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カウンセリングが高すぎるのはなぜ?

カウンセリングは、だいたい地方でも5000円ほど、都会だと1万円前後することがほとんどです。カウンセリングは、健康保険の診療報酬としてごく一部しか認められていないので(2024年5月現在)、医療機関では赤字覚悟のサービスとして、患者さん向けに行われているか、医療機関(保険診療)とは別に自費でやっていることがほとんどかと思われます。
(筆者注:2024年6月からトラウマにかかわる公認心理師の対応には少しだけ診療報酬がつくようになりました)

このようにカウンセリングは、5,000円〜10,000円以上と、一般的に高額に見えるのではないでしょうか。

カウンセリングをしている「心理職」の年収は決して多くない。それはなぜ?

1時間あたり5,000円とか10,000円とかだったら、カウンセラー(心理職)はかなりの高給取り?と思われるかもしれません。「時給5,000円や時給1万円の仕事」と聞けば、「高すぎる!金持ち相手の娯楽じゃないか!?」と思われるのも当然です。

でも、実はここにはいくつか落とし穴があります。

1つめ
カウンセリングをするためには「場所」が必要!(当たり前)

カウンセリングをするためには、カウンセリングを安全に安心して行える(クライエントさん=お越しになる方)が安心できる安全な「カウンセリングルーム」が必要です。
そこには、家賃がかかります(当たり前ですね)。仕事をする日を20日した場合に、1ヶ月の家賃が5万円の場合は1日あたり2,500円かかりますし、1ヶ月の家賃が10万円の場合は1日あたり5,000円かかります。

オンラインの場合は、このような家賃など必要経費が節約できますが、オンラインでのカウンセリングがコロナ禍で増えたこと、まだそこまでオンラインでのカウンセリングニーズが増えきっていないこと(対面を希望する人がまだまだ多い)などから、それだけで生計を立てていくのは、よほど広報に精通していてそこに時間を避ける場合でなければ難しそうです。

2つめ
カウンセリングを週5日間8時間ぶっ続けでするわけじゃない

労働時間が1日8時間だとしても、1回1時間(もしくは45分や50分)のカウンセリングをひっきりなしにして、お昼休み以外ずっとカウンセリングをしているわけではありません(なかにはそういうところもあるかもしれませんが)。
人気があるないではなく、まず1日8時間もカウンセリングをしていると、6時間とかを超えてきた頃には、結構疲れが隠せません。一人ひとりのお話を丁寧にお聴きして、ときにはアドバイスしたり、ときにはセラピーの技法を使ったり、というのは意外と骨が折れます。

「ただ話を聞いてるだけでお金もらえるってラクそう」と思われることもあるのですが、全部真剣に8時間話を聴くというのは、集中力ももちませんし、8時間目にはだいぶ疲れが出て質が落ちてしまいます。

また、同じく2つめの話題についてですが、
「パズルのように、うまい具合に空き時間にカウンセリングが全部うまるわけじゃない」
ということがあります。カウンセラー側の都合で、10時からは誰々さんで、11時からは誰々さんで…と埋めることはできないので、当然ながら日中働いている方は仕事終わりにしか来れなかったり、「子どもが学校から帰ってくるまでの間」という方や、「土日しか来れない」という方など、夜や土日に偏りがちです。

いや、そもそもホームページをちょっと出したところで、わんさか人が来るわけではないので、最初はカウンセリングに来ていただける環境を作ることから難しいでしょう。

以上のことから、1日のカウンセリングは平均4〜5時間くらいがいいところでしょう。たくさん詰め込みでやられているところ(30分×16個など)もあるにはありますが・・・
みなさまご存知のとおり、日本の法律(労働基準法)上は、一日8時間(記録を書いたり電話応対、メール返信なども含めて)です。お疲れさまです。。。

3つめ
カウンセリングの予約のやり取り、ホームページの更新、経理、事務など、仕事としてやることはカウンセリングだけじゃない

これは2つめにも関連してきますが、カウンセリング以外にも電話やメールのやりとり、事務作業、経理、ホームページの作成・更新など運営作業、その他知ってもらうための営業活動など、やることはたくさんあるので、そもそも8時間労働で8時間全部をカウンセリングに充てることは非現実的です。

4つめ
それ以外にも電話代、サーバー費用、電気代など諸々の費用がかかる

これも当然のことではありますが、人が仕事をする・生活をするということは、諸々の経費が必要であり、またそれらを束ねたり登記・確定申告、雇用契約や業務委託契約をするための契約書を作成・チェックしたり、そのために専門家に頼ったり(その専門家を探す時間や労力をかけるなど)様々に細かいところでお金がかかってきます。

以上のことから、1時間5000円もらっても、そのまま時給が5000円になるわけではなく、むしろ1日4ケースしかカウンセリングがなければ、8時間働いているうち(事務作業とか営業・広報活動など含む)、4時間しかお金が入ってくる時間がないので、それだけで単純計算しても、1時間あたり2500円になるわけです。

医療機関では1回1,500円とか3,000円くらいだから、カウンセリングもそれくらいにすべき?

診察時間と同じように10分〜15分くらいのカウンセリング時間にして、保険がきかない分を調整したらよいのでょうか?

カウンセリングでは、お話を詳しくお伺いすることが前提ですので、そのためにはある程度の長さの時間をかけねばなりません。本来的には医師もそうすべきですが、経営が成り立たなかったり、患者さんが多すぎたりすることから、一人一人の患者さんに時間をかけて丁寧に診療を試みている医師にとっても悩みの種なのです。

カウンセリングはどれだけ短くても、一回30分程度は必要でしょう。もちろん短い時間でOKな場合もありますが、30分ではとてもじゃないけど時間が足りない!という場合に備えて、時間設定を30分ギリギリとすることは控えておきたいところです。

日本の医療には様々に言われるところもありますが、なんだかんだ言ってやはり「国民皆保険」に支えられているのでしょう。これがあるから、医療費が安く抑えられ、カウンセリングが比較的に高額に感じられますが、そもそものベースとなる医療費が高ければ、なかなか医療にかからないようになってしまい、早期発見・早期治療がなされなくなり、受診控えによる(身体含む)病気の悪化が高頻度で生じるようになるでしょう。

これはもはや医療制度、システムだけの問題ではなく、国として税金をどのように使っていくかということにかかわってくることと思われます。


以上、カウンセリング料金に関する葛藤について書いてみました。
この件に関する、現時点での個人的な結論としては、以下のとおりです。

カウンセラー側が生計を立てられて、クライエント側がリーズナブルな料金でカウンセリングを受けられるようになるには、「国や地方自治体の税金を一部でも充てること、会社の福利厚生などで会社が負担すること等当事者以外が一部でも負担する仕組みが必要」です。

あちらを立てればこちらが立たず・・・
根本的にこの(金銭的な)問題が解決する仕組みが生み出されればと思います。

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