内申点が考慮されることがあります。また、大学入試でも学校推薦型選抜や総合型選抜であれば内申点が重視されます。以上を踏まえて「小学生・中学生・高校生」という文言を定義に入れました。

学校・企業」としたのは、学校の入試だけでなく、企業の就職試験でも内申点が求められる場合があるためです。とくに高卒新卒で企業に就職するケースを念頭に置いています。
高卒就活は学校推薦がメインで、システムは大学入試の指定校推薦に似ています。学校に来た求人票の中から受験先の企業を選び、原則として1人1社ずつ受験し、内定が出た時点で就職先が決まります(指定校推薦に比べると、不合格率が若干高いようです)。受験先の企業には調査書が提出されますが、校内選考の際に内申点が良い生徒ほど優先的に受験先に選べるという点で、内申点は重要な要素です。

調査書(報告書)」は学校から受験先に提出される書類で、試験の実施主体が書式を定めています。そもそも学校の先生は、児童・生徒一人ひとりの学習の記録をまとめた指導要録という書類を作成しなければいけないのですが、入試などで「調査書を提出せよ」と求められた場合は、指導要録に記載した内容の一部を調査書に転記して提出することになります。
調査書には、
・各教科の学習の記録
・特別活動等の記録(生徒会活動や部活動などの実績)
・出欠の記録(欠席日数が何日あるか)
などが記載されます。高校入試であれば、このうち「各教科の学習の記録」に、各教科の評定、いわゆる5段階での成績が記載されます。これこそが、世間一般で認識されている「内申点」ですね。
ちなみに、ほとんどの入試で調査書は「調査書」とよばれていますが、東京都の都立中高一貫教育校の入学者決定では「報告書」ということばを正式に使っています。

調査書の記載事項のうち「各教科の学習の記録」は確実に点数化されますが、ほかの記載事項は点数化されないことが多いです。点数化されないからと言って考慮されないとは限りませんが、点数化されるものの方が合否に及ぼす影響が大きいと言ってよいでしょう。
ただし「生徒会役員をしていたら加点する」のように明言している入試も存在するので、こうした入試では加点も含めて内申点として扱います。

今後の展望

大きく分けて、3つの方向性があります。

1.内申点がどのように利用されているか

志願先で内申点がどのように利用されているか、ありていに言うと、どのように合否に影響するのかを調べて紹介します。ひとくちに「公立高校入試」と言っても、都道府県によって評価の仕方が違ったり、評価の重みが変わったりします。自分が住む地域以外の事情も知ることで、内申点への理解を深めることができるでしょう。

2.どのようにして内申点が決まるのか

内申点の基になる学校での評定がどのように決まっているのかを調べて紹介します。同じ5段階評価でも、学校によって評定の分布に違いがあることがよく指摘されます。こうした違いがどれほどあるのか、どのようにして生まれるのかを明らかにしていきたいです。

3.内申点はなぜ利用されるのか

「入試に内申点を使うな」という意見もあります。一方、日本では戦前から入試に内申点が利用されてきました。これだけ長きに渡り内申点が利用されてきた歴史的背景を探ります。また内申点と同様に、学校での成績評価を入試に利用するのは世界的な傾向です。日本国外で学校での成績評価が入試に及ぼす影響を調査し、日本における内申点の在り方と比較検討します。

願わくば、「進学校Map」のように多くの人に届く企画にしていきたいと考えています。それなりに長期間に及ぶ活動になると思いますが、応援いただけると幸いです。

「進学校Map」の記事は↑にまとめてあります。当分は「内申点ワールド」をメインに更新したいですが、「進学校Map」も折を見て更新していきたいですし、他のトピックスも適宜取り上げていきます。

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