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今日からはじめるAI文芸実践入門:クリスマスとお正月の間の空白をテーマにした音楽をつくる
はじめに
みなさん、こんにちは。メディア研究開発センターの浦川です。私は普段、自然言語処理(書き言葉から話し言葉まで、日常生活で普通にヒトが使う言葉をコンピュータで扱うこと)に関する研究開発に従事しています。これまでに、自動で記事の見出しを生成する「TSUNA」や、短歌を生成する「短歌AI」などに携わってきました。
さて、本連載では「〈言葉〉による表現を計算機とともにおこなう人へ向けて、今日から実践できる内容を紹介する」というテーマのもと、毎回異なる文章表現や技術を取り上げた記事を執筆しています。今回は「クリスマスとお正月の間の空白をテーマにした音楽をつくる」と題して、AIを応用したJ-POP風音楽の生成について書いていきます。
なお、これまでの「AI文芸実践入門」は以下からお読みいただけます。
なぜ「クリスマスとお正月の間の空白をテーマにした音楽」か
この記事は、うまくいけば12月25日(月)の朝に公開されているはずです。これを読んでいるみなさんは、クリスマスも済ませて、あとは新年を待つだけ……。そんな週の始まりを迎えているかもしれません。
さて、街の華やかな装飾が静かに片付けられ、新年を迎えるまでの短い期間、私たちは年末年始の「空白」の時間に身を置いています。あれだけ鳴っていたワム!やマライアキャリーの音楽もぱたと止み、穏やかな『春の海』が聴こえてくるまで、「なにも鳴らない」日々を過ごすことになるでしょう。
しかし、あえてその静けさの中で鳴る、一年の終わりと始まりの狭間を歌った音楽もありえるのではないでしょうか。現実の商業音楽ではなかなかターゲットにしにくいであろう、この「空白」をテーマにしたポップスを聴いてみたい。
ということで、今回は年末年始の「空白」を歌うポップソングをつくってみたいと思います。
つくってみましょう
歌詞を生成する
歌詞の生成には、ChatGPT(GPT-4)をつかってみます。
今回は「クリスマスをテーマにしたポップス」や「正月の唱歌」について例を挙げさせた上で、その間にある〈空白〉の音楽をつくってほしい、といった流れで歌詞を生成します。
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まずはじめに生成されたのが、上の「冬の扉」です。
新年へと向かう前向きさを感じる歌詞ですが、いかにもJ-POPらしすぎるでしょうか。
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続いて、もう少し「空白」を意識して生成した例が上の「静寂の間」です。先ほどの例に比べて、年末年始の間の何もなさを素直に表現しているように感じます。過去を歌った歌詞となっているのも対照的ですね。
楽曲を生成する
続いて、これまでで得られた歌詞から楽曲を生成しましょう。今回は、Suno AIとよばれる音楽生成サービスを利用してみます。
ちなみに私は、音楽プロデューサーの食品まつり a.k.a foodmanさんのX(旧Twitter)のポストでこのサービスを知りました。「こんなものまで?」と思わずにはいられない、実に多様なジャンルを生成できていることがおわかりいただけるでしょう。
suno aiでこんな曲生成できた。青春パンクみたいな。
— 食品まつりa.k.a foodman (@shokuhin_maturi) December 12, 2023
もうこれまじ音楽ヤバいんじゃないか。。?表現力が半端なさすぎる。 pic.twitter.com/qJWjpKCzIL
70年代とかに人知れず活動していた
— 食品まつりa.k.a foodman (@shokuhin_maturi) December 14, 2023
知る人ぞ知る孤高のシンガーみたいな雰囲気の曲に。普通にいい曲。 pic.twitter.com/hB6Ahkz1mZ
細野さんとか好きそうな作家のオーガニックなポップスみたいなのもいける。
— 食品まつりa.k.a foodman (@shokuhin_maturi) December 16, 2023
もうAIなんでもいけそう。 pic.twitter.com/lRJFnM6440
では、先ほどつくった歌詞で、実際に生成してみた結果です。
まず「冬の扉」です。以下のリンクからお聴きください。
メロディからもアレンジからも、かなり「静けさ」を感じます。優しく丁寧に歌いあげる音声からは、一年の終わりを想うボーカルの表情まで浮かんでくるようです。
続いて、「静寂の間」です。
こちらは、歌詞に登場する「静寂」から想起される雰囲気を裏切るような、バンドサウンドです。しかしながら、サビの「せいじゃく〜」と歌う個所では突然ボーカル以外の音がミュートされたり、細かい演出が歌詞と連動しているようにも聴こえます。
おわりに
最後に、この一年さまざまな記事を読んでくださったみなさんへの感謝を伝える曲を残して、今回を終えたいと思います。
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(メディア研究開発センター・浦川通)