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「10年間、お忙しいあなたの代わりに読んできました」という斎藤美奈子の最新刊『あなたの代わりに読みました』ってどんな本? 「はじめに」特別公開!

「10年間、お忙しいあなたの代わりに読んできました」
 
文芸評論家の斎藤美奈子さんによる『あなたの代わりに読みました 政治から文学まで、意識高めの150冊』が2024年5月20日(月)に刊行されました。本書は、「週刊朝日」の連載「今週の名言奇言」10年分490本から154本を厳選し、再編集・再構成したものです。連載の10年間は、東日本大震災からコロナ禍までの日本のひと時代とも重なります。いまの日本に至るまでの進歩、退歩、あし踏みが見えてくる1冊です。
本書の魅力が伝わる、「はじめに」を特別に公開いたします。<読書は昨日を省み、明日を生きるための糧である>!

斎藤美奈子『あなたの代わりに読みました 政治から文学まで、意識高めの150冊』(朝日新聞出版)
斎藤美奈子『あなたの代わりに読みました 政治から文学まで、意識高めの150冊』(朝日新聞出版)

ネット書店の検索で「読書」と入力すると、ざっと1万件がヒットする。読書の効用を説いた本、効果的な読書術をレクチャーした本、古今東西の必読書を列挙した本。
 驚きました。世の中には読書先生がこんなにいたのか!
 彼らは唱える。書物は人類の知恵の宝庫、教養が身につくのは読書だけ、よりよい人生は読書から。その通り! しかし半面それは「教えたがり」が世の中にいかに多いかを示してもいる。同様に「教えたがり」が群雄割拠しているのは文章術の世界で、そのため私はかつて文章先生本を茶化した不埒な本(『文章読本さん江』)まで書いてしまった。

 さて、本書はこうした読書先生本とはタイプの異なる本である。
 まず、本書はいつか読むかもしれない(がたぶん読まない)教養書ではなく「いま起きていること」を知るための、同時代の本を取り上げている。
 そして、私はもとより読書先生ではない。気分はむしろ読者の侍従だ。お忙しいみなさまの代わりに、とりあえず話題の本、気になる本を読んでみました。そんな気持ちで30年、書評を書いてきた。気分はほとんど読書代行業。
 これが『あなたの代わりに読みました』という書名の由来だ。「だからあなたは読まなくてもいい」とはいってません。書評は映画でいえば予告編、2時間分の内容のエッセンスを1分でまとめたダイジェスト版みたいなものだ。予告編だけでもある程度内容がわかるのがよい書評だけれど、予告編はあくまで予告編である。

 本書のベースになったのは「週刊朝日」の読書欄(「週刊図書館」)の連載「今週の名言奇言」(2013年2月〜23年5月)である。そこで取り上げた10年分、全490冊の中から154冊を選び、本のテーマ別に分けて収録した。Ⅰ「現代社会を深掘りすれば」では政治や社会に関連した51冊、Ⅱ「文芸書から社会が見える」では芥川賞・直木賞受賞作を含む話題の文学作品53冊、Ⅲ「文化と暮らしと芸能と」では知的好奇心をくすぐる本、暮らしや人生の指針になりそうな本50冊を紹介した。

 各ページの見出しは、各書のキーワード(名言奇言)である。書誌情報は2024年4月現在の最新のものに改め、後日談がある場合は書誌情報の下に記した。
 読書は昨日を省み、明日を生きるための糧である。あなたの関心にフィットした本が1冊でも2冊でも見つかれば、読書代行業としてこれほど嬉しいことはない。

■斎藤美奈子・著
『あなたの代わりに読みました 政治から文学まで、意識高めの150冊』
■2024年5月20日(月)発売
■1980円(本体1800円+税10%)
■ISBN 978-4-02-251971-9
■内容紹介
10年間、あなたの代わりに読んできました。話題書150冊の「肝の一文」を並べてみたら、いまの日本に至るまで、10年間の進歩、退歩、あし踏みが見えてくる。「週刊朝日」連載の「今週の名言奇言」を再編集・再構成した一冊。