溶けあう私たち

私の住んでいる街は美味しいご飯屋さんが多い。
昨日はそのなかでも息子と2人でお気に入りの中華そば屋さんに行った。

私は塩、息子は醤油と決まっている。
メニューを見ずに注文し、おのおのスマホを見ているといつもの透き通った美しい中華そばが来た。

昔は飲食店でスマホを見て会話のない親子を見つけるにつけ、自分はああはなるまいと心に決めていた。
それなのに、と残念な気持ちで麺をすする。
おいしい。
気付けば残念な気持ちもすっかり吹き飛び中華そばの美味しさに夢中になっていた。

息子を見ると同じように無言で食べている。
私たちはお互いの存在を完全に忘れ、同じようにぼんやりし、少しだけどうでもいい事を考えたりしながら中華そばの幸福な世界に溺れている。

ああ、私たちいま中華そばを挟んで溶け合っているなぁ
と唐突に感じた。

誰かと食事をしていてこんな感覚になる事はほとんどない。
完全に心を許した相手としか作り出せない空気なんだと思う。

無言でスマホ見ちゃうけど、私たち結構いい親子なのかもしれないぞ。