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私は塾関係者ではありません

『進学校Map』をはじめ、学校教育に関するさまざまな情報発信をしていると、結構な頻度で聞かれます。

「あなたは塾講師か何かですか?」

答えはノーです。塾・予備校に通ったこともないです。高校生の時に、冠模試を受けに某予備校の校舎に一度だけ入ったのを除けば、塾・予備校に立ち入ったことすらありません。塾・予備校に勤めるリアル知人はいますが、私自身はいずれの組織にも利害関係はありません。

塾 vs 私だった子供時代

私の両親の教育方針は「学校で完結しろ」でした。きょうだいは私を含めて4人いますが、誰も塾や予備校に通っていません(ピアノは少し習っていました)。親は私に「勉強で分からないことがあれば学校の先生に聞け」というので、私は素直にそれに従い、毎日のように職員室に赴いて質問しに行きました。「質問魔」のあだ名が付いたのは言うまでもありません。クラスメートの大多数は塾に通ったり通信教材をやっていたりしたわけですが、「学校の先生に聞けばタダなのに、もったいないことするなぁ」と思っていました。

ある日、となり町の中学校に部活(卓球部でした)の練習試合に行ったところ、初対面にもかかわらず相手が僕のことを知っていました。聞けば「塾で君のこと、ウワサになっている」とのこと。私は、塾が中学生にとって貴重なコミュニティになっていること、その輪から私がハブられていることを悟りました。今の子にあてはめれば「自分だけLINEやってない、スマホすら持ってない」って感じでしょうか。別に実害があったわけではありませんが、「彼らにお勉強で負けるのはムカつく」と思うようになりました。結局、中学では1学年100人超のうち2位まで上り詰めたものの、1位(塾通い)に勝つことはできませんでした。

高校でもやはり塾や予備校に通っていたり、通信教材をやっていたりする同級生は大勢いました。彼らを尻目に、私は毎日、学校の先生の所に質問を投げかける生活を送りました。ある週の独自統計では、週35コマのうち25コマ以上で、授業後に質問したという記録があります。先生には「君のクラスに行くと、いつも休み時間がなくなるんだよ」とぼやかれたこともありました(その節はすみませんでした)。さりとて、私は学校の先生に頼るしかなかったし、それで十分だと思っていました。「私教育の力を借りずに、任意の大学に進学できることを証明するんだ」とすら思っていました。努力の甲斐あって、校内の実力テストでは1学年300人超のうち最高で2位を獲りましたが、1位にはなれず。大学受験では、1学年上の学年1位の先輩が入学した大学と同じ大学を受験したものの、あえなく不合格になりました。後期日程受験直後、家に某予備校から浪人クラスの入学案内が届きましたが、「こんな下衆な業界のお世話になるものか!」とキレてゴミ箱に叩き込みました。

課金は悪ではない。だが……

後期日程で合格した国立大学に入学した当初から、大学院入試でのリベンジが頭の片隅にありました。とはいえ実家の財力は、私を大学に送るだけでも精一杯。当然、日本学生支援機構の第一種奨学金も借りていました。そこで私は“金策”に走ります。具体的には、学部1年で学科3位以内(やはり1位ではない)の成績を取った結果、某奨学財団の奨学生に採用されたのです。この結果、大学院修了まで給付奨学金がもらえることになり、大学院進学への見通しが立ちました。

第一志望の大学の大学院に進学を果たし、上京した私を待ち受けていたのは、数多の重課金プレイヤーたちでした。同じ大学の学生は過半数が私立・国立中高一貫校出身で、中学受験の経験者です。SAPIXだの鉄録会だの、私の想像の埒外だった課金メニューが東京には溢れていることを、この時初めて知りました。たとえ子供の時に知っていたとしても、我が家では使うことは叶わなかったでしょうが、そうした課金を駆使してきた人々と、18歳の時に知らずに戦っていたという事実に、そこはかとない無力感を抱きました。

やがて私は、学校教育、とくに教育環境の地域差に興味を持つようになりました。調べれば調べるほど、私教育は(適切に利用すれば)相応に効果があることも理解できました。課金できる人は、したらいいと思います(そして保護者の方に感謝しましょう!)。けれども、私の心には常に、在りし日の私の姿があり、日本全国津々浦々に少ないながらもいるだろう“私”たちの姿があります。だから、私のすべきことは、塾や予備校とは少し違うところにあるのかなと思うのです。

であれば、「あなたは教諭(いわゆる学校の先生)なのでしょうか?」と尋ねられるかもですが、実はこれも違います。教員免許は持っていますし(高校理科専修)、教員採用試験に志願したこともありますが(受験はしていない)、別の職に就いています。この辺は成り行きですね。

そもそも匿名のWebコンテンツの信頼性は……と言ったらキリがありませんが、上記のようなバックグランドの人間が、このnoteで記事を書いているということを、ご理解いただければ幸いです。

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