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偉大な先達の訃報に接して。私のなかの未解決の問いと奮い立つなにか。

アフガニスタンで長年にわたり人道支援活動を続けてこられた医師の中村哲さんが凶弾に倒れ、お亡くなりになった。

かつて国際人権NGOの事務局の広報を手伝っていたことがあり、国際人道支援に関わる専門家、ジャーナリスト、NGOなどの方々と接する機会が多かったが、中村哲さんは最前線で活動を続けられている方として著名であり、とても尊敬されていた。

私自身は直接面識があったわけではなく、対談やインタビュー記事を読んだり、講演会やシンポジウムの告知の案内を見たり、ごく間接的にお名前と活動の概要を存じ上げていただけである。

それでも、命を救うためには医療以前に水と食糧の確保だとして、医師でありながらみずから土木作業をして井戸を掘り、用水路を拓き、危険や困難が山積みのなか活動を続けられているその存在はとても印象的であった。

その功績については、私が語るまでもなくいろいろな方が回顧しています。

ニュースで訃報を知ったときはとても驚き、そしてとても悲しかった。この地球にとって、貴重で稀有な存在を失ってしまったことがとても残念だ。

国際平和を実現したい、という壮大な(そして今思えばとても抽象的な)情熱を持って弁護士になった私は、国際的な平和活動や人権活動に積極的に参加する「意識の高い」若者だった。

国際政治を学んでいた学生時代に9.11のニューヨークでの同時多発テロが起き、そのあとのアフガン攻撃さらにイラク戦争、日本国内でも9条改憲の議論が起こり、自衛隊は海外にどんどん出て行くようになり・・・という時代背景もあった。

平和や反戦のデモや集会、イベントにもたくさん参加したし、支援活動にカンパしたり、ときには国会に要請に行ったり、選挙の応援もした。NGOで国連助成の国際会議のオーガナイズを担当して四苦八苦したこともあった。

組織的な武力で人のいのちが失われていくということが悲しくて、受け入れがたくて、何か意思表示をしなくてはという思いで活動をしていた。

個人的な事情や心境の変化があって、そういう活動をおやすみするようになったのはここ5年ぐらいのことだ。

そのことについては、私のなかでまだ「未解決」のテーマとなっていて、こうしたニュースに接すると自分のなかの色々な思いが揺さぶられる。

少し前に元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんの訃報に接したときも、同じようなことを感じた。

学生の頃だろうか。「難民に尊厳を」"respect to the refugees." という国連でのスピーチを見て、鳥肌がたった。緒方さんのように、なんて言えるわけもないぐらい格が違いすぎる偉大な方だけれども、国際的な舞台で活躍する日本人女性の先達として憧れと尊敬の念をいだいていた。

そして私は、国際的な平和活動や人権活動をライフワークとすることを望むのであれば、そのような道を歩んでいくことができる環境にいた。実際、日弁連の推薦をもらって国際人権の研究でイギリスの大学院への留学の内定までもらっていたこともあったのだ。(直前に個人的な理由で辞退をして、関係者の方には大変なご迷惑をおかけしました)

ところが今はどうだろうか。新聞も読まず、家にテレビもないのでニュースも見ない。社会的な案件には関わらず、もっぱら離婚や相続など家族関係のご相談を受けているのみ。半径10メートルの世界で自分の人生のささやかな安穏を求めてプロボノ(公益)活動からは、完全に撤退している。

その結果、時間にも気持ちにも余裕ができて、毎日、とても幸せに暮らしている(公益活動をしていたことで不幸だったわけでは、もちろんないけれど)。

そのことについてどう考えればいいのか、私の中では答えはないままである。

まずは自分が幸せになることが大切、とか。

できるときにできる範囲でやればいい、とか。

世界で起きていることを直視しないのは加担しているのとおなじ、とか。

祈っているだけで行動しなくては世界はよくならない。
いや、ちがう。心の平穏や祈りこそが世界平和への近道なのだ、とか。

うん。どれもわかる。だけれども、答えは出ないままだ。

ただ、中村さんや緒方さんのような偉大な方たちの訃報に接して思うのだ。
比べるのもおこがましいけれど、彼らも私と同じひとりの人間であることには変わりなくて、それぞれの暮らしがあって、能力や体力にも限界があって、弱さだってもちろんあったはずで、それでも思いがあって偉業を成し遂げられたのだなぁと。

そして訃報という形であっても、遠くからその存在・その在り方に触れると、純粋さと気高さと愛に心が震える。

私自身の中にも、かくありたいと奮い立つ何かがあるのだ。

あきらめてはいけないなと思う。

いまがとても幸せで、だけど、なにかピースが足りない気がしているのは、私の未解決の問いと関係があるのだと思う。

お二人のご冥福を心よりお祈りいたします。
どうぞゆっくりとおやすみください。

(了)

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