ADHDの人間が一番信用してはいけない人物
ADHDの人間が一番信用してはいけない人物、それは紛れもなく「自分自身」だ。
ADHDというのは自分自身を信じやすい体質でもあると思う。少なくとも私の場合はそうだ。それでうまくいったこともあるもんだから自分への信頼度が高い。自分すげえ!と思ってたりする。自分はきっと「何者か」なんだ!フンフン!と鼻息が荒かったりする。それなのに、自分を信じていつも失敗ばかりだ。
例えば、今日仕事へ行くのに持っていくものがあるとする。弁当や書類だったり、返す本、店に持っていく補充の在庫なんかだ。そういうのを頭で覚えていても忘れる。家を出る段になったらすっかり頭の中から消えているのだ。
(今日は店に商品を持って行く)と思っていたとしても、直前に電話がかかってきて違う話をするともうすっかり忘れてそのまま家を出てしまう。直前に鶏にえさやり、ニコニコしながら餌をついばむ鶏の様子を見て(ヨシ、羽の艶もいいしし健康だな)と満足、そのまんま商品のことなど忘れて行ってしまう。直前にポストに入っていた回覧板に気づき、次の家に置きに行ったら近所の人と立ち話をしてもう商品のことなど頭の中から消え失せ、そのまま店に行ってしまう。そんな風である。たとえスタッフが気を利かせて玄関の真ん中に持って行くべき商品をドカッと置いてくれてあったとしても、私が出て行った後にポツーンをそれが残っているわけである。どうしようもない。
上書き能力が半端ないのだろうか。切り替えが早いと言えば利点に思えるかも知れない。忘れて店に行ってしまっても、あとからもう一人来たりもするので、その時に持ってきてもらうことができる。だからいつまでも対策をしてこなかった。
しかしこれが農作業の場合、せっかく田んぼまで草刈りに行ったのに、フェイスガードを忘れたりする。フェイスガードがないのは危険だ。跳ねた小石が顔に飛んできたら流血や失明の危険性がある。それで家にフェイスガードを取りに行って田んぼへ行ったら今度は燃料が足りないことに気づく。それでまた戻る。これはさすがに情けない。農作業というのはのんびりしているようでいて、その実かなり時間にタイトだ。天気に左右されるし、2、30分作業をすればめっちゃはかどる。それなのに、忘れ物をして取りに行っていると30分以上ロスになる。自分がアホのポンコツに思えてくる。実際そうなんだけど。
それまでは忘れ物など、大したこととは思っていなかった。あとでカバーが利くことも多かったからだ。しかし、農作業の場合、忘れ物というケアレスミスはのちの弊害が大きい。これはやった人しか分からないと思う。余分な作業が積もり積もって、最終的に自分自身に大きく面倒な作業が課せられ、(ああ、あの時あの作業を効率よくしておけば…今ごろこんな苦汁をなめることはなかったはずなのに…)となる。
では、こういったことをどうすれば防げるのだろう。
それは、思いついたときに即やることだ。持っていかなくてはならない書類や在庫やらは準備をした時点でもう車に積み込む、あるいは先に鞄の中に入れておく。
分かってる、あとでやるから大丈夫
その時はそう思うかも知れないが、絶対にやらない。未来の自分を信じてはならない。なにしろやらないんだから今やっておかねばならない。その証拠に今やってみるとしよう。出かけるのは明日なのに、もう今日のうちに車に入れておく。するとどうだ、実際すっかりなにもかも忘れて車に乗り込み、間もなく店に着く、と言うところで、ハッ!!そういえばアレ持ってきてねえ!と思ったとしても大丈夫。ちゃんと車に積み込んである、前日に。
田んぼへ行くときもそうだ。出かけるときに準備をするのではなく、出かける前に準備をしておく。そして必要なものはその時点で積み込んでおく。つまり、なにかいけないかと言うと、その時にやるのがよくない。出かけるときに(えーっと、あれとアレとアレ持ってぇ…)なんてやるのがアカン。落ち着いているときにやらねばならない。
それは時間に追われていないときで、余裕のあるときだ。余裕のあるときにしっかり必要品を確認して用意しておく。それだけじゃだめで、ADHDの場合は、車に入れる、鞄に入れておく、ポケットに入れておく、あるいはドアの前に置いておく、玄関に「お結び紐」とかマジックで書いた紙を貼っておく、スタッフに私が出かけるときにちゃんと持ったか聞いてもらうようにする。出かける時間にリマインドが鳴るようにする、などなど、あらゆる手段を駆使して予防線を張るのだ。
どうだ、すごい発明だろう、フンフン!と、鼻息荒く言っちゃったけど、あれ?もしかして、普通の人はいつもそうそうやってんの?これって当たり前のことなの?そうなの?
それはともかくも、ADHDであるからには「覚えている」ということを信用してはいけない。待ち合わせがあるとする。手帳には「15時」としっかり自分で書いた。それに、その日までに何度も手帳を見返している。それなのに「16時」だと思い込んでしまう。当日、15時過ぎになって
「あの~?今どの辺まで来てます?」
と、お客さんから電話がかかってくる。ええ!まだ家出てねえし!そんなことで、どうして私が16時と思い込んでいたかというと、お客さんと話をしていたときに
「その日は芋の収穫を昼間にしたいのでそれが終わってから」
と言われていたからなのだ。(なるほど、となると、だいたい15時くらいまで作業をやって後片付けして16時くらいだな)と算段をしたわけ。いやいや、それは自分の話であって、お客さんはちゃんと「だから15時で」と言ったじゃないの、そうやって手帳に書いたじゃないのよ。しかし、私は頭の中で素早く計算する。
(日のあるうちに仕事をしたいから芋の収穫は15時までがマックスだな、うん、きっと15時まではやりたい。私ならそんなもんだ。で、畑から引き揚げて、片付けして、ヨシ、待ち合わせは16時ね)
いやいや、ヨシ!じゃねえって。ところが本人は(こういう農業のことが分かってる私って気が利いてる)なんてほくそえんでたりする。まったく、ADHDというのは困ったものである。
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ADHD(注意欠如・多動症)である私の散らかった思考がそのままマガジンになっています。日々書かれることに一貫性はありません。
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