『The Callisto Protocol』レビュー
『The Callisto Protocol (カリストプロトコル)』は、西暦2320年の木星の第4衛星 "Callisto (カリスト)" を舞台とした、SFサバイバルホラーゲームだ。
主人公ジェイコブ・リーはフリーランスの運送業者。United Jupiter Company (UJC) からの依頼を受け、木星の第4衛星カリストから第2衛星エウロパへ向けて輸送船で飛び立ったところだったが、アウターウェイと呼ばれる反UJCテロリストに船を襲撃され、カリストへと不時着してしまう。
からくも生き残り救出されたものの、なぜかカリスト上の『ブラックアイアン刑務所』へと収監され、非人道的な扱いを受ける。だが次に監房内で目覚めた時には、そこはもう死と混乱の最中にあった。
ゲームシステム
本作の目的はブラックアイアン刑務所――引いては衛星カリストからの脱出だ。実質的にチャプター制となっていて、そのエリアにおける最終目的地に到達すると、次のエリアへと強制的に移動するという構成になっている。
それぞれのエリアはリニアに進んでいくが、分岐に差し掛かることもあり、そこで寄り道をすれば物語の背景に迫れるオーディオログや、弾薬・回復・換金アイテム、クレジット、そして武器の設計図が入手できることもある。
しかし、目的地までのルートを示す機能やマップといったものが一切用意されていないので、どちらが正解でどちらが寄り道かが判断しにくい。特に本来のルートを一定以上進むと後戻りができなくなるポイントもあるため、もうひとつ何かプレイヤーを補助する工夫がほしかったところだ。
戦闘
変異したクリーチャーに対して、主人公は近接武器の「スタンバトン」と、複数の銃器、そして重力を操る「GRP」というガジェットを駆使して戦っていく。
SFサバイバルアクションと言うと漠然と遠隔武器がメインのようにイメージするかも知れないが、本作ではほとんどのシーンにおいて近接武器のスタンバトンが主力武器だ。クリーチャーは常に接近戦を挑んでくるし、弾薬の入手数やインベントリにも限りがあるため、銃器のみで戦い抜けるゲーム性ではないと言った方が正しい。
実際、クリーチャーは攻撃モーションに入るとスーパーアーマー(攻撃を加えてもひるまない)状態となるので、回避またはブロックしてから近接攻撃を加えていくというパターンがほとんどだ。
スタンバトンでコンボを決めればクリーチャーが体勢を崩し、オートターゲットで高威力の近接射撃を行う "クイックショット" も基本アクションとして用意されているので、慣れると節約しつつ上手く立ち回れるだろう。
なお、重力を操るガジェット「GRP」はオブジェクトを投げつけたり、同様にクリーチャーを掴んで突起物に串刺しにする、換気扇に突っ込んでバラバラにするといったことができるが、エネルギーを消耗するため連続使用はできない。あくまでサブウェポンの扱いと捉えておきたい。
装備品の入手と強化
主人公の装備を具体的に言うと、近接武器の「スタンバトン」、遠隔武器の銃器が5種類 (ハンドガン2種・ショットガン2種・アサルトライフル)、そして重力を操る「GRP」というガジェットだ。
ストーリー進行に伴って自動的に入手するものと、設計図を発見して製作するものとがあるが、いずれも "リフォージ" というショップと強化機能を兼ねた装置で、カリストクレジットを消費することで強化できる。
クレジットは直接拾うか、クリーチャーのドロップ、そしてアイテムを売却することで入手できるが、すべての装備を最大強化できるほどは入手できないため、強化対象の選択と順番は慎重に選びたい。
防具の概念はないが、ストーリー進行で私服から囚人服へ、やがて中盤でストアイメージにもあるようなアーマーを装着することになる。アーマーを装着するとインベントリが「6枠」から「12枠」へ倍増されるのと、体力の上限が上がるようだ。
難易度
難易度はイージー・ノーマル・ハードに当たる3段階が選択でき、いつでも変更可能。クリーチャーの攻撃力や体力、攻撃頻度などに影響するようだが、イージーでも油断はできない。
終盤ともなると、一部のクリーチャーの攻撃力がかなり上昇する。特にボス戦は顕著で、例えイージーであってもダメージを2回も食らえば死亡するほどだ。
オプションからエイムアシストやオートエイム、オートドッジ(回避)、QTEの簡略化や自動クリアといった戦闘面のアクセシビリティを細かく調整することも可能だが、過信はしないようにしたい。
日本語サポート
本作は日本のコンピュータエンターテインメントレーティング機構(CERO)の審査によって、仮にZ指定であっても規制が避けられず、開発元の求めるゲーム体験にゴア表現は不可欠だとして日本国内でのリリースが中止された経緯がある。
しかし翻訳作業は既に完了していたため、グローバル版には日本語音声・テキスト/UIのデータが収録されたままの状態となっており、入手さえ出来ればそのままプレイが可能だ。
収録されている日本語の内容そのものは品質も良く問題はない。ただし、音声の内容と字幕とで意味は同じながら文章が違ったり、まれに英語ボイスになってしまう箇所はある。
本来ならば修正対象だろうが、日本ではリリースされない以上は今後もこのままとなるだろう。
またシーズンパスに含まれている、2023年に追加予定のストーリーDLCは新規収録が必要となるため、日本語化されない可能性が高いことも覚悟しておいた方がいい。
最適化不足
PC版では最適化不足が指摘されていて、低評価をつけるプレイヤーの意見の大半もそれが占めている。推奨スペックを満たしていても、シーンによってスタッタリング (要するにカクつき) が発生してしまうのだ。
設定で調整すればプレイに支障がない程度に緩和できるものの、根本的には最適化待ちとなる。既にパッチで多少改善も見られているとの報告もあるので、引き続き期待したい。
PS5版についてはパフォーマンスモードを選択していれば、スタッタリングの発生はない。ただフレームレートの落ち込みが見られるシーンはあるので、こちらも根本的には修正待ちだがプレイできないほどではない。モーションブラーやフィルム粒子もOFFにしておけば幾分安定するはずだ。
気になるポイント
ショップと武器強化機能を兼ねた装置 "リフォージ" の設置間隔が長く、序盤はインベントリもたった6枠しかないため、不要なアイテムを売り払いたいと思っても泣く泣くあきらめたというシーンが多々あった。
インベントリの中身も含めてリソース管理をするゲームではあるのだが、アイテムをスタックできない仕様 (弾薬以外の複数の同じアイテムを一つにまとめられない) なので、これでは無駄になってしまうアイテムが多いのでは?という印象だった。
総評
SFサバイバルホラーとして期待される要素をしっかり詰め込んだ作品で、映画『エイリアン』に代表されるような、このジャンル特有の空気感や演出といったものが高い品質で作り上げられている。
かつて同ジャンルの3Dゲームにおける、草分け的なタイトルとなった『Dead Space』の開発にも加わったクリエイター "Glen Schofield" 氏が率いるスタジオの製作ということもあり、同作へのオマージュもそこかしこに感じられ、プレイヤーの期待を裏切らない完成度だ。
最適化の問題はあるものの、既にパッチで多少の改善が見られているとの報告もあり、それも遠からず解消されることに期待したい。
こうなるとレーティングの影響で日本国内でリリースされることがなかったのは残念で、実際フルボイスまで収録されており、日本市場に目を向けてくれていたことがわかるだけに惜しい。業界の仕組みそのものに要因があるため問題は根深い。
本作を日本からプレイするためには一定の手順を踏まなければならないものの、SFサバイバルホラーのファンであれば是非プレイをおすすめしたい。きっと気に入るはずだ。
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