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『Jack Move』レビュー

Jack Move』は、Edd Parris氏によって製作された、近未来のサイバーパンク世界を舞台としたJRPGインスパイアの2D RPGゲームだ。

主人公は街の自警団に所属する女性ハッカーのノア。世界を牛耳る巨大なコングロマリット『モノマインド』を相手に、彼らの手によって行方知れずとなった父親の手がかりを求めて行動していくこととなる。

開発:So Romantic
販売:HypeTrain Digital
配信日:2022年9月9日 / 日本語サポート有
Steamにも同レビューを公開中:Link

ゲームシステム

本作は良い意味でレトロでオーソドックスなRPGだ。

ストーリーベースの作品で、メインシナリオとサブクエストとで構成されている。2Dマップはシームレスにつながっているわけではなく、一定の広さで区切られていてエリア間を移動する形となっている。

戦闘はパラメータの「素早さ」によって、敵味方の行動順が回ってくるタイプのターン制コマンドバトルで、ランダムエンカウント方式で敵に遭遇するとサイバースペースに突入して戦いが始まる。行動順を示すパネルも表示されているので戦略も立てやすいだろう。

コマンドは通常攻撃と防御、攻撃・補助・回復などの魔法に相当するソフトウェア、ダメージを与える or 受けることでゲージを貯めて発動する必殺技『ジャックムーブ』が用意されている。

属性の概念や使い込むことで強化される熟練度的なシステム、主人公自身も経験値を得てのレベルアップなどもRPGとしての基本を抑えた印象だ。

PC関連の用語は多く登場するものの、ゲーム的には難しい要素もなく、ビジュアルを含めてサイバーパンクな世界観に上手く落とし込まれていて、現代の感覚からしてもプレイはしやすいだろう。

I.C.E Breakerとは

無料プレイ可能な『Jack Move: I.C.E Breaker』がリリースされているが、その名の通り『Jack Move』本編のアイスブレイクとして、本作の冒頭部分をプレイ可能なプロローグ的なものだ。

日本語訳も収録されているので、どういった作品か体験したければ本作の購入前にプレイしてみるのもいいだろう。

『Jack Move: I.C.E Breaker』は 2022/11/21 に非公開となった。実質的なデモ版としてうまく機能していたのでもったいないとは感じるものの、本編のリリース成功に伴いその役割を終えたということなのだろう。

日本語サポート

UI/テキストが日本語に対応。翻訳を担当されているのはくらむ氏 (@clamm0363) と、ラスカル/Soichiro Arai氏 (@rascal111111) だ。

本作のテキストはすべて平仮名・カタカナ・スペースの組み合わせのみで構成されていて、漢字と読点が存在しないというユニークなものだ。しかし不思議と読みやすく、フォントも相まってサイバーパンクな世界観にうまくマッチしている。

これは翻訳内容の品質が高く、重要なワードは色分けされ、平仮名とカタカナの表示バランスが良く、ワード毎にスペースが開けられているからだろう。

レトロスタイルに沿って意図的にこの形としているようで、これはこれで味があって良い翻訳表現だと感じられるものだ。

翻訳その他日本語テキストにまつわる問題を発見した場合は、Steamコミュニティのスレッドよりも公式Discordサーバ (https://discord.gg/2MUPhHAq) の "-bug-reports" チャンネルに報告してほしいとのことだ。

気になるポイント

全体的にバランス良くできている、という印象なので目立って気になるポイントはないというのが正直なところだ。

あえてフィードバックをするとすれば、例えば任意でダッシュできる機能といったように、プレイを補助するタイプのものが追加されるとより便利かも知れない。

オプションには既に、画面酔いの防止機能や、戦闘を簡略化するクイックバトル機能、必殺技のコマンド入力操作を常に成功させてくれる機能などが用意されているので、フィードバックで更に追加される可能性もあるだろう。

総評

数年前からSteam Next Festなどのイベントで繰り返しデモ版が公開され、その度にフィードバックを受けて堅実に対応してきたという印象で、完成度の高さが感じられる。

本作はレトロスタイルなJRPGインスパイアということで、かつての古き良きゲームデザインを忠実に再現しながらも、細かな部分は現代的なセンスでプレイしやすく手が入れられているといった印象だ。

あまり手放しに褒めるつもりはないのだが、特に欠点がないというのも事実なのだ。先に書いたように『Jack Move: I.C.E Breaker』も用意されているので、気になったならば手にとっては損はないはずだ。

Steamニュースハブには本作が影響を受けた作品について、開発者のEdd Parris氏のコメンタリーが投稿されている。なるほど、と思わせる内容なので一読の価値があるはずだ。


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