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京都で友人と

先日の日記に書いたように、大阪への出張帰りに京都へ寄って友人に会ってきた。

淀屋橋から京阪特急に乗り七条駅を目指す。大学生時代は京阪沿線に一人暮らししていたので、風景がやたらと懐かしい。友人は「午前中の仕事で疲れたやろうから、七条に着くまで少し寝るとええよ」と言ってくれていたが、車窓から町を眺めていたら学生時代の思い出も一気に蘇ってきて寝るどころではなかった。あんなことや、こんなこと、ふふふ…。

友人とは小中は別だったし高校時代に一度だけ一緒のクラスになったきりで部活も違った。もっと言えば仲の良いグループすら別だったのだけれど、なぜだか一対一としてウマが合ってずっとずっとやり取りを絶やさずにいる。お互いの黒歴史も全部把握している仲と言えばいいかな笑。

友人は京都のお寺に嫁ぎ旦那さんが跡を継いだので、現在は彼女もお寺の奥さんとしての仕事をお義母様から引き継いでいる。京都の由緒あるお寺の坊守さん、並大抵の苦労ではないと思う。そこへ持ってきて友人は自分の親御さんの病気のことや身内との確執やらでここ数年は精神的にも参ってしまうような出来事が次々と続いていた。私の方も、昨年は実家の父が癌を患い手術や抗がん剤治療、そこへ母の認知症も進み何度か実家へ行ったり来たりしていた。また今年は義母が骨折して手術を受け、その後は義母の免許返納などもあってお世話をすることが増えたり、と息も絶え絶えになんとかここまでやってきたという気がする。

京阪特急で七条駅に着いた。地上へ上がるとそこで友人は待っていてくれた。彼女は「〇〇…!」といつものように高校時代そのままのニックネームで私を呼び、手をぎゅうぅっと握りしめてくれた。それだけで、たったそれだけで私は泣いてしまいそうになった。私は「なんだかね、歩きたいんや」と言うのがやっとで、友人は多くを私に聞かず「じゃ鴨川べりへ降りて歩こうか」と言い二人でゆっくりと歩いた。鴨川にはユリカモメがたくさんいて、その中の一羽がまるでシンクロナイズドスイミングのように逆さまになって潜ったり顔を出したりを上手に繰り返していた。

気が済むまで歩いたあと、鴨川べりのカフェに入り紅茶を飲んだ。温かいカップを手のひらで包み込みながら私は、「わたし、わたしな、しんどいんや」と言った。友人は私に「何が?」とか「どうしたん?」とか一切言わずにただうんうんと頷き「私たちの今のこの年齢はいろんなことがてんこもりでしんどいよな」と言った。それだけで十分すぎるほどにお互いを癒し、なぐさめ、エールを送り合えたようなそんな1ターンの会話だった。

会話って不思議なものだ。お互いに多くを語ることで転がり出して思わぬ展開を繰り広げる面白さもあれば、今日のようにたった一言二言のやり取りで十分にいたわり、労いあえるものもある。どちらにしても「関係性」が大切であり、そこに相手への敬意や尊重があることがその会話に命を灯すのだな。

友人と手を振り別れた後、もう少し一人で京都を楽しんで行こうかとも考えた。いや、この温かい気持ちのまま新幹線に乗り車内でゆっくり今日のことを噛み締めよう、そうしよう。見上げると京都タワーが明るく街を照らしていた。

#エッセイ #京都 #鴨川 #女友達 #会話 #京阪電車 #京都タワー

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