日記132 飛鳥川ちせの役割

 滑りこみで『SSSS.DYNAZENON』の期間限定配信を見た。以前の印象だと、たくさんの線を用意したもののうまく足並みが揃わずに失敗したという印象だったが、意外とそうでもなく、けっこう綺麗にまとめたなと思った。ただよもゆめ以外の人たちを描ききれなかった面は否定しがたく、そもそも構成自体が、1クールではむりだったといわざるを得ない(ユニバースでも結局深堀りはなされなかった)。
 ところでいくつか事前の印象と変化したところがいくつかあった。そのうちのひとつが飛鳥川ちせである。彼女はダイナゼノンの正規(ガウマ隊に正規という概念があればの話だが)ではないが、ガウマ隊の面々をつなぎとめるボンド(絆)の役割を果たしていたと思うのだ。まず彼女が暦を引っ張って怪獣見物にいかなければあの4人でダイナゼノンに乗組むことはなかったわけだし、やさぐれた夢芽を引戻す説教師を務めたのも彼女だ。そして彼女がゴルドバーンを育てることにならなければ夢芽は墜落死していたかもしれない。また、ダイナゼノンに搭乗する4人がそれぞれ果たせない役割をひとりで埋めていたのが飛鳥川ちせだったと思うのだ。
 彼女にはつまり壊れそうになる関係を修復し、不足する役割を補填する機能があったわけだが、しかしこれはあのチームのなかにいてはすることのできなかったものである。たしかにガウマ隊は彼女なしでは維持できなかっただろうと思われるし、作中的にも作品における外形的にも彼女は欠くべからざる役柄だが、それゆえにこそ、チームに埋没することは許されなかったのだ。いくらチームの一員として認められ、また視聴者の心情的にガウマ隊に含められても、傍目から関わるしかどうしてもできないのである。

(2024.2.16)

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