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月イチ感想・6月に読み終わった本

外出自粛のさなかで桜は見逃してしまいましたが、アジサイはバッチリみることができました。やっぱり花はいいですね。生活に色がひとつ増えるだけで、豊かになった気がします。でも今月は全然集中できなくて漫画を多く読みました。

1:『What's Michael?』(ホワッツマイケル)全巻

1984年〜1989年にモーニング(講談社)にて連載。漫画です。

いろいろな猫飼いの家庭とそのなかでの猫の振る舞いが短編に収まって、とっても読みやすいです。進められて読んだんですが、なんというかシュールな感じで良かったし、力が抜けました。

茶トラの猫の名前がどの家庭でも「マイケル」。そこに勝手に哲学的な普遍的なものを感じます。

2:『コスモス楽園記』1巻

リンクはできるだけ出版社のに、と考えているのですが今回はアマゾンですごめんなさい。

先月に、ますむらひろし先生の『銀河鉄道の夜』を読んで、ますむらワールドを見たくなった私。手軽に読めるものはないかとアマゾンkindleを見てみてると、これが無料で見れるようになっていました。

猫ばかりの世界で起こる不思議なことが描かれています。主人公はたまたまこの世界にたどり着いた人間。この主人公を家に引き取る猫がまた能天気で、不思議な部分も持っていて、読み進めて飽きません。ますむら先生の幻想的な描写に癒やされます。

1巻にはゴッホが描いた建築物を建て、ゴッホのような奇行(と言ってしまいますが)をする猫が一匹出てきます。彼のような猫が馴染める街なんて、平和で素敵なんでしょう。

ところで後日、まったく関係のないところで「ゴッホ(実在の方)が生前売れなかったのは、彼自身のせいである」という記事をどこかで読みました。
記事によると、ゴッホ自身が変人過ぎたために、彼を支援していた人がパトロンになってくれそうな人への紹介を控えていたのだとか。
たしかに、いくら作品に感銘を受けても、描いている人の印象が悪かったらお金なんて出さないかも……と考えてしまいます。

3:『終わらない歌』

hontoで安く購入できたので読み始めたのですが、これ続編なんですね。でも、そんなことも気にならずに楽しんで読めました。

短編で構成されていて、主人公はみんな同じ年齢。おそらく前の作品ではみんな同じ高校の同じクラスだったのでしょう。誰それの歌声が、あのときのこの一言が、と同級生がそれぞれの主人公に与えた影響が、スッと差し込まれています。

自分の成績は並であるといまいち自信を持てない音大生、オーディションはうまくいかないけれども頑張るミュージカル女優の卵、遠く離れた街で働く選択をした会社員……。いろいろな立場・いろいろな性格の女の子たちが、やがて光を見出すまでの心情が綴られています。
よくまあ、こんなに違う人の心を丹念に描くことができるなぁ、と感服してしまいます。

飲み物片手にイスにしっかりと座って、ゆっくりと空気に浸りたい作品です。

4:『ドロヘドロ』全巻

私が予備校に通っていた頃、途中まで後輩に借りて読んでいました。先日「あの続きが気になる」とふと思って全巻買い揃えました。
これもhontoで購入です。どんなに巻数が重なっても、電子書籍は場所を取らないからいいですね。

トカゲ頭と餃子屋店主が主人公。たびたび国境(?)を超えてきて人間で魔法を練習する魔法使い、それをバットや刃物で撃退する人間、とおだやかな世界ではありません。
流血は当たり前、内臓がはみ出すのも普通、手足首がちょん切れるのも日常茶飯事、とグロいです。苦手な人は薄目で読み進めてください。

1巻からだんだんと広がっていく風呂敷に「これ大丈夫なん?!」と心配になりますが、最後はきちんと収まって、読後感は最高です。
それにしても、よくこんな世界を作り出し、よくこんな密度で書ききったなと思います。

自分の現実世界からこんなに切り離されている世界を作るなんて、私には絶対できないことです。作者の脳みそが何で構成されているのか、ものすごく気になりました。

5:『今、何かを表そうとしている10人の日本と韓国の若手対談』

図書館がやっとこさ再開して、withコロナ初の図書館本です。

いま私のなかでは韓国ブームが来ています。といってもK-POPとか美容とか食とかじゃなくて、社会とか人文系ですかね。最初はなんだったかな。先月読んだ『82年生まれ、キム・ジヨン』がひとつだと思います。
もうひとつ「これはもうちょっと深く知らねば」と思ったのが、映画『タクシー運転手 約束は海を超えて』。勧められて見たんですが、なんじゃこりゃ良いなと。

それまで私が抱いていた韓国のイメージは、美男美女ぞろい、やたらご都合主義で中身のない恋愛もの、ものすごい痛々しいノワール、みたいなものでした。知識がどこかの時代で止まってます。
そんな価値観で『タクシー運転手』を見ると、韓国国内での民主化運動とでも、市民を弾圧する軍、メディアの情報操作など、他人事ではないことが描かれている。しかも、そんな重い内容なのにコメディ色の強いエンターテイメント作品としても面白い。素直にすごいなぁと思いました。

この本は、小説と事実のデータを合わせてしまう(キム・ジヨン)、コメディとシリアスをあわせてしまう(タクシー運転手)、韓国の人たちの感性をちょっとでも知ることができればと思って借りました。
読んでみると、期待していたような国の違いは見られなくて、むしろそれぞれの作家たちが普段から考えていることを、対談からうかがい知ることができます。それはそれで、楽しい体験でした。

6:『フィフティ・ピープル』

こちらも韓国の作家さん。女性です。
前回投稿した、ブックカバーチャレンジで紹介しているので、あんまり細かいことは書きませんが、50篇もの短編の主人公50人が、ある病院を中心に関わり合い、すれ違い、それぞれの人生を生きる一冊です。
まるで自分が神様にでもなったかのような感覚。独身、既婚、結婚直前、医者、学生、老人、若人、子ども、とさまざまな立場の人が登場するので全く飽きません。

私の韓国ブームの話には続きがあって、この前は映画『パラサイト 半地下の家族』を見ました。こちららも前半のコメディから後半のシリアスへとスライドしていく構成。てんこ盛りです。

なんとなくですが、書籍・映画といろいろな要素が組み合わさってできあがるものを見てきたので、「韓国で生まれる作品は、なんとなく骨太」というところで今は落ち着いています。また変わるかもしれません。

7:『新世界より』

SF作品として素晴らしい。第29回日本SF大賞受賞 第1位。そんな評価を見たので、どんなもんじゃいと読みはじめました。

端的にいうと、完全管理された社会の話でした。

おそらくこれまでにファンタジー小説やディストピア作品を見すぎたのだと思います。読みすすめないと現代から過去の話なのか未来の話なのかわからないのは良かったです。その他は、得るものはほとんどなかった(ファンにはごめんなさい)。あとちょっとエロい。

ただ、最近は丁寧に描写する小説をよく読んでいたから世界に入り込むことができなかったのかもしれません。「小説には描かれていなかったけれど、ここのくだりでこうすることができたから、主人公はこうなることができたのか」と推測できるところがあったから。だからもう少ししたら、与えられた影響を発見することができるかもわかりません。

「新世界より」ワールドを自分の想像力で拡張できる人にはこの上ない娯楽作品だと思います。

8:『メイド・イン・アビス』

今月はSF多しですね。

アマゾンプライムでたまたまアニメを目にして、面白かったので原作を読み始めました。ウェブコミック連載中、購入は電子書籍です。

街の中心にある穴。その世界の未知の生物や空間。未知の物体や体験を求めて穴へ下りていく探窟家たち。ドロヘドロ同様、こういう作り込まれた世界観を作り出せるひとは本当にすごいと思います。
線画やトーンではなく、グレーで繊細に彩色されていたり、クリーチャーの造形の独特な感じなど、絵も本当に素敵だと思いました。

本当に素敵だなぁと思ったのですが、こちらもちょっとグロいんですよね。苦手な人はアニメよりも、漫画を薄めで見てもらうのが良いかと思います。
それからストーリーが結構残酷です。こちらは覚悟してもらうしか無いと思います。

面白いんですが、正直、グロい、残酷、ということは別で、この作品にはひっかかっていることがあります。

アニメを見たときには気づかなかったのですが、主人公たち(女児・男児)が裸になることが多いです。これはまあ、探窟する設定上そうなのかも。でも、カバー裏や巻末に、微妙な膨らみのある胸とか、すこし火照ったような肌とかが表現されている絵が印刷されていたりします。それがペド的な性的な表現なのではないかと居心地よくなかったんですが、どうなんでしょう。

ファンのなかには、これを含む表現を作者の”性癖”として歓迎するところもあるようです。ペドそのものを否定する気はありません。性の嗜好も指向も他人が口を出すことではないと考えてます。でも、アニメ化されていて不特定多数が見る可能性が高いのに印刷するのは出版物の倫理的にどうかなぁとか、カバー裏に印刷しているのが悪質じゃないかとか、いや「表現の自由」と言ってしまえばそれまでだし、目くじらを立てすぎなのか、とも思います。

それ以外の部分は本当に面白いので、こんなところで悩みたくないんですけど。とりあえず、子どもには見せたくないなと思います。
こんなところで書いてること自体が矛盾しているかもしれませんが、あくまでも個人の感想として。



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