内閣府ベビーシッター割引券の企業登録に際して、想うこと(長文)

内閣府が主導している、ベビーシッター利用時の補助制度。企業が登録していないと使えないので、登録しました。ざっくりいうと、仕事をするため、保育園の送迎や自宅でシッターさんにみてもらう時に、1日あたり4400円を国が補助しますよ、という制度ですが…それに際して想うところを書かせてください。
自分の想いを伝えるために自分の体験をたくさん書いたので、途中日記みたいですけど。

登録のきっかけは、社員からの連絡

もともとBit Beans は子育て支援行動計画をたてて、社員が仕事と子育てを両立できるように、ごく早い段階から実施してきました。それを知っている古株社員だったこともあると思いますが

下記のような制度があるようでして、BBも導入していただけたら嬉しいなと思いました。ご検討をよろしくお願いします。
↓↓↓
企業主導型ベビーシッター利用者支援事業における「ベビーシッター派遣事業」の令和4年度の取扱いについて

という連絡が入ったのが9月の終わり。「やりましょう!」と代表2人で即答、むしろ教えてくれてありがとう。その日のうちに申し込み、1週間後には契約ができていました。

子育て支援導入にあたっての想い

使ってみてどうだったか、どういうふうに使うのかは、子育て中のスタッフのみなさんが使った時のレポートにお任せしましょう。わたしからは、子育て支援を積極的にしていく想いについて、お話しさせてください。

「自分の居場所をつくりたい」
その想いで立ち上げたBit Beans

この話をしようと思うと、わたしが30歳の頃…Bit Beans立ち上げの想いに遡ります。今から20年前、当時の制作業界は、まあハードな職業でした。
夜の22時に「明日までにこのデザインお願い」なんていう仕事が入ってきたりする。「20時以降に依頼する時場合は20時までに連絡入れるのが礼儀だ!」なんていう言葉が、“思いやり”として語られる時代(笑)。
結婚した女性は(旦那を怒らせて家庭不和になるといけないという配慮で)前線から退くことが暗黙の了解、子供が産まれても続けている女性の先輩なんて知る限りひとりもいなかった。バリバリやってる女性は大抵独身、女であれば30あたりで仕事か家庭か選ぶ必要があって。
そんな時代&業界だったから、Bit Beans立ち上げにあたってわたしの中の確固たる想いとしてあったのは「居場所を作りたい」、ということでした。

  結婚して苗字が変わっても「〜さんの奥さん」て呼ばれない場所。
  子供が産まれても「〜ちゃんのお母さん」て呼ばれない場所。

そう呼ばれるシーンが全て嫌なわけじゃないけれど、女に生まれて大人になったらいつも誰かの付属のような扱いになるのはおかしいと思ったし、自分が自分として認めてもらえる場所が、必要だと思ったのです。
でもこの仕事をしている以上、出産を選んだらその時点で居場所が無くなる…とはいえ、子を持つことを諦めたくない。
であれば自分でつくろう。わたしが子供を産んでも、キャリアを諦めなくていい場所を、自分がつくろう!

仕事と子育ての両立

そして立ち上げて2年に差し掛かろうとするころ、計画通り(!)妊娠し、32歳で出産。わたしが最初の産休育休取得者(ただし経営者なので育休とは呼ばないが)で、休むにあたっては新しい人を呼び体制を整えて…期間は3ヶ月間でした。
復帰後は、どうしてもある程度は時短勤務をせざるを得なく、夫は協力的な人だったけれど、わたしと半々(1/3くらいかな)でお迎えに行っていた夫は、夫の会社からの圧もかなりあっていたたまれなくなってそのうち会社を辞めた。
どうにか仕事と家庭を両立させようと、とにかく苦心しました。
全自動洗濯乾燥機、食洗機、ルンバ、調理家電など、便利家電も全て揃えた。ベビーシッターも当時の価格で1時間あたり3500円、3時間で1万円を超えるし、すごい高かったけど利用した。
それでも子供が熱を出した日は朝から戦いで。
シッターさんは急には頼めないし、病気の子供は預かってくれない。保育園に連絡し、病児保育へ連絡しもろもろ整えて遠い病児保育専門の病院にタクシーつかって連れて行き、熱があってぐったりとして「ママ、ママ」と泣き叫ぶ子を振り解いて打ち合わせに向かう。急いでも打ち合わせに遅れて平謝りして、子供への罪悪感と仕事への義務感とでで押しつぶされそうだった。

ちなみに、ずいぶんたってからその話を森さんにしたとき「病気の子供を預けるかどうかはその家の価値観によるんじゃない?」と言われたことがあった。その言葉、かなりひっかかった!
なに?わたしがあれだけ悩んで、ある意味子供を犠牲にして仕事への義務感を持ってやってきたことに、同じ仕事をしている仲間がそういうこと言う?って。
でも、子供が病気の時に子供を預けるかどうかは、たぶん(森さんの言うように)自分が育ってきた家庭の環境による価値観の違いや、パートナーとの関係性や、職種や、、いろいろなことが絡み合って判断される問題だから、何が正しいとかはないんだろうと、今は思います。

そして実は今でも自分が正しかったのか、思い出すたびにわからなくなる。病気の子供を預けてまで打ち合わせにいくべきだったのか、どこかでまだ悩んでいるのです。後悔もあるけど、でも当時の自分を認めたい気持ちもあって。

時代はどんどん変化して

価値観は時代によっても大きく変わる。
わたしにとっては、子供がいても仕事を続けること=子供がいない人と同じように働かなければ認めてもらえない。という意識がありました。
わたしが最初だったから、失敗させてはならない!と意気込んでもいたり。
ゆえに子育ては「罪悪感」と「罪悪感なんて持たなくていい」という2つの思考が揺れ動く毎日で…けれど5年、10年とすると時代も変わり、社内で出産を迎える人が出てきます。
そしてスタッフがわたしの「罪悪感」を軽く飛び越えてくるから、実はその都度ドキンと心臓が脈打った。…ここからは、葛藤のお話です。
もちろん、最初から退職する選択肢はないことは純粋に喜ばしい、居場所ができている、やりたかったことだ。
でも1年間の育児休暇をちゃんととって…さらに

「時短でしか働けません」

と堂々と言われる!
すごい時代が来たと思った。喜ばしいと想う反面、どこかで心がきゅうっとなる。そしてそのうち男性社員から

「子供が熱を出したから出社は午後になります」

という連絡が入るようになった!
いや、もちろん育児は女性だけがするもんではなく、もちろん夫にお迎えやらなんやらわたしだって頼んでいたし、けど、夫はそれで職を失った。17時の定時に帰宅するのがどれだけ大変なことか私は何度も聞いていたわけで。
男性社員が子供を理由にそう言い出すのは喜ばしいことだ。
でも女性社員の…夫、ほかの会社に勤める夫は「育児のために会社を遅刻できない」と言い、当然のようにBBの女性社員が家庭の中で「育児担当」になり、Bit Beansに勤める男性社員は、理解のある会社だから「育児担当」ができるとすると、なんか、会社としては、わりをくってないか?!?!世の中の男性社員がおかしいにしても、男性の育児参加への理解が、売上のプラスになるわけじゃない、じゃない?

でも結果としてみんなが飛び越えてくれたからこそ、Bit Beansの今がある。造られた土台を大きく広げていったのは、他でもないスタッフのみなさんだと思っています。

子育て支援への想い、まとめ

育児は仕事のハンディになることが常識だった時代があった。
「子供産むならお前社会にいらない」って言葉を否定しながらがむしゃらだったからこそ、育児支援を考える時、わたしの心の一番目にあることは「子供を理由にキャリアを諦めないで」なのです。

子供がいても辞めなくていいあなたの居場所を用意しておく
だからキャリアを諦めず、必死で両方頑張ってほしい

わたしは会社として、やりかた次第で両方とも頑張れる環境をつくるし、そういう社員を応援する。会社としてできることはこれだから、する。

でもね。

子供が不安そうな顔をして「一緒にいてほしい」と言った時に、「仕事があるから」と突き放す親であってほしくない。夜布団の中で「あのね、ママが帰ってくる靴の音が、僕わかるんだよ」って子供に言われて、毎日どれだけ自分を待っていたのかと、思わず胸が熱くなる想いは…もう誰も感じなくていい。だから、

子育て中は今しかないこの瞬間を大切にしてほしい。
子供はみんなで育てている意識で、助け合おう。

とも思う。

自分の居場所。社員が推進させる、育児支援

わたしは居場所をつくりたくて、Bit Beans を立ち上げた。でも育児への向き合い方は、Bit Beans社員が作りあげてきた歴史だと思う。
無理して、子育てをある程度犠牲にしながら働いてきたたわたしのようなスタイルを全ての人に求めていたら…子供を持つということは相当辛かろう!やっちゃいかん。
テレワークもまた子育てを大きくサポートする制度ですよね。

今いるスタッフが、幼い子供たちと家で過ごせていることを思うと、自分のことのようにホッとした気持ちになる。子供を理由に変則勤務をする連絡を目にするたびに、男女関係なく育児参加を普通に声にできる環境に、目を細めたくなる気持ちもある。それを誇りに思っている。
わたしが昔そうできていたらどれだけよかったろうと…思いつつ。

子育て支援…ベビーシッターの割引制度の登録や、支援を掲げる企業は世の中に好意的に見られると思います。
けれど、実はそれは「支援するからしっかり働いてね」というメッセージでもあります。「子供がいてもしっかり働ける」ことを親が望むことが前提にあって、実は、それが崩れると成り立たない。

子が生まれなければ、この先の未来は暗い。
子が生まれた人が働けなければ、この先の未来は暗い。
子どもを育てながら社会に大きく貢献する人材を、Bit Beansは心から応援しています。


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