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100万年前の満月どん兵衛

こんちゃん作の恋愛物語『満月どん兵衛』
ちょっちょさん作の『15年後の満月どん兵衛』
樹林ちゃん作の『クリスマスの満月どん兵衛』
に触発されてショートストーリーを書いてみました。



「ねえ、知ってる?
 地球って星」

ふいに彼がそう言った。

「地球、、、聞いたことある」

わたしは応えた。

「地球では、
いろんな感情を味わうことができるらしいよ」

「ふーーーん、感情かぁ。興味深いね」

とある宇宙の、マルマル星での
おだやかな日常のひとこま。

とても静かでつねに満たされている。
例えると、毎日が満月のようだ。

だけど、ふと、
怒ったり、悲しんだり、喜んだり、
「心が揺さぶられる」
という体験をしてみたくなる時がある。
あ、あと、おいしいもの、食べてみたい。

わたしたちには、肉体がないから。


「行ってみる?」

ささやくように、彼が言った。

「どうせなら、ものすごい波瀾万丈の人生ってやつを設定してさ、ふたりで。」


「うーん、そうだなぁ。。。」

刺激的なのも、楽しそうではあるけれど。


わたしは、少し考えてから、応えた。

「なんかさ、ささやかでもいいから
いろーんな感情を毎日たくさん味わう人生っていうのも、おもしろそうじゃない?」



彼も少し考えてから、応える。

「たとえば、ちょっとしたことで恋に落ちて
ちょっとしたことですれ違って
ちょっとしたことでケンカして…
真冬の真夜中にちょっとした食べ物で仲直りする、
みたいな?」


完璧な応えだ。


あなたは、わたし、わたしはあなただから
当然と言えば当然なのだけれど。


「ちょっとした食べ物は、なんにしよう?」

「まるいものがいいね」

そんな感じで、
わたしたちは、それぞれの性格や
歩む人生を細かく設定していった。


彼は売れないミュージシャンで
私は彼のいちファンとして出逢うのだ。

なんて素敵。


すべてのストーリーを2人で考え終えたあと

わたしと彼は手をつなぎ

宝物のような感情と

美味しいものを味わいつくすために

地球へと旅立った。


いつもの満月の夜に。


生まれ落ちた瞬間に

お互いのことを忘れるとしても

きっと出逢えると信じて。


のちに、2人が食べる
ちょっとした食べ物が

「プレミアムどん兵衛」なるものだと知るのは

ここから100万年後のおはなし。



おしまい。

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