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SNSに慣れすぎて文章はもう3行しか書けない!という人でもスラスラ長文が書けるようになるコツ

 SNSに慣れすぎたせいなのか、「3行くらいしか文章が書けない」という人がいる。気の利いた文章を書く以前に、人に伝えるための文章をどう書いていけばいいのかが、わからないというのだ。
 朝日新聞元校閲センター長で、現在、未來交創株式会社代表の前田安正さんは、3行しか書けなくても、それを5行、10行にする方法があるという。前田さんの著書『3行しか書けない人のための文章教室』から、とっておきの方法を紹介する。

「文章を書くときには5W1Hを使えばいいんだよ」。そんなアドバイスをしてくれる先輩がいるかもしれない。しかし「5W1H」って何だろう? 「いつ、どこで、誰が、何を、どうした」だから、

 いつ(WHEN)
 どこで(WHERE)
 誰が(WHO)
 何を(WHAT)
 どうした……???

 あれ、どうしたはDO(DID)だな。これじゃ、4W1Dだ。「H=HOW」だから「どのように」か。そうすると、残る「W」は何だろう。

 5W1Hという言葉は知っていても、それが実際にどういう機能を持っているかを認識していないことも多いのではないでしょうか。残る「W」は「WHY=なぜ、どうして」です。そして、文章を書こうというときに、この「WHY」がカギになることを覚えておくと、案外すらすら進みます。少なくとも、3行で立ち往生することはなくなるはずです。

 たとえば、

「きのう、デパ地下で(私は)晩ご飯を買って帰った」

 という文を5W1Hに当てはめてみる。

 きのう=いつ(WHEN)
 デパ地下で=どこで(WHERE)
 (私は)=誰が・は(WHO)
 晩ご飯を=何を(WHAT)
 買って帰った=どうした(DO/DID)

 とこんな構図になります。(私は)の部分は敢えて文の中に置いているだけで、この場合は省略しても主体が誰であるのかがわかるため、丸括弧に入れておきました。

 この例文をSNSふうに書いてみるとこうなる。

「きのうデパ地下で晩ご飯買ったよ~! おいしそうでしょ!」

 これに写真をつければ、どんな晩ご飯かが一目瞭然、これ以上の説明はいりません。この例文に5W1Hの「WHY」の要素を書き加えていくと、次のように変化していきます。

 まず「なぜ、デパ地下に寄ったのか」。これを書き加えてみよう。

「きのう、<残業になったので、夜8時まで開いている>デパ地下で晩ご飯を買って帰った」

「残業になったから」という理由が加わり、さらに、「デパ地下が夜8時まで開いている」との情報も追加されました。さらに「なぜ残業になったのか」も書き加えていけそうです。

「昨日、<同僚がインフルエンザで会社を休んだので、>残業することになった。それで夜8時まで開いているデパ地下で晩ご飯を買って帰った」

 さらに「同僚がインフルエンザで休んだために、なぜ残業しなければならなかったのか」。なにか特別な理由があったのだろうか。そこを書いてみよう。

「きのう、同僚がインフルエンザで会社を休んだ。<『納期までに仕事が終わらないので残業してほしい』と上司に言われた。>それで夜8時まで開いているデパ地下で晩ご飯を買って帰った」

 なるほど。「納期」があったことがわかりました。ここまでで、だいぶ状況がつかめてきたのではないでしょうか。さらに「どのくらいの時間、残業したのか」というHOWの要素で、さらに詳しい状況が書き込めそうです。

「きのう、同僚がインフルエンザで会社を休んだ。『納期までに仕事が終わらないので残業してほしい』と上司に言われ、<2時間ほど残業した。>それで夜8時まで開いているデパ地下で晩ご飯を買って帰った」

「2時間ほど残業した」ことがわかったので、もう少し深く見ていくこともできる。「晩ご飯を買ったデパートはどこにあるのか」「なぜ、外食しないで晩ご飯を買って家に帰ったのか」「晩ご飯に何を買ったのか」。このように「WHY」に導かれる疑問を次々に紡いでいけば、文章に厚みがついてきます。そうして、全体の文章を整えていけばいいのです。では、ここまでを一気にまとめてみると……。

「きのう、同僚がインフルエンザで会社を休んだ。『納期までに仕事が終わらないので残業してほしい』と上司に言われ、2時間ほど残業した。それで夜8時まで開いている<新宿のデパートにある食料品売り場>で晩ご飯を買って帰った。<一人で外食をするのも味気ないし、その日は見たいテレビドラマがあったのだ。残業するとは思わなかったので、録画予約をしていなかった。大好物の特選シューマイ弁当と5種類の野菜サラダが、閉店間際だったので100円引き。なんだか得した気分だ>」

 こんな具合に5W1Hの中でも、「WHY」を中心に要素を加えていくと、話は膨らんでいく。「文章が書けない」と悩む多くの場合は、読む人が「なぜだろう」と思う部分をすっ飛ばしているからだ。そこのコツさえわかれば、誰が読んでも理解できる文章を書くことができる。

「3行しか書けない」のなら、「なぜ」「どうして」という読み手の疑問を先取りする形で書いていけばいい。そうすれば内容が具体的に膨らみ、自然に「3行」が10行、20行、30行、50行へと増えていくに違いない。

(写真:Gettyimages)