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農民社長のための経営入門 4

会社でできるかも知れないベーシックインカム

実は2月は入院していた。1月にコケて膝を3針縫い全治一ヵ月。同じころ目玉の奥に穴が空いたので、大学病院で目玉の手術をすることになった。この話はまた別の機会にするとして、2週間、仕事しなかったんですね。スタッフのみんなはそりゃもう心配してくれて頼むから仕事してくれるなという勢い。そしたら本当に入院中仕事をしなかった。

あれ?

あれあれ?

これ、私いなくても大丈夫なんじゃねえの?

実は、入院する前、配送作業をやっていたとき、出荷する数量と受注書の数が合わないということがあった。調べていくと原因は私だった。また、こんなこともあった。お客さんから注文したものと送られてきたものが違うと連絡があった。これも調べて行ったら原因は私だった。そんなことが何度もあって、それはだいたい私が原因なんである。


配送には自信があったが…

あれ?私、結構仕事できると思っていたけど、実はあんまりできねえんじゃねえの?とうっすら思ってきた。でもさあ、そんなこと認めたくないよな。だって今まで私が切り盛りしてきたんだから、私が一番できて当然じゃないか。そう思って張り切ってやっていた。でも考えてみれば商売を始めて26年、今、私はそれなりの年齢だ。実際に足がもつれてコケたり、目玉に穴が空いたり、肉体的にポンコツの様相を呈してきているじゃないか。

そしてとうとう息子から言い渡されてしまった。みんなの仕事が増えるから現場仕事はやらないでくれ、と。プライドをさっくり切り裂かれたところに今回の入院。みんな私がいなくて大丈夫かしら?という私の心配をよそに、去年から仕事を手伝ってくれている息子を中心として、パートさんたちで仕事がちゃんと回っている。わーすごいなぁ、いやぁ、これ、私が死んでもみんなやっていけるやん。

頼りになるスタッフたち

でも、これって本当に今の「老害」とか会社の50代の仕事できない人とかに重なるわけで、つらい。現実を受け入れなきゃと思うし、きっと日本全国の会社がこんな感じでうちは息子だからビシッと言われたけど、ほとんどの後輩社員は言うに言えない環境だろう。すみません、本当に。そりゃ日本遅れてっちゃうよな、変われないよな、などとぼんやり思う。同期のみなさん、しっかり現実を受け止めましょう。

さて、わたしはすっかり安心して入院中、ぜんぜん仕事をしなかった。と言いたいが、仕事をしていた。ただし、その仕事とは、実務ではなくて会社の形を考える、と言う仕事。実務に追われていては考えられないことを、入院中にじっくり考えた。だってまあ、考える仕事しかできなかったしね。

ベーシックインカムについて考えたのは入院する前からだった。毎月、決まった金額がもらえるとする。例えば月に7万円。7万円あれば十分生活ができるとは言えないけれど、ちょっと働けば人並みの生活をすることができる。もし、働けなくても最低限の光熱費とか食費は払える。家賃はちょっと無理だけど。これは世帯につき7万円ではなくひとりにつき7万円だ。

でも…毎月お金がもらえたら人は働かなくなるのでは?という心配についてはよく言われるところだ。けれど考えてみて欲しい。私がフリースケジュールをするとき、

いつ来てもいい、いつ休んでもいい、なんてなったら誰も来ないんじゃないの?

と言われたわけよ。でもね、やってみたらぜんぜんみんな普通に来るよ。そして、適度に休むし、適度に都合のいい時間に来て帰って行く。だからベーシックインカムについて調べたときに、

あれ?これ、みんな働くんじゃないの?っていうか、むしろもっと充実して働くはずだろ。

と思ったんだ。

ここで確認しておくと、通常ベーシックインカムと言うのは国がやることで、企業がやることじゃない。そしてこれを完全にやっている国はまだない。だから当然日本がやるわけもない。日本という国は前例のないことをすると死ぬと医者にいわれているらしく、今や前例のないことはできない病になっている。日本がベーシックインカムやるのとか待ってらんねえし、私が生きている間に実現はないと思う。けどこれを会社でやったらどうだろう。色々調べてみたけど、今のところ会社でやってるところは見つけられない。しかし、近いことをしている会社は結構ある。

そこで私は仮説を立ててみた。パートさんが1カ月に必要な金額、と言うのがある。うちに来てくれているパートさんは毎月「働いた時間数×時給」で給料が支払われているけれど、見ていくとだいたい毎月平均して同じくらいの金額なわけよ。で、毎月50,000円くらい必要なパートさんのベーシックを50,000円と決めたとするじゃないですか。それを毎月支払う。

例えば、今月働いた分を時給で換算したら52,770円だったとしましょう。けれど支払い金額はベーシックの50,000円のみ。その時に、

「2,770円少ないと困るんです!!」

となるかも知れない。2,770円損した。と思うかも知れない。けれど時給換算で47,500円分しか働いていない月も定額で50,000円もらえるとしたらどうだろう。私が言うのはそういう話だ。つまり、毎月一定の金額を支払う代わりに、時給じゃない働き方で考えて働いてもらうという感じ。これは面白いんじゃない?やべえ、めちゃ画期的じゃん?と息子に話したところ、

あのねえまずはちゃんと今月売ることを考えてくださいよ、あんな策はどうだ、こんな策はどうだと言ってばかりでスタッフが振り回されますよ。フリースケジュールだって導入したばかりなのに。

と諫められてしまった。世の中の同期のみなさん。頑張りましょう。


1月は足をひきずって東京出張へ行き高松経由で伊勢に帰りました。
50代なのに鬼畜旅程が課せられている。

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