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戦時下のパリ・オリンピック

今週からパリで開かれる夏のオリンピックは100年ぶりだと聞いて、前回の東京オリンピックが57年ぶりだったことを考えると、フランスの人はどれだけ待ち焦がれたのだろうと思います。そして開会式はセーヌ川を使い、選手団はボートで入場するという演出に観客も魅了されるでしょう。前回の東京大会では高齢の両親のためもあり、長時間かけてチケットを手に入れたものの無観客開催となってチケットは無効になり、後に父も亡くなってしまいました。そんな苦い思い出が残ってしまっているからこそ、パリ・オリンピックでは喜びと感動をもらえる大会であって欲しいのです。


ですが、今年のパリ・オリンピックは戦時下の開催になります。ウクライナでもガザ地区でも、戦争は終わろうとしません。戦乱が絶えなかった古代ギリシャでさえ、オリンピック期間の停戦協定が都市国家間で条約として承認され、停戦期間中はすべての戦いが停止されました。停戦は、オリンピックに出場する選手や参加者、また観客が安全に到着し安全に帰路につくことを約束するものだったからです。古代オリンピックから数えれば、1200年以上ずっと守られてきたオリンピック休戦(Olympic Truce)は、現代になるとずっと無視し続けられているのです。


パリ大会からは、ブレイキンというダンス競技が加わりました。これはニューヨークでギャングの抗争に替わるものとして、ブレイクダンスで対決しようという平和的なアイディアから生まれました。ギャングでさえ、無駄な抗争をしたくなかったのです。ブレイクとは「壊す」という意味ではなく「休む」という意味です。一対一もしくは団体での対戦中、踊っている時には、対戦相手は休息するのです。たとえ競技相手であってもリスペクトしているわけです。ブレイキンが競技として選ばれたのは、そんな停戦を象徴するスポーツであることからなのかもしれません。

昔できなかった事が、現代では多くの事ができるようになりました。医療も科学技術も宇宙開発などがそうです。それによって私たちはより長寿になり、より賢くなり、多くの恩恵を受けています。ですが、古代の人は戦争を止めることができたのに、なぜ現代の人にはできないのでしょうか。オリンピックの期間中にミサイルが発射されて被害者がでることを誰もが望んでいません。本来なら同じ地球に住む家族同士です。どうかこの期間だけでも各国のスポーツを応援し、平和を考える期間にするべきです。平和の祭典のオリンピックが、戦争へのブレーキになって、紛争への対話が少しでも進むことにつながればと願っています。


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