【試し読み】「ママ友との付き合い方」漫画家・コラムニストのカレー沢薫さん『女って何だ? コミュ障の私が考えてみた』<第4回>
▼第3回「『ヤンキー』から学んだこと」はこちら
ママ友との付き合い方
〈コミュ障が自分だけの問題ではなくなる〉
やっと学生時代の地獄が終わったと思ったら、
さらにハイレベルな地獄が待ち受けている
今回は「ママ友とどう接したらいいか」というテーマだ。
どうしたらいいか、と言われても、まず手前がママじゃないという問題がある。
もっと言うなら、このテーマを出してきた担当もママじゃない可能性がある。
ママじゃない2人が、「ママ友って面倒よねー」と、何かわかった顔で語れば語るほど、モノホンのママたちは苛立ちを募らせるのではないだろうか。
もしそれがこのテーマの裏の目的だとしたら、私のイメージをダウンさせ、さらに毎日、家事育児、果ては仕事などに疲れ果てているママたちに、さらなる苛立ちをお見舞いするという、久しぶりに担当の女に対する特に理由のない底知れぬ憎悪を見た次第である。
私には子どもがいない。よほど考えが変わらない限りおそらく作ることもないだろう。
既婚で子なしだと周りがうるさいというが、幸い誰も私に興味がないため、他人はもちろん、実の母親でさえ「2回で言うのをやめた」次第である。
何故作らないかと言うと、欲しいと思ったことがないからだ。そう言うと、女として何か欠陥があるように見られた、という経験がある人も多いようだが、幸い、本当に誰も私に興味がないため、「子ども欲しいと思ったことないんですよ」というセリフを言うシーンにすら到達したことがないので、そういうハラスメントにも遭遇したことがない。
それに子育ては大変そうだし、事実大変だろう。欲しくないのに作って、大変だと嘆くのは間違っているではないか。
そう言うと、「出来る前はそう思っても、いざ出来たら変わる」と言われそうだ。もちろん私はそんな会話をするところまでいけていないので、これは私の妄想である。変わらない可能性もあるかもしれないのに、変わる方にワンチャンかけて、子どもという重大なものを作るのもおかしいではないか。
しかしこの、「子どもが出来たら変わる」も間違いではないと思う。
今は遠方に住む小学生時代からの友人がいるのだが、彼女も私ほどではないが、人見知りで友人を作るのは苦手なタイプだった。
しかし、2児の母になった彼女と久しぶりに会うと、気遣いレベルが非常に上がっており、会話も沈黙にならぬように、絶えず、そして当たり障りのないことを言ってくれるのである。
「もう俺と同じステージにいない」
そう確信した。しかし、子どもがひり出た瞬間に彼女が生まれ変わったわけではないだろう。
それこそ、子どものためにママ友などと付き合いながら、そういうスキルを身につけたのだろう。おそらくそこまでいくのに相当な苦労があったはずだ。
そう、ママになると、コミュ障が自分だけの問題ではなくなってしまう。
自分だけなら、休み時間ずっと虚空を見つめていたり、消しゴムのカスを集めてキング消しゴムのカスを作り出していても、ただの変わった奴で済むのだが、ママになると「◯◯ちゃんママは変」という評価に変わってしまうのだ。つまり被害が自分の子どもにいってしまう。
また子ども同士は仲が良いのに、そのママ同士はお互いのことを陰で「奇岩」「穢れ饅頭」と呼んでいる、という状況は子どもの教育にもよろしくないだろう。
つまり親になるということは、子どものために、普通の人と思われるように振る舞い、ママ友たちとも、当たり障りなく付き合わなければならないというわけである。
果たして、子どもが出来たというだけで、そんなリボーンができるのだろうか。おそらく、出来ずに悩んでいる人も数多くいる気がする。
では、そんなママ友トラブルとはどういうものなのか、何度も言うが私はママではないので、いつもの頼みの綱、グーグル先生に、「ママ友 トラブル」と尋ねてみた。どうせならもっと楽しい単語を検索したい。
結果、どうやらこのママ友トラブルは、学生時代のグループ内トラブルとそう変わらないとわかった。
しかしママ界では、マウンティングをするにも、自分のことだけではなく、旦那の年収や、子どもの成績だったりと戦場が拡大されており、自分は大人しくしていようとしても、子どもの方が目立つ存在のため、子どもがきっかけで目の敵にされるという現象もあるようだ。
そして、「あいつハブにしようぜ」とか、「あのママとは仲良くしない方がいい」という学生レベルのことも平気で行われているそうだ。また今はSNSもあるため、そのやり方は巧妙化していると言う。
やっと学生時代の地獄が終わったと思ったら、さらにハイレベルな地獄が待ち受けている上、子どもを巻き込む恐れがあるという、改造マリオみたいなステージである。
しかも、ママ友という友達だったはずの存在が急に襲い掛かってくるのだから、キノコを取ったら即死した、みたいな現象である。
では、一体どうしたらいいかというと、「友達がいない」という悩みや弊害は、学生時代が終わるとかなり軽減されるという話をしたと思うが、それと同じことがママ友にも言える。
子どもが小さい時はママ友の繫がりというのは避けて通れないが、子どもが中高生になるにつれ、その必要性は少なくなり、大学ともなるとほぼ繫がりがなくなると言う。
つまり、エンドレスレインではないのだ。
学生時代、ぼっちを避けるためだけに、同じような境遇のクラスメートとグループを作り卒業と共に解散、という現象は今も昔も全国で起こっている。ママ友もそれと変わらないらしい。
何事も「その場しのぎ」と思えば大分楽になるものである。