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ゼネコンはパワハラ体質から脱出できたのか?

パワハラによる企業への悪影響

建設業に限らないことですが、最近はハラスメントに対して社会的に非常に敏感になっています。

私自身も前職の大手ゼネコンでは、ドラマに出てくるような形通りのハラスメントを一通り体験しました。

私の世代は、部活動でも監督が選手を殴るような時代でしたので、ゼネコンのパワハラ体質も「まあそんなものかな」という感覚でいました。しかし、管理者になった今、企業としてパワハラが起きない体質の構築を真剣に考える必要があります。

最近では、パワハラを受けることによるパフォーマンスの低下や、パワハラをするリーダーがいるグループの生産性低下など、その悪影響が科学的にも明らかにされています。

そのおかげか、企業として取り組むべき課題であると多くの人が考えるようになったことは、非常に良い傾向だと思います。では、ここ最近の建設業はどうでしょうか。

建設業のパワハラに対する動向

2010年代後半頃から、企業としてもパワハラの相談窓口が設けられたり、パワハラ体質の人が要職から外されたり、私の観測範囲でも少しづつ変化が見えるようになってきました。

最近では、管理者の方がハラスメントに対して敏感になり、部下の指導の難しさに直面している例もよく見聞きします。仕事として必要な指導との線引きの難しさです。

特に建設業においては、現場では安全面に関わることは厳しく注意しなければならないこともありますし、受注の体制によっては工事を間に合わせるために望まずとも労働時間が増えてしまうこともあります。

設計においても、時間をかけた分だけ良くなるというのもひとつの事実で、長時間労働が常態化し、求められるアウトプットが過熱化していくプロジェクトを多く見てきました。

意図的な個人への攻撃や悪意を持った対応は論外ですが、仕事熱心さから生まれる第三者へのある種の圧力は非常に判断が難しい問題です。私自身は、仕事に対する厳しさはハラスメントとは次元の違う話だと考えています。ではなにが問題になるのでしょうか。

パワハラを起こさないためには

日頃から上司と部下が関係性を上手く構築していればハラスメントは起こらない、というのはパワハラを議論する際によく言われます。もっともではありますが、そういった関係性は簡単に構築できるものではありません。

上司と部下など、明らかなヒエラルキーや利害関係が発生している中で、信頼関係を築くのは非常に難しいです。私自身、大手ゼネコンでの13年のキャリアの中で、心から信頼できた上司は数名でした。

信頼関係が構築できればそれは素晴らしいことですが、信頼という漠然としたものに頼っていると、どうしてもすれ違いが生まれてしまいます。

そこで必要なのは、「敬意」「説明」だと私は考えています。単純なコミュニケーションではなく、敬意を持った情報伝達による関係性の構築です。

相手が必要としてる情報を正確に把握し、それに対して正しい情報を伝えることを心掛け、敬意を持って接していれば、信頼関係は後からついてくるものだと考えています。

建設業は特に、熟練者と若手の持つ情報の非対称性が非常に大きく「なんでそんなことも分からないんだ」ということがよくあるのではないでしょうか。それは要するに「当然知ってるはずだ」という偏見や思い込みによるもので、どちらかがそう考えている限りは、関係性の構築はうまくいかないということを前職で学びました。

相手がなにを考えていて、なにを求めているのかを相互に正しく理解し、それに誠意を持って対応できている限りは、ハラスメントが起こる可能性は大きく低下すると考えます。

管理者の立場の難しさ

大声での暴言など分かりやすいハラスメント以外にも、日々の小さな一言が個人のメンタルに多大な影響を与える可能性もあります。それは生産性の低下にもつながる重要な問題です。

特に管理者の立場となり、人の評価や進退に影響を与えられる権力を持った人間は、よほど注意していないとハラスメントは防げないというのが私の考えです。

人間は役職や立場によって偉くなるわけではなく、ただ仕事上の役割が違うだけという認識を持って、敬意を持って人と接することの重要性を忘れずにいたいと思います。

明らかに昔より考えなければならないことが増えている管理職ですが、仕事への厳格さは持ちながら、被管理者の働きやすさを考え、よりよい労働環境をつくっていきたいです。

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