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金と時間と

にわかに信じられないことだけれど、スタッフが9~10人くらいに増えることになった。それまでは4人だったから大幅増だ。しかも聞いてください。全員がパートさんですよ。社員がひとりもいない。じつはこれが大変。パートさんと言うのは責任のない仕事で、与えられた仕事をこなすのが基本のスタイル。一方社員と言うのは会社のことを一緒に考え、よりよくしていく一軍のチーム。それが今監督の私ひとりしかいない。監督の私は選手でもありボールも拾う。ユニフォームの金も払いに行くし道具の発注もする。

会社が大きくなる時というのがあるのだなぁ、と漠然と考えているが実にその渦中だ。とにかく、人がいなければ商品を作ることができないし、商品ができたらそれを発送する人たち、お客さんの対応をする人がいる。今までは全員が自分の仕事をしつつもその隙間ですべての仕事をすることができた。いくら忙しいとは言っても、それくらいはのんびりしていた。ところが、その隙間がなくなってきたからさあ大変。誰一人として休めない、休めば仕事が止まってしまうからだ。このような緊張が続く労働環境はよくない。だからそこに人を投入する必要がある。

さっき会社と書いたが、実際には会社ではなく、個人事業主だ。2年くらい前に社長の年収が45万円くらいと書いたことがある。ちなみに翌年は150万円くらいで、去年は結構売ったけどやっぱり150万円くらいになりそうだ。驚くほど少ない年収だけれど金には困っていない。車もないし、家のローンもない。息子は独立して働いている。幸い親も年金がもらえていて、妹たちもそれぞれ家庭がある。どこからも金を無心されることもない。犬や猫がいると結構お金がかかるけれど、うちのペットは雌鶏が一羽だけ。

なのに1か月も旅に出られるのは経費にできるからだ。私は民泊をしていて、土産としてクッキーの製造販売もしている。旅をするのも仕事の一環だ。ほかの観光地へ行って、土産物屋を見るのは立派な仕事だし、土産の菓子を買うのだって他店の研究、ということになる。

宿に泊まるのも、どのようなもてなしがあるのか、オペレーションはどうなのか、よその観光業はどうなのか。議員や公務員なんかの視察旅行よりよほどためになる旅だ。だからと言って旅先での飲み食いは経費にならないし、自分への個人的な土産も経費ではない。だがそれ以外の宿代、交通費なんかは完全に経費だ。

コロナになって民泊自体が下火になっている。やめる人も多いようだけれど私がこの宿泊業をやめないのも、またサトナカをギフトだけれどあくまでも伊勢の土産という側面を維持したいのも。それもこれも経費で旅に行けるからだ。とか言って、私が旅好きになるまえからサトナカを売っていたし、民泊も始めていた本当は結果論なんだけど。さらに言うと、あわよくば旅で文章を書いて、それでいくらか稼ぎになればさらに強固な経費になるなぁ、などと目論んでもいる。

こうやって、自分のやりたいことをどんどん経費化していけるのは自営業の強みでもあると思う。年収は150万円だけれど、その150万円から旅費を捻出しているわけではない。旅費は経費から出すのだ。そして、次は自分がやっていた仕事をどんどん人に振って行く。自分の仕事をどんどん減らしていく。売り上げが増えて仕事が増えたらその仕事を自分がするのではなく、人にしてもらう。そうやって自分の利益はそこそこにしといて、その分私は時間を得て経費で旅行に行けたら、こんないいことはない。これは会社員にはできない技だろう。

なんとか時間を作りたい、時間を作って旅に出たいと言うのもあるけれど、田んぼをするにも時間が必要だ。農作業なんて言うのは瞬発力が必要で常に天気を見ながら仕事を組まないといけない。火曜日がダメなら木曜日で、と言う訳にいかない。水曜日に雨が降るならなにがなんでも火曜日にトラクターを入れる必要がある。

今までは店番だけ頼んで自分は田んぼへ出かけられたんだけど、今はそうはいかない。お客さんとのやりとり、受注作業に配送作業。のんびり田んぼへ行くとか許されない状況になっている。なんとかしなくてはと苦戦している。下手したら今年は田んぼが作れなくなりそうだ。それだけは避けたい。早速3月から苗つくりだって始まる。

時間とお金、バランスはいつまでたっても難しい。解決したかと思うと、またすぐ次の問題が勃発する。なにかどこかにうまい解決もあるような気もするけれど、それがなんなのかはまだ分からない。自由に使えるお金をたくさん持っている人はいろいろ知っているけれど、それでもその人たちが羨ましと思って事はないから、やっぱり自分の尺度がいる世界なのだなと思う。


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