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秘蔵!私の蓮舫ヒストリー【ミッツ・マングローブ/熱視線】

 女装家・タレントのミッツ・マングローブさんが時代を駆け抜けた「アイドル」たちについてつづった書籍『熱視線』(2019年8月刊)より、珠玉のコラムを選りすぐりで紹介。今回は蓮舫さんについてお届けします。

ミッツ・マングローブ『熱視線』
ミッツ・マングローブ『熱視線』

 野党第1党の党首になられた蓮舫さん(※編集部注:2016年、民進党時代)。テレビ番組で、「必ずしもすべての女性が、働きたいとか、社長になりたいわけではないと思う」的なことを仰っていました。「(男女平等を望むなら)男性的な向上心を持とう!」などと、本末転倒な煽り方をしないところは、さすがの冷静さです。その一方で、蓮舫さん自身の「だけど私は総理になりたい」という向上心は、手に取るように剥き出しになっていてシビれました。総理になって欲しいかどうかはさておき、やはり蓮舫はこうでなくっちゃ!

 蓮舫さんは、かのアグネス・ラムさんや烏丸せつこさんが輩出した才色美女の登竜門クラリオンガール出身(88年)です。蓮舫さんがテレビで活躍し始めた90年代初頭、同じくクラガ出身の『かとうれいこ』が男子の間で大ブレークし、「実は、あの蓮舫も……」と話題になったのを覚えています。そう考えると私は、蓮舫ヒストリーをかなり具に魅せられて(同じ台湾繋がりのジュディ・オング先生に倣って)きた世代かもしれません。当時、ビールのCMの中で、「綺麗な上に頭のキレる女性」として男たちと激論を交わす蓮舫さんが、やたら世の女性たちの反感を買っていた記憶があります。「蓮舫、女のくせに出しゃばるな!」と。

イラスト:ミッツ・マングローブ

 猫撫で声で男に媚びる女も嫌われますが、同時に「賢く綺麗な女」も、結局は女の敵になってしまうという歯痒い現実を、私は蓮舫を通して学んだような気がします。開拓者や先人とは、まず身内から敵視されてしまうのが世の常ですが、蓮舫さんの場合、端から「そんなこと重々承知です」というスタンスなのが凄い。決して狼狽えず、激昂せず、冷静沈着で物分かりの良いヒステリックな女。また、女性のショートカットは、男社会に対する戦闘態勢の表れとする捉え方がありますが、蓮舫さんに限っては「ショートカットが似合うのは美人の証拠(90年代に流行ったフレーズ)なんです。私、クラリオンの時代から一貫してこの短さを保っています。以上です」と答弁でもするような、一枚上を行く意気込みすら感じます。実は年々その短さに拍車がかかっているのを、皆さんお気づきでしょうか? 総理の座を目論むと同時に、粛々と「美人の限界」にも挑み続けているのです。教育費の無償化の前に、蓮舫のデミ・ムーア化。選挙で負けたらスキンヘッドも辞さないと言ったとか言わないとか。

 ワイドショーの司会をしていた当時、ジェームス三木さんの前妻をスタジオに招き、容赦なく追い詰め、「私、もう帰ります」と相手に言わしめた蓮舫。結婚前の本名『斉藤蓮舫』が、そこそこ笑いの取れるネタだったこと。みのもんたさんと司会をしていた『ヒットパレード’90s』で、Winkの相田翔子のことを「お翔子さん」と呼んだこと。「今の彼氏は謝国権か?」(by高田文夫氏)など、走馬灯の如く蘇る蓮舫メモリーズの中でも、私が最も好きだったのが、「芸能界でいちばん仲が良いのは工藤静香」というエピソードです。20年以上前の発言だったと記憶していますが、今改めて噛み締めると、このなんとも言えぬ味わいが堪りません。「2番じゃダメなんですか?」と「もともと特別なオンリーワン」の友情は、その後も続いてらっしゃるのか。ていうか、御両人ともナンバーワンじゃなきゃ気が済まない女ですよね?

(初出:週刊朝日2016年10月7日号)

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