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大人になったら

 あの頃。30年前のガンプラブーム、雑誌には華麗な改造作例が並び「君も簡単に!」なんて言葉が躍っていたあの頃。ぼくも多分にもれずガンプラ少年として近所の玩具屋でガンプラを買っていた。まともに作って塗装して仕上げればいいものを、針金用のニッパーやカッターナイフで切り刻み、タミヤパテを盛っては「なんか、違う」と諦めて箱にしまう。

 モヤモヤした気持ちは晴れないまま、最近のガンプラを組んでは「やっぱあの頃のガンプラは余程の人でないと改造なんてしちゃダメなやつだったよ」と自分に言い訳をしていた。

 その、くだらない気持ちにケリをつけるため、旧キットを手に入れた。ジオン軍モビルスーツ強化改良新型グフ。早速箱を開ける、ランナーは立ったの二つ。パチパチとニッパーで切り離し、サラサラと組み立てる。

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 おー、これこれ、懐かしい。え?あれ?これ、十分にかっこ良いですね?確かに顔はもったりとしているし、手もちんまりしてかわいい。だけど、やたらと肩幅が広いのも、足が細くて短く見えるのも、腰が極端に短いのも、これはこれでアリなのでは?

 いやしかし、今回の目的はノスタルジーに浸ることではない。そう、あの頃できなかった「改造」を思う存分にするために、おれは今ここでこうしてグフと向き合っているのだ。

 というわけで、画像を加工してみた。

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 左がキットのまま、右が画像加工したものだ。まず、頭部のパイプ取り付け位置を下げる。これだけで顔の寸詰まり感が解消できるはずだ。次に肩を怒り肩にする。太腿は二ミリ幅増し、腰も合わせて必要なら幅を増す。足首の取り付け角度を調整して、うん、これはいいぞ。やってみよう。

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 元の穴に伸ばしランナーをつめて塞ぎ、ピンバイスで下の方に1mm穴を開け直し、パイプの刺し込み角度を変える……そうそう!こういうことが!やりたかった!あの10歳の夏!目のところも切り欠いて、細いヤスリで整えて……見てるか、10歳のおれ、お前の願いは少しずつ叶えられているぞ(このあと隊長機のシンボルであるツノを無くしてしまい、ランナーのタグから削り出したんだぞ)。

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 関節の位置を変え、アルミ線でつなぎ、プラ板でパーツの幅を増し、削ってヤスってアウトラインを整え、筋彫りをして……ああそうだ、これがグフだ、これが戦場の風。お前は今、理想に一歩だけ近づいたんだ。

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 新しいキットと並べたって遜色ないぜ。マッシブで色気のある旧キット、いいじゃねえか(なんか口調が変になった)。

 まだまだ、手を入れるところは山積みだ、右手なんて触れてもいない、それでも今、机の前には理想のグフ(に近い様子のもの)がある。なあに、時間をかけてじっくりやって行こうじゃないか。プラモは逃げたりしないのだ。

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