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「後輩を叱れない」川田裕美が編み出したストレスのないコミュニケーション法

 後輩に注意をしたい。でも言いづらい。フリーアナウンサーの川田裕美さんも局アナ時代、最初は言いたいことが言えずにストレスをためていたそうです。考えに考えた末、編み出したのが“叱る”のではなく“聞いてみる”方法。
 自分に無理をしない形で言いたいことはちゃんと伝える、そして相手との関係性も深まる。そんなコミュニケーションのコツを、川田さん初のビジネス書『ゆるめる準備――場にいい流れをつくる45のヒント』から、本文の一部を抜粋・改編して紹介します。(川田裕美さん写真撮影/朝日新聞出版 写真映像部・加藤夏子)

川田裕美著『ゆるめる準備』(朝日新聞出版)

■悩んだ末に見つけた“注意しなくていい”方法

 会社員時代、後輩への接し方で悩んだことがありました。

 後輩が準備不足でミスをしたとき。あきらかに下調べしていないなと感じたとき。ほんとうに、その後輩のためを思うのであれば、きちんと話をしたほうがいい場面でも、注意したり叱れなかったのです。自分が悪者になるのが嫌だったのか、気まずい雰囲気が流れるのが嫌だったのか。いまとなっては、その理由は思い出せないのですが……。

 一緒に番組を担当していた後輩に対しても言いたいことが言えなくて、悶々としていました。「ここはなおしてほしい」と思っても、見て見ぬふりで逃げる。後輩には伝えずに私が代わりにやってしまうことも増え、結果としては良くなかったと、いまならわかります。

 このままでは、どんどん悪い方向に進んでいく気がしたので、伝え方を工夫できないかと考えるようになりました。

 あれこれ思案しているうちに、無理して注意しようとしなくても、どうしてそうなってしまったのか、聞いてみることなら私にもできそうだと思いつきました。

 それからは、共演していない番組であっても、気になったところがあれば、「ちょっとVTRを一緒に見てみない?」と誘うようにしました。

「私は、この言い方が気になったのだけど、この言葉を選んだのは、何か理由があったの?」と聞いてみます。このやり方なら、相手の答えにあわせて、「私はこういうことに気をつけているよ」とアドバイスをすることもできました。

 伝え方を少し変えるだけで、「こんなに楽になるんだ!」というのは発見でした。それまでの私は「先輩としてちゃんと叱らなきゃ」と思い込んでいたのでしょう。相手の言動が気になったり、戸惑いを感じたりしたときには、「質問をする」手法を取りいれるようにしたことで、後輩とのコミュニケーションが増え、徐々に、いい関係を築けるようになりました。

川田裕美さん(撮影/加藤夏子・写真映像部)

■自分に合った伝え方を探すコツ

 会議などで意見が対立してしまったときにも、多くの場合、ストレートに反対意見を伝えないほうが、うまくいく気がします。「こっちのほうがいいと思います」より、「そこにこういった視点を加えてみませんか?」といった柔らかい表現を使うことを意識したり、第三者にも意見を求めたり。

 もちろん、現場の意見として、筋を通さなければならない場面もありますから、覚悟を決めてビシッと伝えるときもありますが、そのような場合も、あとで直接「さっきは強く言ってしまって、すみません。◯◯さんに抗議するつもりはなく、こういう背景があったんです」とフォローすると、より真意が伝わると思います。

 人によってコミュニケーションの得意・不得意はあります。

 どうすればいいかわからないときは、ひとまず、先輩から教わった方法を真似たり、本に書いてあることを試してみるのもいいでしょう。「これは自分には合わないな」と思えば、何が合わないのかを考え、自分なりのやり方を模索していけばいいのです。

 自分らしくできる、ストレスの少ないコミュニケーションのとり方がきっとあるはずです。

(構成/猪俣奈央子)


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