香水-ある人殺しの物語ー読みました。
ピース又吉さんの【第2図書係補佐】からおもろそうだな~読めそうだな~って作品を読んでみよう企画を実施している。
あまり読書をしない(できない、わからない、続けられない、ねむい)私が、おもしろいと思っている方のおもしろいと思っている作品がおもしろいと思えるのか。
以前夏目漱石の【こころ】の文庫本を買い、読み始めたけれど、中途半端で止まっている。
なんか、難しかった。
休みの日、朝起きてすぐ。日中床に寝ころびながら。職場で暇な時間、休憩中。
場所と時間を変えて、少しずつ、少しずつ、ページをめくったけれど、難しかった。
私の理解力などこの程度かと不貞腐れて本を閉じ、横になって目を閉じた。
それ以来手をつけていない。読みたくないわけじゃない。おもしろくないと思ったわけでもない。なんかあんまりわからんなと思った自分が悲しくなっただけ。
いつかもう一度チャレンジしたときに、ああなるほど、と思える箇所が増えていたらいいなと、思うだけ。
【炎上する君】【何もかも憂鬱な夜に】【杳子・妻隠】【香水ーある人殺しの物語ー】【月の砂漠をさばさばと】を読了。
おもしろかったな~。
本当はそれぞれ感想文を書きたかったんだけれど、読んでいる最中にとった感想メモを見たら予想以上にちんぷんかんぷんだったので(マジでウケる、こういうところがへこむ、ほんと私ってば。)、今回は【香水ーある人殺しの物語】について。
普段香水は使わない。
匂いに関しては、人並みくらいには気にするタイプだとは思うのだけれど。
だいぶ前の誕生日に、とてもいい香りで大容量の香水をもらった。2、3回使ったあと、その存在すら忘れてしまい、年末大掃除の時にアッと、気まずい再会を果たした。
友だちと買い物に出かけたとき、某有名フレグランスショップに立ち寄った。幅広い種類の中から色々匂いを嗅いで、友だちとおそろいのものを買った。
またもや存在を忘れ、なんなら目を合わせないようにして、
かつての学友だがそんなに話したことないから「オゥ!」と声をかけるのもなあ、、、
とずっと会っていなかったのにある日突然道ですれ違う瞬間のようななんとも言えない空気を己で演出し、ほとんど日の目を見ずさよならした香水。
そういった類の思い出しかない。
元来強い匂いは好まないもので、柔軟剤の匂いだけで充分だと思いすぎていて、
家を出る前のワンプッシュ、が習慣化できなかった。
ただ柔軟剤はマジでいい匂いすぎるから男女問わずいろんな人に何使ってるのと聞いていただけたり調子に乗って布教しまくったり
兄は同僚の女性にも聞かれたらしく、せっかくならと同じものをプレゼントしていた。
そこから先の話があったならば私のトークネタのひとつになったのに。。。
なーんて。
香水に限らず体臭やその辺の匂いにまで考えを広げるならば、人生のその時その時を思い出せるような、切っても切れない何かを感じるのはみんな共通ではないかと思っている。
【香水―ある人殺しの物語―】
18世紀、フランスはパリを舞台にした、1人の男、グルヌイユの物語。
産まれ落ちたときから環境は最悪で、実の母は自分を産み、そのまま自分を殺そうとしたことで絞首刑。
引き取られた孤児院でも心の無いマダムに適当にあしらわれ、孤児たちからも気味悪がられるばかり。
ある程度育ち、売られた先は皮なめし職人の元。まだまだ幼く細い身体で、激臭漂う職場で1日中激務をこなし、ふかふかなベッド……などあるはずもなく、疲れなど取れない寝床で朝を待つだけ。
そんな彼には人並み以上の(他の"人"を同じ天秤に乗せることすらはばかられるほどの、)嗅覚があった。
名前を学ぶ機会がなくても全てを匂いで区別していた。人、物、場所、空気、世にある全てを。
そして尋常じゃないほどの生命力と精神力。流行り病にかかり、治らない、死を待つだけだと医師に見放されても脅威の回復を見せ、また働いた。周りの人間からどのような扱いを受けても彼の心には影響がなかった。
真面目な働きぶりから、親方の付き添いで街に出て以降、パリ市内を自由に歩き回れるようになるほど信頼を得た。
今まで以上に数々の匂いを知る。
そしてある日、その中でも"匂いの頂点"だと感じる強く惹かれる香りに出会う。
鼻を頼りに追いかけるとそこには1人の少女。嗅いだことのない香り、その香りの為に、彼は何の躊躇いもなく少女を手にかける。
グルヌイユは、一言で言うと"ヤバいヤツ"なんだが、そのヤバさが天井を突き抜けているからヤバい。
[特殊な能力を持っていて頭がイカレているヤツの話]と言ってもいいのだろうけれど、なんせそれだけで済ませてはいけない"におい"が、彼を表す文章からしてもぷんぷんだ。
匂いへの執着が初めからあったわけでもなしに、(なんなら初めはいい匂いと臭いの差もなかったらしいから、と考えると、え、え、そうなの?とこっちもおかしくなる。)
本当に少女との出会い、少女の匂いとの出会いがなければ、一生奴隷のようにこき使われ、それに対してイヤだとも、幸せだとも、うんともすんとも思わなかったのだろうなと思う。(思わないようにしていた、ではない。そういった感情が湧き出ることすら彼にとってはありえないことだった。)
少女が死んだ後、すぐに匂いが消えてしまったことから《至高の香りの保存》が人生の目標になったグルヌイユは、かなり頭が回る印象だった。
最終目標への道筋が全部見えているかのように動いていた。
常人に合わせた嘘も思いつくし、結構な効率厨。
もちろん作中で自問自答や、考え方が変わる様もあったりしたけれど、最終的には目標を達成し、なんなら香りを"使って"自分以外さえも惑わして、己の最期も香りに決めさせていたのだからキモい。そう、キモいんだグルヌイユ。
小説を読んだ後に映画も見た。
映画のほうも確かにイカレ野郎なんだけれど、まだ感情の振れ幅がマイルドで、私のようなただの人間が知ってる種類の"思い"、その描写があったように思うから、ちょっとこう、同情の余地があるというか。
人間味がほんのり見えていた。
例えば、最初に出会った至高の香りの女性と、普通の恋人同士のような関係になれていたら違ったのかもなァ…みたいな回想シーンがあったりとか。
これは原作で少女だったところが、映画では若い処女だったがゆえかもしれないけれど。
小説のほうでは、そんなことをこのグルヌイユというヤベェやつが考えるかなァ?????そんな、ピュアな恋心みたいなん、芽生えるかなァ????みたいな感じだったから、それぞれでちょっと印象が違う。
それもおもしろさ。
あと小説のほうは、香りの説明文が本当に巧みで、「~のような」とつく文はどこを読んでも
ホアー!すげー!!
となった。
芳醇で、豊潤な表現は、そのバリエーションにも面白味があった。
グルヌイユが嗅ぎ分けたアレソレを想像しうる、想像をかきたてられる言葉たちだった。
すんごく濃かったな~という感想。
頭がぐあんぐあんする。その濃密さに。
あの終盤の"人間"のシーン、
もし私もあの場にいたら、ひとつの小さな壜から放たれた芳しい香りで、本能だけの人間になるのだろうか。
こわいな。
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