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劇団ねこのバロン第二回公演「再びの、生きがい」製作記録〜その2

劇団ねこのバロン主宰の折笠安彦(以下、私)です。

23年4月21日から23日に横浜のSTスポットで開催した劇団ねこのバロン第二回公演「再びの、生きがい」製作記録〜その2です。記録とともに、少しでも劇団ねこのバロンを知ってもらいたくて書きます。

その1はこちらです。公演準備を進め、キックオフ開催できたところまで書きました。その2ではワークショップと脚本完成までを書きます。その1ではちょっと長文だったので短めに。

基礎練で進めたこと

22年10月のキックオフ後、脚本ができるまでの間、全員を対象とした基礎練をやりました。

ねこのバロンの芝居では、登場人物の会話において、心と心のキャッチボールをすることを大切にしています。テンポは良くてもうわべだけで流れてしまう会話はダメ出しが出ます。

そのキャッチボールをするためには、1.相手の言う言葉(台詞ですが)を聞くこと、2.聞いた言葉を自分の心の中で咀嚼し、3.自分の考えをまとめて、4.声に出して発することが必要です。しかも、お客様全員に適切な声量と滑舌で届けなければなりませんし、最終的にはテンポやリズムだって必要です。

これは日常会話では意識することなくやっていることなんですが、台詞という自分の意志とは関係なく作られた言葉だったり、先の展開がわかっているので、なかなか難しいんです。

その1.から4.ができるよう、相手の言葉を聞いて咀嚼して自分の考えをまとめて発するトレーニングをしていきました。

このトレーニングでは、例えば、相手から「ねこ」という言葉を受け取ったとします。その「ねこ」と言う言葉を心の中(正しくは脳内)で様々咀嚼し、その結果出てきた言葉を次の人に渡す感じです。「ねこ」(聞く)→白い(咀嚼)→「雪」(自分の考え)のように。実際はもっと複雑に咀嚼すると思いますが。

ねこは白いだけでなく、黒もあれば、牙とかパンチとか魚とか色々咀嚼ができます。それに応じて新たな自分の考えが出てくるはずです。
次の人は「雪だるま」から次の言葉を紡いでいきます。
この練習で大切なのは、出てきた言葉の良し悪しではなく、咀嚼することと、そこから新たな考えをまとめることです。

次には練習台本による本読みを行いました。
練習台本には、シナリオ・センターの課題作品を使用しました。
課題は「鏡」だったと思います。
三面鏡に映ったもうひとりの自分が鏡の中から飛び出てきて、最近疲れが出てきている自分を励ますというお話しです。10分もあれば終わってしまう短い話ですが、「心と心のキャッチボール」は十分できます。役を入れ替えながら行うと、キャストの個性が発揮されて、同じ脚本でも雰囲気が変わり、面白かったです。


最後に行ったのはインプロ(即興劇)です。
練習台本では、3.自分の考えをまとめてというのが、台詞になっている関係で制約を受けます。本番の芝居ではそうなので、問題はないのですが、どうせなら、3.自分の考えをまとめてもやってみたいということでインプロを選びました。
ふたりが対面し、片方が何らかの話のきっかけを出します。それを受けて相手方は、1.から4.を実行して言葉を返すことを繰り返します。日常会話ではやっていますが、きっかけに何が来るかわからないので、独特の緊張感がありました。

これらのメニューの多くは、私が参加した紅月劇団ワークショップで行ったものがねこのバロンが目指す芝居に合うので取り入れました。

今回集まったキャストは、素晴らしく何回か基礎練を重ねていくうちに理解して進歩してくれましたし、本番の芝居でも成果を発揮してくれたと思います。
基礎練を経てキャストの意外な面が見えて、脚本執筆の上で参考になりました。
やってよかった。

脚本完成

キックオフのとき、「脚本は年内を目処に書き上げる予定」と言った手前、基礎練をしながらも毎日のように書き続けました。

あらすじの段階で、起承転結を決め、箱書きにしていたため、それに肉付けをして膨らませていきました。この段階で人物の性格や人柄も設定し、人物表も作成しているのですが、この人物表は私が脚本を書くために使うもので、キャストには見せませんでした。自由にキャストなりに設定して欲しいからです。

ストーリーと描く人物がしっかりイメージできると、シーンに応じてその人物が言葉をしゃべってくれます。それを拾って書いていく作業の繰り返しです。

台詞で心がけたのは、簡単で日常しゃべる言葉を使うこととです。
日常使わないような言葉や、舌を噛むような難しい言葉を使うと、リアリティーが無くなるし、キャストが台詞を覚えにくいし、お客様にも伝わらないためです。

上演時間は90分と決めていたので、400文字原稿で約90枚です。

とりあえず完成したものは60-70枚程度でとても足りません。エピソードを加えたのですが、それでも75枚程度。
とりあえず出そうとキャストに公開したところ、色々と提案をいただきました。
その提案を咀嚼して反映したら、薄い部分が厚くなり、ページも86枚程度になって、90分の目処が立ちました。

この本でキャストの皆さんが台詞を出したり演技をして、それをお客様の前で披露するのかと思うと緊張しますが、とりあえず予定通り完成しました。あとは稽古しながら微調整です。

まとめ

ねこのバロンの芝居作りで大切にしている「心と心のキャッチボール」ができるように基礎練を行い、その成果は本番でも発揮できましたし、キャストのキャラは脚本執筆でも参考になりました。

初めての脚本執筆で400文字で90枚はハードでしたが、箱書きをしていたためスムーズに書け、またキャストの提案もいただいて予定通り完成させることができました。

次回は稽古やスタッフワークについて書きます。

ご覧いただきありがとうございました。