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【エッセイ】イケメン

 今年4頭目のとねっこはイケメンだよ。
 姉に言われて馬房をのぞく。
 黒がちな鹿毛のとねっこは、母馬と並んで外を向いて立っていた。
 馬服を脱いだばかりの柔らかそうな毛はまだあまり汚れていない。けっこう派手な模様があるが、すっきりした顔だちで、鼻先からあごのもじゃもじゃした毛が光を浴びて銀色に見えた。
 なるほど、イケメンだ。
 生まれてまだ日が浅いので、あまり自我もなさそうにぼんやりしている。母馬は耳を背負う(怒る)でもなく私を見ていたが、すい、ととねっこの顔を向こうに押しやった。とねっこは気にせずその場を動かない。
 とね!とねっこ!
 声をかけてみてもぼんやり坊主だ。
 触るには少し遠い。手を伸ばして母馬に噛まれるのも嫌だ。
 今日はこのくらいにしといてやろう。
 本当はあごと鼻先をこね回すように触りたかったのだけど、それはまた次のお楽しみだ。

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