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【エッセイ】悲劇

 ガリガリ、ともバリバリ、ともつかない音を立てて、バリカンが止まった。
 あ、やっちまった…!
 と思ったときにはもう、もみあげの四分の一が失われていた。広げたチラシに落ちる短い毛の束。

 いわゆるツーブロックにして以来、ときどき自分でもみあげを刈っている。
 そのバリカンには長さのガイドがついていて、刈る長さを調節できるようになっている。
 今日も今日とて左のもみあげを刈り、さて右も張り切っていこうとばかりにバリカンを押し当てる。

 そうして悲劇は起こった。
 長さ調節のガイドを外したままだった。
 マンガみたいだと思った。

 青あおとした刈りあとも、数日もすれば目立たなくなるだろう。そう、数日。しかし明日は仕事なのだ。
 さりとてすべてのもみあげを刈り落とす勇気もなく、ただじっと明日を待つ。
 鏡をのぞくと、まだらになったもみあげが、寂しそうに見え隠れしている。

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