見出し画像

発売49年目!「プロ野球チップス」の知られざる歴史

 正統派ノンフィクション『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』から、プロ野球本の奇書『プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた!』まで、球界の表と裏を書き続ける長谷川晶一。2021年9月に発売された著書『プロ野球ヒストリー大事典』は、日本プロ野球の約90年にも及ぶ歴史(正史・秘史・俗史)を佐野文二郎の膨大なイラストと写真で明解にまとめた集大成(?)的作品だ。そのPART2「キーワード別 日本プロ野球史」から「プロ野球チップス史」を紹介する。
(文・長谷川晶一/写真:カルビー社で担当の三井剛さんと著者)

画像5

■発売49年目のロングセラー

「今度は誰のカードが出るのかな?」と期待と不安とともに袋を開封する喜びと興奮。友達と交換したり、コレクションしたり、昭和、平成、令和と、時代が変わっても、その快感は不変だ。子どもも大人も魅了する僕らのプロ野球チップスカード。カード作りにかかわる三井剛さんに話を聞くためにカルビー株式会社を訪ねてみた。

「元々は1971(昭和46)年発売の『仮面ライダースナック』のオマケとしてカードをつけたことがキッカケでした。それを受けて、73年にカードつきの『プロ野球スナック(当時)』を発売しました」

画像1

 73年と言えば巨人V9達成の年であり、長嶋茂雄の現役最晩年だ。当然、記念すべき「カード第1号」は笑顔の長嶋さん。

「当時は巨人人気が最高潮でしたから、カードも巨人中心でした。実際、巨人が強いと売り上げもいいんです。これまでの販売記録を見ても、76年、87年、そして00(平成12)年の売り上げがすごくいいんです」

 三井さんが挙げた年は、いずれも巨人が優勝しており、同商品は現在にいたるまで一貫してカルビーの看板商品なのだ。

画像2

「現在は年3回に分けて、まずは開幕に合わせて3月に第1弾、第2弾は6月、第3弾は9月に発売して11月に終売。そして、翌年の3月にまた新しい年度の商品を出します。第1弾のカード作りは前年の12月から始まります。現在は12球団均等に作っています」

 21(令和3)年の第1弾を例に挙げると、通常の「レギュラーカード」や印象的な場面をモチーフにした「エキサイティングシーンカード」、前年の引退選手をカード化した「レジェンド引退選手カード」、主要タイトルを獲得した選手による「タイトルホルダーカード」、そして、「チェックリストカード」で約120枚がラインナップされている。

「以前は新聞社さんが撮影したものをお借りしていたんですが、現在は各球団からお借りすることが多いです。1月には写真のセレクトを終え、2月には入稿をして、3月の開幕に合わせて発売しています」

画像3

■累計約2万種類、約18億枚発行

 ところで、73年の発売以来、一体どれだけのカードが作られたのだろう?

「おおよその累計になりますが、21年度までに約2万種類、約18億枚になりますね」

単純計算で日本国民全員が一人10枚以上持っていることになる。もはや「国民食」と言っても差し支えないのではないか!

「コンビニやスーパーでの購入データを見ると、購入は大人が多いんです。ただ、ラッキーカードの応募者の半分以上は15歳以下。買うのは親かもしれないけど、実際はお子さんが楽しんでいるんですね」

画像4

 そして、三井さんはこうしめくくる。

「お子さんが生まれて初めて自分のお小遣いで買うカルビー商品が『プロ野球チップス』だといいなと思っています。そこでうちのポテトチップスを食べることで、大人になっても“あの味を食べたい”と言ってもらえるようにしたい。それが私にとってのやりがいですね」

実にいい言葉だ。

長谷川晶一
1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターに。05年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。著書に『プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた!』『いつも、気づけば神宮に東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(以上、集英社)、『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(インプレス)、『虹色球団 日拓ホームフライヤーズの10カ月』(柏書房)、『プロ野球語辞典 令和の怪物現る! 編』(誠文堂新光社)、『プロ野球バカ本』(小社刊)ほか多数。
Twitter @HasegawSh


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!