出会いなおす瞬間
久しぶりに対面で大好きなピアニストさんに合わせていただきました。
涙がでてしまったらどうしようかなと思ったけれど、第一声から嬉しさが漏れ出ているのが自分でもわかるほど、楽しそうな声がでてきたのを感じて、ちょっとびっくりしました。笑
本番に向かって作っている友人も合わせにきていて、そのテンションを見るのもまた嬉しくて嬉しくて。
レッスンももちろん楽しいけれど、やはりアンサンブルをみたりしたりすることが好きだなぁとこころから。本当に心から思いました。
それとともに、薄々感づいてはいたけれど、3月からの人前で歌わない生活…演奏を共有しない時間がすごく辛かったことにも気が付きました。
新しいことを色々始めてそれはもちろんすごく楽しい。
ただ演奏に関しては「自分だけではないのだから」と、自分で思っていた以上に押し殺していたのだと。
長年帰省中に時間がなく、日本で歌うことをしていなかったために、今回はまた日本でも聴いていただくための準備をするはずでした。そういったことがのびていくことへの焦りもありました。
オンライン(リモート)での機会はなかったわけではないけれど、斜に構えていたとかそういうことではなく、本当に"自分が歌う"ことに対する気力がなくなっていました。
録音をやりとりしたことで呼んでいただいた対面のコンサートが中止になったことなども心の底では大打撃になっていたと思います。
師匠がよく
「プロはどんな時でも歌えなければならないが、麻美の場合は心がすごく繊細だから、幸せじゃないと歌えないよ。でもどんなときでも幸せになる選択さえすれば、大丈夫。だから安心して歌いなさい。」
といってくださるけれど驚くほどそれは本当でした。それではよくないのかなと思った時期もあるのだけれど、今ではそれを受け入れてとにかく幸せでいた方がいいのだなと思っています。
今日までずっと、心が辛い間は練習こそしていたけれど基礎練習や身体作りなど表現よりも精度のことを考えた内容で練習していました。
たぶん、少し触れたら割れてしまう程度にはぱんぱんになっていた想い。こわれてしまわないように一緒懸命楽しいことをかき集めていました。
そのぱんぱんだったものが、嬉しい時間とともにきれいに流れていったのがわかり、ほっとしています。
「ピアニスト紹介して」「合わせについてきて」「声を聞いて思ったことを言って」と連絡をくれた友人のおかげで
「自分ももう一度歌いはじめるのは今だ」と思え、決めてしまったらまた新しい機会をいただき…
やっとやっと今年度が始まるのを感じます。
友人とはイタリアで出会い、一緒に歌ったり、歌の話をしたりしていたけれど、しばらく会わない間に声の美しさが増してすごく魅力的になっていました。
注意深く繊細で、すごく誠実だけれど人間味に溢れていて優しい。
そんな人柄があふれる声で歌う歌曲たちは初めて聞いた曲のように美しかった…。
再会ではなく、出会いなおしという言葉がぴったり。友人の歌声とともに、耐えてきた時間の全てが流れて清められていきました。どうもありがとう。
そして今日も素敵なピアノと宝物のような言葉をくださったピアニストさんにも大感謝です。
G.Faure Nell
C.Debussy Romance
時を経て、また色々なことを越えて音楽は色やかおりをかえてゆく…そんなことすら意識から遠のいていたけれど、また一つずつ味わうエネルギーがもどってきました。
また友人のその歌を聴ける日を楽しみにしながら、明日も今の自分にできることを…そしてなるべく近いうちに、この友人とも共演できますように。
大切な時間を使って最後まで読んでくださりありがとうございます。 いただいたサポートはその時その時で私が選んだところへの募金として使わせていただきます。