オーイシマサヨシ渾身の新プロジェクト「神或アルゴリズム」はなぜ埋もれてしまっているのか
みなさん、「神或アルゴリズム」という曲を知っている、もしくは聴いたことがありますでしょうか。「ようこそジャパリパーク」でお馴染み、歌えて踊れてバラエティもイケるアニソンシンガー・オーイシマサヨシさんが一年以上懸けてち出した新プロジェクトなのですが、そこまで大きな話題になっていないのが現状。まぁ端的に言うと、バズってないんです。
どういうプロジェクトなの?
すごい嫌な言い方をすると、トレンドに乗って狙ってバズらせようぜ!って感じの企画です。昨今でもはやメインストリームになったアニメ―ション×音楽のプロモーション。去年のレコ大を獲ったLisaの「炎」も、ほぼ無名から一年で紅白に出場したYOASOBIの「夜に駆ける」も、順序は違えど前述したフォーマットに乗っ取ってバズったと言っても過言ではないと思います。
このアニメーションと音楽の親和性を活かして、アニソンシンガーであるオーイシマサヨシが主導でアニメをプロデュースする、というのがざっくりした企画の趣旨になります。
そしてこの「神或アルゴリズム」は将来的にはアニメ化も想定しているらしく、今回のミュージックビデオもその注目を集めるための足掛かり的なモノになっています。ですが、公開されて約二週間経つが再生回数はまだ30万回少々と、正直既存のファン以外には届いていない感がぬぐえません。
クオリティはどうなの?
バズってないだのあんまり再生数回ってないだのここまで良い事言ってないんですけど、ここに関してはマジで高いと思います。だからこそバズっていないのが悔しい。まぁ一度聴いてみましょう。
オーイシマサヨシ/神或アルゴリズム feat.りりあ。
どうでしょうか。アニメ本編の内容はともかく、曲と映像の気合の入れ具合はバチバチに感じられたと思います。オーイシさん本人も「狙って事故る(バズる)曲を書いた」と仰っていたように、かなり売れ線を意識したつくりになっています。サビから始まる曲構成、イントロのシンセ、男女ツインボーカル、ボカロっぽいコード進行やメロディ、ラスサビで転調など、ざっくり言うとこんな感じ。これでもかと詰め込んでますね。
オーイシさんは「君じゃなきゃダメみたい」や「楽園都市」に代表されるように、決め打ちで曲を作るセンスがスゴイ。毎回驚かされます。この曲も例に漏れず「ちょうど今」のトレンドに合致する、良い曲を書いたなぁという感想を持ちました。
そして映像。これも文句のつけようがないクオリティだと思います。千万回再生されるポテンシャルは十分。ちなみにキャラクター原案や監督等はEve「あの娘シークレット」などのMVを担当した若手アニメーション作家「オカモト」さん。コンセプトも良いですよね。和風サイバーパンクの世界観にボーイミーツ(ケモ耳)ガールと、オタクが喜びそうな要素マシマシです。個人的に和風サイバーパンクのアニメは最近見なかったのでこの路線で攻めるのはかなりシーンを”見ている”な、という感じです。
じゃあなぜ伸びてないのか
ここからが本題です。先ほど紹介したように、曲と映像には売れる要素が沢山詰め込まれています。なのになぜバズりに至ってないのか。その理由をいくつか考えてみました。
①プロモーションの弱さ
真っ先に考えられるのはここでしょう。というか大体の原因がここに集まっているとも言えそうです。恐らく、ファン以外のオタクからすると「オーイシさんが何かよく分からん歌手とコラボして新曲出してんな」くらいの認識で止まってしまうのではないでしょうか。恥ずかしながら僕もその一人でした。何か大きな触れ込みが無いと、動画を見るまでには至らない。気が向いたら見てみよっかな、みたいな。
せっかくアニメ本編の制作を予定しているんだから、例えば公式サイトを作ったり作品のツイッターアカウントを作って告知したりと、ただのミュージックビデオじゃないんだという所をプッシュして欲しいなと思います。
それと、コラボ先のりりあ。さんもオタクにはあんまり響かない。いや歌声とかは素晴らしいんですけど、あまりにも有名になりすぎてるのと、主戦場がTikTokだと余計に接点が少なくなってしまう。残念ながら、オタクにはTikTokに乗り込めるほどの勇気は持ち合わせていない…。恐らく普段からアニメを見ない層に向けてのタッチポイントとして起用したと思うんですけど、肝心の彼女がSNSであんまり宣伝してないのを見ると…これじゃあ広まるものも広まらないよな…。あとこれまでのりりあ。さんのイメージと結構異なる雰囲気の曲だからファンの反応も芳しくない感じが(主観ですが)してます。
最後に気になったのが、YouTubeのメタタグ。これ何か簡単に言うと、その言葉を設定しておくと、その言葉が検索された時に関連動画に表示しやすくなりますよ!ってヤツです。ちなみに神或アルゴリズムのメタタグはこんな感じ(細かくてすみません)。
割と控えめに設定されてます。もっとかましても良いと思う。参考例はこちら。
去年バズった「チューリングラブ」のメタタグです。スゴイを通り越してもはや怖いですね。絶対にバズらせるという強い意志を感じます。あとこれアニメとのタイアップのはずだったんですけど、タイトルが一個も入ってないのは何でなんスかね??
②売れ線を狙いすぎて、肝心の中身が伝わってない
こんな事言うのはあまりにも残酷すぎるんですけど、売れ線を意識すぎるあまり、逆にバズらないという事態になっているのかもしれません。
例えばタイトル。「神或アルゴリズム」は一見するとボカロっぽい感じで面白そう。なんですけどこれ初見で読めますか?「かみあり」アルゴリズムと読むんですけど、うーん…ムズイ。タイトルの雰囲気はめっちゃある(2010年代ボカロ感あって好き)んですけど、それっぽいタイトル付けてみました!感が否めません(あくまで主観)。
あとこの漢字のホントの読み方は「ある」だから「あり」って打っても変換で出ないんですよ。ここ割と致命的だと思っていて、例えば曲とかアニメの感想をツイッターでつぶやくとき、タイトルは絶対入れますよね。なのに、そのタイトルの読み方が分からなかったり漢字が出なかったりしたら少しストレスに感じるし、今回の場合タイトルではなく「オーイシの新曲」として拡散される可能性だって出ちゃう訳です。だから「カミアリアルゴリズム」とカタカナ表記にしたり、せめて「KAMIARI algorithm」とローマ字表記を付け加えてあげれば国外のタッチポイントも期待できるし一石二鳥なんじゃないかと思います。
そして何と言っても一番ヤバいのが「○○に似てる曲」で終わってしまうこと。これは後発でバズらせようとする上で最大の壁だと思うんですけど、バズらせるにはある程度目の肥えたファンを相手にしないといけません。決して「神或アルゴリズム」が既にやりつくされたネタの集合体って訳では無くて、現在死ぬほど溢れてるアニメーションMVに慣れてしまった私たちが注目する所は「誰の曲か」って所と「どこが違うのか」になると思うんです。前者に関しては「オーイシマサヨシ」という看板があるのでそこはクリアされていると思いますが、後者の訴求力が不足しています。バズる要素を詰め込んでいるが故に、聴いた人全員が「最近流行りの、良い曲」という感想で終わってしまって、その曲で何をやりたいのかを分かってもらえてない。
映像もそうなんですけど、まるでMADのようにカッコいいカットや、匂わせる感じの演出のオンパレードで、それ自体はめっちゃカッコいいんです。しかし、「つまり、どういう話?」という所の説明がなされていないせいで肝心の”中身”を伝える前に曲が終わってしまってるんですよね。アニメ化が決定していないから声を当てることが出来ないとかの事情があるのかもしれないけど、せめて冒頭数秒にプロローグっぽいのを入れたり、何なら二人とも声良いのでセリフの掛け合いがあっても良いのになぁと思います。
③曲→アニメはやっぱりムズイ&偉大な先駆者
改めて「タイアップ」の影響力のデカさを感じますね。「ジャパリパーク」然り、「オトモダチフィルム」然り、アニメの主題歌から曲がバズることは多々あれども、その逆のプロセスを行く難しさを痛感しています。というかの手法でバズらせた前例もほとんどない気がします。パッと思いつく所で言うと、やっぱりこれ。
カゲプロですね。若干コンセプトの違いはあれど、曲から物語への展開をシームレスに行い、アニメ化までこぎつけました。当時のニコニコ動画の土壌が成せたものもあると思いますが、やっぱり歌詞が付いてる映像の方がより”世界観”を感じられますよね。中身がある程度作りこまれていればいるほど歌詞が果たす「ストーリーテリング」の役割は重要になります。
神或アルゴリズムの歌詞もすごく良いんですよ。語感はもちろん、コンセプトを分かりやすく表現していてまさに第一期オープニングって感じで。だからもっと、歌詞を視覚化してほしかった…。
まとめ
はい、いかがだったでしょうか。長々と講釈に付き合わせてしまって申し訳ありません。上に書いているものはあくまで僕の主観なので、「何言ってんだコイツ」と感じる人もいるかと思いますが、その時は遠慮なくコメント等で異論反論をぶつけてください。
本当に、公開して三日くらいで100万回再生されてもおかしくないクオリティなんですよ。だけどバズってない。でもこれ逆説的に言うとプロモーションの活発化や何か一つのきっかけさえあれば爆発する可能性を秘めてる、ということです。大事なのはここから。苦労人大石昌良なら、この状況を打破する次の一手を用意しているはず。その一手に期待しつつ、プロジェクトの成功を祈ってこの記事を締めさせていただきます。
最後まで読んで頂きありがとうございます。アサクラでした。
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