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桜襲の比翼

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桜襲(さくらがさね)の比翼 第3話

4数日後、雪次の店は想定外の客人を迎えることになった。

「もったいのう、もったいのうございます」

雪次はどこか不遜ないつもの態度を引っ込め、床に額を打ちつけんばかりにひれ伏している。ただごとではない、と真鶴が奥から出てきてみると―

­「真鶴、だな」

心の臓が凍るかと思われた。

どういう運命の巡り合わせか―先般、奇跡の再会を果たしたばかりの平時忠本人が今、またしても目の前に立っているではな

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桜襲(さくらがさね)の比翼 第2話

第二章

1 コノリとその仲間は、密命を帯びて、さる貴族の屋敷に靴履きのまま上がり込んでいた。

華やかな几帳や屏風、精巧に彫り物がなされた鏡や香炉、文机。名門貴族の体面を取り繕う、きらびやかな調度品。

これで、食うにも事欠く生活?馬鹿げている。片腹痛いわ。

 やれ、の一声で、赤ずくめのかむろたちが一斉に方々に向かえば、辺りは野分の後の庭のようになった。そう、風雨に薙ぎ倒され、荒らされ尽くした

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桜襲(さくらがさね)の比翼 第1話

桜襲(さくらがさね)の比翼 第1話

序章

平安京—やんごとない貴公子や姫たちがあまたひしめく、華やかな文化の中心地。

 しかし、物事には光あれば陰があるのが、世の常。この美しき都も当然、陰を隠し持っている。嫉妬、怨念、欲望、虚栄心—人の数だけ沸き起こる感情を、澱のようにそこかしこに抱えている場所なのだ。

とはいえ、今宵の紅葉の宴は、そんな都の闇を忘れさせるような賑わいである。真っ赤に染まった紅葉は、この屋敷の主、平清盛(たい

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