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I got lots of good things to do

 noteを書こうと思ってChromeを開き、Gmailも念のためチェックしたところ、チケットぴあからエリッククラプトン日本武道館公演のプロモーションメールが届いていた。ミーハーな私はChange the Worldをひとり小声で口ずさみながら、S席チケット(@2万円)を即座に2枚購入。お金の遣い方を見直す月間を掲げていたのも束の間、ものの2分で購入ボタンを瞬殺してしまった。罪悪感がないと言えば嘘になるけど、レジェンドと言われる(言われているのか?)アーティストのライブには、基本足を運ぶ信念を長年貫いている。致し方あるまい。

 私にとってのレジェンドオブレジェンドと言えば、間違いなくPaul McCartneyで、東京ドームライブには計3回行かせていただいた。Paulのライブの特徴を端的に表すとすると、「おじさんのカラオケ」だと思う。歌い方がその辺の、ちょっとだけ酔っ払ったオッサンみたいに軽くてハッピーなのだ。

 何十年ぶりに東京で歌いに来たその日、ビートルズど真ん中世代のおじさんたちが当時の名曲の数々に人目を憚らず涙を流しているのを目の前に、Paulはいたって冷静に、全く感極まることもなく、かつての勢いで闇雲にLove&Peaceを叫ぶこともなく、まるで「スナックに営業に来た」くらいのノリで全曲淡々と歌いこなしていたのが印象的だった。もちろん、Let it beも歌ったし、Hey Judeも歌ったし、Yesterdayも歌ったけど、全然泣かせにくる歌い方ではなくって、驚くほどさっぱりとしていた。一応「コノ曲ヲJohnニササゲマス」という片言の日本語も発してみたりするんだけど、さほど気持ちがこもっておらず、こなしてる感満載だったんだよね。

 ちなみに、3回行った東京ドーム公演でPaulは、毎年Let it beを歌う直前に「コノ曲ヲJohnニササゲマス」というセリフを忘れていなかったw Johnとの悲劇的な別れさえも、長年ドラマチックに扱われ過ぎたからなのか、Paulにとっては単なる日常と化してしまった、と思わせるような口ぶりだった。

 とはいえ、だ。そんな場数を踏み過ぎて、音楽と一体化して生きてきたレジェンドの姿は、おっさんのカラオケなのに、体中が痺れるほどに、子宮の奥が疼くほどにめちゃくちゃカッコ良い。一曲一曲さらっと歌うのに、全然泣かせにいってないのに、俄然泣ける。私がその姿を見た頃のPaulはおそらく70代前半だったと思うんだけど、色気の塊のようなロックンローラーだったし、80歳になった今のPaulは更に「抱かれたい男」度が上がっていると信じて疑わない。

 私はビートルズの中でも昔からPaulが一番好きだ。曲が明るくてとてもポップなところが好きだ。音楽のことはよくわからないから、粒度の低い形容になってしまうのだけど、とにかくPaulは私にとって本当の意味で現役で、レジェンドで、ビートルズ時代の曲たちも素晴らしいけど、2018年に出した『Happy with you』という曲は、もっともっと皆に届いて欲しいと思う。

I sat around all day
I used to get stoned
I liked to get wasted
But these days I don't
'cause I'm happy
With you
I got lots of good things to do
Happy with you

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