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『AIは短歌をどう詠むか』という本

はじめに

みなさん、こんにちは。メディア研究開発センター(M研)の浦川です。私は普段、自然言語処理(書き言葉から話し言葉まで、日常生活で普通にヒトが使う言葉をコンピュータで扱うこと)に関する研究開発に従事しています。これまでに、自動で記事の見出しを生成する「TSUNA」や、短歌を生成する「短歌AI」などに携わってきました。

さて、本日は6月20日に講談社現代新書として発売される『AIは短歌をどう詠むか』という本についてご紹介します。

こんな本です

本書は、〈短歌AI〉が短歌をつくっていく過程を通して、〈人間が短歌をつくる〉こと、ひいては〈私たちが毎日扱う言葉〉について新たな視点から考えることを目指した本です。

目次は以下の通りです。

  • 序章 「言葉」を計算してつくる

  • 第1章 〈短歌AI〉とは何か

  • 第2章 型を身につける

  • 第3章 「詠む」前に「読む」

  • 第4章 言葉を飛ばす

  • 第5章 うまく付き合う

序章で自然言語処理の基本的な知識について触れた後、〈短歌AI〉について概要を説明し(第1章)、そこから短歌の定型について(第2章)、短歌を「詠む」には短歌を「読む」のが重要であること(第3章)、言葉を歌にするための文脈からの飛躍について(第4章)、〈短歌AI〉の実際の挙動をもとに解説し、また考えていきます。最後には、AIと人が創作という現場でどのように関わっていくのか、その付き合い方について整理しています(第5章)。

本書で取り上げる内容はいずれも朝日新聞社での研究開発やコンテンツ制作を起点とし、生成AIについて取り上げられることの多い昨今において、なるべく地に足のついた議論ができるよう心がけました。

M研ではこれまで、〈短歌AI〉に関連するいくつかの研究発表と、文化部らとともに歌人の方をお迎えしたイベントを開催してきましたが、これらの内容をまとめながら、改めて短歌の創作における人間とAIの関係を考えた本となっています。

関連する研究発表

モーラを考慮した Fine-tuning による口語短歌生成
短歌における言語モデルの実応用 –歌人の視点を通した生成と作歌支援の実践から–
短歌における自然言語生成の受容と有用性の検討

関連記事/イベントなど

おわりに

本記事では、6月20日に発売の『AIは短歌をどう詠むか』について紹介いたしました。

「短歌を生成するAI」のデモを制作したのが2020年の冬頃。その後、いろいろなタイミングがうまく重なって、たくさんの方の協力を得て、さまざまな形になった〈短歌AI〉が見てきた風景があります。それを、みなさんと一緒に眺められるような本になりました。

またこれまでの間に、開発者・実作者としてひとりで考えてはいたけれど、みなさんへ伝える機会のなかった内容を改めて文章にすることもできたかと思っています。

これまで〈短歌AI〉に触れていただいた方々、そしてこれから本を手に取られる全ての方に感謝いたします。

 現代新書の正方形

講談社現代新書おなじみの「表紙の正方形」ですが、この「色」の希望を著者が出せるというのに驚きました。私は、かつて撮影した天香久山(万葉集に収められている「春すぎて夏来るらし白たへの衣干したり天の香具山」の山)の画像から抽出した、深い青を提出しました。なんで!というのは、本文をご覧になれば、きっとお分かりいただけるでしょう。

天香久山(2022年9月撮影)

(メディア研究開発センター・浦川通)