日記71 中央自動車道

 先日祖母の家に行った。同じ市内に住む大伯母の家に生る柿を、母と祖母と一緒に採るためだ。10年前に夫を亡くし、以来母の実家でひとり暮らしをしている祖母は、しばらく前に親友が死んでからというもの、足が悪いために外出できずにかなり気を病んでいた。外出するのが好きなのだった。近くの大伯母の家とはいえ、もはやなかなかできなくなっていた外出に元気が出たのか、その帰りに入った回転寿司で祖母はよく食べた。巻寿司を含めて5皿程度と味噌汁だ。帰り道と帰ってから、母はおばあちゃんよく食べてたよー、としきりに言っていた。
 その祖母の家は、中央自動車道の通る町にあった。僕は小さいころから、両親の運転する車に乗り、東海環状自動車道を経由して中央自動車道を走って祖母の家に至っていた。残念ながら、東海環状自動車道ができる前の道は覚えていない。
 東海環状自動車道も内陸だが、中央自動車道はそれ以上に山だらけだった。瀬戸赤津ICの時点でもう周りには盛りに葉を繁らせる山々が迫っているのだが、土岐JCTで飯田方面に向かうと山岳具合は増した。山間を通り、谷の上を走り、南に住宅街や工場を見下ろし、短い間隔で繰り返されるトンネルを抜ける。祖母宅には日曜日に行ったせいで、行楽帰りの客で中央道は混みあっていた。幼いころも同じようなことがあったが、今度ではっきりそれが認識された。
 家族で遠出するとなったとき、もっとも多く行ったのが祖父母の家だった。そのときには、下道を通ったときもあるが、大体は東海環状から中央道を経ていた。僕が見ていたのは山だった。移動し、走っている周りの風景は、僕のなかでは海ではなく山なのだ。きっとこれは、一生拭われはしないだろう。

(2023.10.30)
 

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