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UIデザインを学ぶ学生たちと-2021年

東洋美術学校で毎年UIデザイン講座を受け持っています。
年明けから夏休みまでを前期、秋から春休みまでを後期と区切って多様な講座が開設されており、その中で学生たちはさまざまなことを学び、作品を作り、卒業していきます。

私が受け持っているのは、1年生の後期にAdobe XDの使い方(主にコンポーネントやプロトタイプ、共同編集)を学び、2年生の前期にUIデザインを学ぶという講座です。

双方の講座は1年間で一通り学習が終わるという組み立てにしていますが、XDの講座だけ、UIデザインの講座だけ、というように学生が自由に選べるようにしています。

新型コロナの影響で学ぶ環境が変わる

私の講座では、講義よりもワークショップの比率を大きくしています。
先生の話を聞いて考え方や知識を学んだら、即実践。
自分たちで考え、自分たちで作り、発表してみんなで考えるということを繰り返しています。

しかし度重なる緊急事態宣言の発令で学習環境に大きく影響を及ぼしました。
学校の教室→オンライン講座→学校の教室と、学ぶ環境もその度に変更になり、予定していたグループワークの実習時間を短縮せざるを得ませんでした。

代わりに用意したのが、ヒトのものづくりの起源や手の骨格構造、色の認識、動くものの認識、違いの認識、等を知り、それがどうUser Interfaceに活かされているかを考察する時間です。

mmhmmとStream Deckを活用した

昨年度も新型コロナの影響でオンライン授業を行いましたが、私のMacの画面や資料を共有しているので私の姿が学生たちに見えません。
何かを投げ掛けても反応がなく、「では、声を出さなくていいので該当する人は『ノ』とだけコメント欄に書いてください。」
と工夫したりしました。
『ノ』の意味がわからない人が見たら異様な光景なのかもしれませんね。
(学生たちは面白かったみたいで、やたらノノノノノとコメント欄にノが並びました。)

しかし、それでもやはり学生たちの発言には繋がらないというのが講師としての私の悩みでした。
そこで今年度からはmmhmmを使うことにしました。
※mmhmmは教職員に1年間のプレミアム無料提供をしています。

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先生の姿があるとないとでは、学生たちの印象が全然違うようです。
常に私の姿を小さく表示し、できる限り笑顔で講義する。
そうすると自らマイクをONにして発言する学生たち。

「自分はこう思う」「それはこうなんじゃないか」と議論が始まることもあります。これは昨年度にはないことでした。

学生たちが理解できていれば講師である私に対する返答は無くても構わないと思っています。
重要なのは学生たちの発言や意見の交換であり、考察が深まることです。そこに重きを置いています。

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さらに雰囲気を出すためのひと工夫として、Cubaseで学校のチャイムを自作してみました。授業が始まるとか、休み時間終わったとかが音で伝わるので、ほぼ学校と同じ自然な雰囲気になります。
Stream Deckを使ってボタンを押すだけでチャイムを鳴らすことができるようにしたので私自身も非常に楽になりました。
昨年から音で伝えるUIや効果音素材を作って販売したりということを始めたのでちょうどよかったです。

今年度の学習成果発表での気づき

講座の途中で緊急事態宣言が出され、予定していた授業の内容変更を余儀なくされましたので、学生たちの学習深度が心配でなりませんでした。

しかし、結果は私の予想や心配を良い方向に裏切ってくれました。

学習成果発表での学生たちの発表例

・ 日頃使っているスポーツ情報のアプリの改善案。
以前から使いづらさを感じていたが、この授業を受けてその理由がわかった。だから改善案のプロトタイプを作りました。とのこと。

・ 聴覚による心地よさを提供するASMRサービス。
「人々の心に安らぎを」という視点に基づいたペルソナ設定とそれにきちんと沿ったUIデザインが秀逸でした。

・OCRを使ったお勉強アプリ
大正ロマンのような世界観のUIがとても魅力的で技術っぽさをユーザーに感じさせないバランス感に唸りました。

・ プレゼン資料に大きなQRコードを貼り付けた。
XDで作ったプロトタイプを全員が自分のスマートフォンで見ながら発表を聞けるようにしていました。
(これをやった学生は今までひとりもいない)

留学生たちの存在意義

毎年、台湾、中国、韓国、まれにアジアの他の地域や欧米地域からの留学生がいます。
毎年、チームに分かれ、チームごとに活発な議論をし作品を作るということをして来ました。
しかし前述したように今年度はその時間が十分に取れず、私が用意したいくつものテーマについて各自が考え、それぞれにオンラインで発言するというやり方に変えました。

その結果、これまでの言葉頼りのコミュニケーションから、アイデアや作品や思考そのものに注目せざるを得ない状況になり、それが返って理解や尊重を深めたと感じます。

「韓国ではこうです」「台湾ではこうです」という、日本で育ち日本で暮らしていると知ることのできない情報にも目を向ける、ということが例年よりも多くできたという結果になりました。

私自身も講義のあり方について考える大きな機会になりました。

学生たちの未来に

教室での授業だ、来週からはオンラインだ、そして再び教室での授業にもどる、と、環境がコロコロ変わる中、明るく前向きに授業に取り組んできた学生たち。

今回の不安定な環境下でもやり遂げたということがひとりひとりの自信につながり、タフなクリエイターとなって未来に進んで行ってくれることを願います。

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