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何系でもなかった

 かつて「何系でもない」というキャッチコピーのアパレルCMがあった。NEWSのメンバーがダンスをしながら次々と入れ替わり、全員が並ぶ30秒のCMは、メンバーが次々と出てくるという点で「二次創作」の作者たちに大いに受け入れられ、ダンスをトレスし、自分の好きなキャラに置き換えたアニメ作品が多く作られた。

 それらは「#何系でもない」と呼ばれた。今でも「何系でもない」のタグで検索をすると、まとめ動画などが出てくるので当時の雰囲気は感じられるはずだ。

 10年前、ぼくもそれを見て「自分の好きなキャラたちに踊らせてみたい」と感じていた。でも、作る道具も手立ても能力もない。それから10年、このおじさんは今年「アニメ」を作り始めている。

 そうだ、今こそやるべきではないか。

 好きな漫画「呪術廻戦」はアニメ化され大ヒット、二次創作も多く作られている。どのキャラにどのダンスが合うか、どうアレンジをしたいかが、頭に浮かんで実際に手を動かしてみると……できる!やった!

 真希さんが呪具回すところと、真希さんのあとで嬉しそうに釘を鳴らす野薔薇のとこ最高に好きなんだけど、パンダと狗巻とちょっとだけ出てくる宿儺と真面目に踊ってるだけの虎杖と伏黒も好きだし、最後に出てきてドヤ顔をする世界最強の男のことも好きなんだ……

 普段は二次創作をあまりしないぼくが、突然こんなものを描いて誰かが見てくれるわけがない。フォロワーでジャンプを定期的に読んでいる人も少ないだろう。大喜びしてくれたのは友人の細川博司だけで「これはバズるでぇ」と太鼓判を押してくれた。そうでもなかった。

 それでも、ずっと作りたかったものを作れてぼくは満足していた。もちろん色も塗りたい、顔だって本当はちゃんと描きたい、ただまだ技術と時間が足りないんだ……いいんだこれで……でも、本当は、もっとたくさんの人に見て欲しかったな……

 と思っていたら、それがいま、同世代や少し下の「何系でもない」を見ていた人に発見してもらって、少しずつだけど閲覧が増えている。ありがたいことだ。

 40の手習で始めたアニメで、ようやく使い方にも慣れてきた。TikTokの方は相変わらず誰も見て来れないけれど、そちらで流行っているタイプのダンストレス動画にも挑戦してみた。踊っているのは五条悟だ。

「何系でもない」の方では最後に出てきて先生づらするだけだったので、ちょっと気合を入れて色も塗ってみた。あまりに大変だったのでほんの2秒ほどだけど、なかなかうまくできたんではないかと思う。

 アニメを作るのは楽しい。作れば作るほど「どうやって作るのか」が見えてくる。もちろんプロの人が現場で学ぶ大変さに比べたら趣味のお気楽さでゆるゆるとやっていく程度だけど、それでも44才になってまた新しいことを学び挑戦できると思うと、とても生きるのが楽しい。

 一ヶ月半は続けられた、三ヶ月坊主にならぬよう、今から夏に出す動画の計画でも立てようと思う。まあ長い目で見守っていてほしい。

 ちなみにTikTokの方の五条悟は閲覧数7とかだ。可哀想なので探し出してみてほしい、ユーザー名「麻草郁」で検索してみてほしい。

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