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#読書好きの人と繋がりたい #2022年の本ベスト約10冊

こんばんは。
タイトルのままです。Twitterのタグでこんなのがありまして、第九を聴きながら、やってみようかと思って紅白なんか気にも留めず書いています。

今年出た本もあれば昔の本もあっていろいろで、ジャンルもいろいろ面白い本があったので、ジャンル別に分けていこうと思います。
とりあえずメインで読んだり書いたりしているのは純文学やエンターテイメントの小説なので、小説でベスト10は決めました。

1 村山由佳:ダブル・ファンタジー(上下)
失恋後、傷心のまま旅立った帯広のホテルで、一気に読んで読了した作品です。とにかく読まさる。筆力と「この主人公、この題材が書きたい!」という筆者の想いの強さに圧倒されるばかりでした。
昨日(12月30日)あった読書会でもこの本を発表してきましたが、村山由佳さんがこのような過激な作品を書いたことに驚く人続出で、凄く話題になりました。
結婚生活に躓き、ある脚本家と惹かれ合い、やがて恋愛とセックスがすべての人生へとひた走って、あるいは墜落していく主人公。
誰も彼女のことを本当には大事にしてないし、恋愛によって主人公が何か自由になったり安心や居場所や権利を得たようには読めないです。
今、多様性の時代で、このような恋愛至上主義の女性は流行らない、もはや時代遅れなのかもしれないのですが、こんな女性はきっといるしこれからもい続ける。
もう恋愛では人は幸せにはなれないかもしれないですが、それでも恋愛をやめられない、そういう人には刺さるかもしれないです。

2 石田衣良:北斗 ある殺人者の回心
超分厚い本。しかも、幼い頃から両親に虐待されて、しまいには殺人を犯し、死刑に問われるというショッキングな内容。しかもこれは、私の亡き父が読んでいた本としてもらい受けた本なのでした。父は何を思ってこの本を読んだのでしょう?私の小説も読んでくれていたようです。
私はピカレスク小説として今年『ユー・ノウ・ユア・ライト』という「虐待を受けた少年が殺人を犯す物語」を同人誌として発表したのですが、それは「虐待の連鎖」などを描きたくて書いたものでした。しかし本作では、むしろ殺人とそれに向かう悲惨な過去を描きながらも、最も描きたいのは裁判シーンや、「回心」とタイトルにもあるように主人公の心の回復にあるのかなと感じました。そういう流れは往年の石田衣良さんの小説らしいとも思いました。
分量的にも内容的にも非常に重たいので覚悟が相当ある人はぜひどうぞ。

3 山田詠美 つみびと
実際にあった事件を基にして書かれた作品。
虐待の連鎖の末、育児に疲れた母親が、子どもを遺棄する事件。
私はかつてこの人に憧れて田舎を出る決心をしました。まだ小説家なんて考えもしなかった頃です。
とにかく「ボーイ・ミーツ・ガール」小説で一世を風靡した人で、そんな人がこのような小説を書いたという事実が重いし重要だと感じました。
「ボーイ・ミーツ・ガール」だけでは子どもは育てられない。「あの頃」の作品の登場人物たちも今ではこんなふうになっているかもしれないと思いました。
山田詠美さんは、特有の引き締まった文体が本作でも健在で、それもまた効果的なスパイスになっていました。80年代から活躍して今でもこれだけ面白く質の高い小説を書いていることにもリスペクトです。

4 三島由紀夫:春の海 豊饒の海(一)
これだけでも分厚いのに、全部で四作にわたる連作。三島由紀夫の膨大な作品群の最後の最後。これ一冊で読了に一年かかってしまった自分はいったい……春に読み始めて冬に読了しました。
文学的野心のでかい作品に惹かれます。また本作は、基本的な話としてはシンプルな悲恋というのも読みやすかったです、比較的。
まだまだ序章に過ぎないので、来年は続きを読んでいきたいです。

5 三浦しをん:ののはな通信
別れた恋人と遠距離恋愛をしているときに札幌から釧路への列車で必死に読んだ本です。これも分厚いけど、日記体なので読むこと自体は進みやすいかと。でも訴えてくるものが非常に重い。
女性同士で惹かれ合う二人。しかし別れてしまう。恋人ではもうないし、一方は結婚さえしたのに、そうして最後には会えなくなってしまうのに、魂がずっとずっと繋がり続ける二人の姿に胸を打たれ、愛って何だろう?と問われている感じがしました。

6 年森瑛:N/A
女性が5人も芥川賞ノミネートされて話題になっていた作品の一つ。
受賞作より、この作品のほうが個人的にはわずかに刺さりました。
拒食症だったり、LGBTだったりする主人公。しかしそれゆえに周りの不適切な「配慮」や不理解に苦しむ。
私は主人公とは違う障がいを抱えて苦労しているので、全く全部がわかるというわけではないけど「それは違うし、そうされたら困る」という気持ちが一種のあるあるのようで、たくさん付箋を貼りました。

7 砂川文次:ブラックボックス
筆者の方が芥川賞受賞会見でなんかちょっと変な感じだったみたいですが(苦笑)作品は確実に面白かったです。
他の作品もぜひ読みたい。
何気に帯広に少しゆかりのある方。

8 高瀬隼子:おいしいごはんが食べられますように
「食べる」をキーワードに、少し弱いヒロインとある程度強い主人公、サブヒロインがモヤモヤする話。
ごはんが少しもおいしそうに感じられない(苦笑)
これも弱者あるあるなんだけど、せっかくだからごはんはもう少しおいしそうに食べてほしいのでした。

9 川越宗一:熱源
これは直木賞。あまりの分量で、なかなか手を付けられなかったのだけど、頑張って今年になって読了。
樺太アイヌの物語。もう少し短くまとめてもらえると助かったのですが、熱量には圧倒されました。

10 島本理生:アンダスタンド・メイビー(上下巻)
モヤモヤを抱えて、メンタルを病んでいるヒロインが抑圧と対峙し、少しずつ打ち勝っていくという、島本理生さんの王道でありひとつの到達点といわれている作品。
この人の作品は少し読み飽きてしまったけど、メンタルに闇を抱えている人や苦しんでいる女性はぜひ。

ほかの分野にも面白い作品がたくさんありました。

コミック1 マキヒロチ:いつかティファニーで朝食を
面白くて面白くて、何度も近所のゲオに通ってついに読了しました。
おいしい朝ごはんが好きな4人の女の子が主人公で、女性のモヤモヤを代弁しつつ、毎回おいしそうな朝ごはんが出てくる人気漫画です。
何かグルメ系の漫画が読みたくて読んでみたら人間ドラマが面白くてハマりました。
少し恋愛至上主義かなぁ?と思いますが、その点は現在連載中の作品で解消されているので大丈夫。

コミック2 益田ミリ:世界は終わらない
昨日(12月30日)ブックオフで買って、1時間くらいで読了してしまい、まさかのランクイン。
とにかく爽やかな書店員の男性主人公が魅力的。人気作品みたいです。
今、書店も本もオワコンな中で、本を大切に、不器用でも丁寧に生きている主人公が素敵です。
益田ミリさんは旅モノもたくさん読んでいます。

同人誌1 イーハトーヴの夢列車二号車(文学フリマ岩手開催記念アンソロジー)
今年は文学フリマ東京と岩手と札幌、自身初の本州デビューで、どんなすごい同人誌が読めるのかな?と思っていましたが、正直東京のレベルが想像していたより高くなく(私が買っていないだけかも)、岩手の人の本の方が面白かったです。
なかでもこのアンソロジーは、非常に郷土色が強く、これは他の地域の文学フリマにはない傾向です。もちろん札幌にもないです。
非常に興味深く読み、ついに私自身が三号車に参加してしまいました。来年の文学フリマ岩手で販売されるようです。
文学フリマ岩手にいらっしゃる方は、最初の一冊にぜひおすすめです。

詩1 谷川俊太郎×鴻上尚史:そんなとき隣に詩がいます
札幌にある、谷川俊太郎さんの作品を中心に詩がめちゃくちゃいっぱいあるカフェ「俊カフェ」さんで読んだ本。
谷川俊太郎さんの膨大な、実に膨大な作品群のなかから、鴻上尚史さんが「こんなときはこの作品はどうかな?」と優しくナビゲートしてくれる本。
谷川俊太郎さんの詩がいいのは当たり前、鴻上さんのエッセイも面白く、いいとこどりができて、詩初心者の方にも勧めたくなりました。

エッセイ1 萩原魚雷:書生の処世&活字と自活
遠距離恋愛をしていたときに釧路の古書店で出会った二冊。
とにかく本が好きで好きでたまらないけど結構ダメな物書きによる、日常と本の感想なんかがいっぱい綴られている。
装丁もすごくいい感じで。
全部そろえてしまいたいのですが、なかなか見つかりません。

エッセイ2 山本玲子×牧野立雄:夢よぶ啄木、野を行く賢治
この本がなかったらイーハトーヴの夢列車参戦は叶わなかったであろう、石川啄木と宮沢賢治のことがやさしくよくわかるすぐれた対談集。
啄木と賢治のはじめの一歩。
これも釧路の古書店でゲット。
彼のことはもう終わったのでいいですが、釧路の古書店はどうにかしてまた繰り返し何度も行きたいのです。喫茶モンクールさんも。

新書1 宇野常寛:ゼロ年代の想像力&水曜日は働かない
別れた彼は新書しか読まないくらいの人で、むしろ小説をなかなか読んでくれない人でしたが、彼から借りて読んだこの二冊はとても面白かったです。
私は大学時代に教育社会学を専攻していたので、もともと社会学自体には少し馴染みがありました。ただし思い切り東浩紀さんとか宮台真司さんとか、この本でディスられている人ばかり中心の時代・ゼミだったので、読んでいて複雑な部分も。他人を悪く言いすぎだし。
でもこの人に出会ってよかったと思いました。

その他1 BOOM BOOM SATELLITES 25th Anniversary BOOK
ブンブンサテライツのファンブック。タワーレコードと、中野雅之さんの通販でしか売ってない本だと思うのでAmazonとかには置いてないと思います。
中野さんによる回想録と、川島道行さんをよく知る人々による言葉、そしてブンブンサテライツの過去のインタビューなどが集められています。
とにかく読みごたえがあり、特に川島さんが、ブンブンサテライツのパブリックイメージとは結構違う素顔を持っていて、中野さんが怒ってばかりいて……なんか思っていたよりだいぶ違っていて、「人って何だろう、生きるって何だろう?」とますます考えさせられて、それこそがブンブンサテライツの音楽の真髄なんだなと改めて凄みを見せつけられました。

書いているうちに第九も終わってしまいました。
本文が長すぎて、画像とかAmazonリンクとかもやってる気力ありません。申し訳ない。興味を持ったかたはぜひ調べたり買ったりしてみてください。

年末年始に思い切り疲れました……
来年からもバリバリ読んだり書いたりしていくのでよろしくお願いいたします。
純文学もエンターテイメントもたくさん読んで、エンターテイメント作品の方がより心から「面白かった!」という感想が湧きやすい一年でしたね。自分で書く方向性も、そんな風に変わっていく、最中なのかもしれません。



いつの日か小説や文章で食べていくことを夢見て毎日頑張っています。いただいたサポートを執筆に活かします。