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自分も動物なのだと思い知らされる【毎日note】#123

今日からしばらく雨模様のようなので、とても穏やかだった昨日の夜、3回目のエギングに出かけた。控えめな夜景が移り込む大きな名護湾を見渡せる広々としたポイントで、足場もよく、とても気に入っている。晴れていて風もなかったのでたくさんのエギンガーが来ているだろうと思ったら、誰もいなくて拍子抜けした。

べた凪の海。静かに瞬く夜景。もうそこにいるだけで気持ちいいような場所で、初心者の下手くそなしゃくりを誰にも見られずのびのびと練習できる。100均・ドンキで買ったエギと、土曜日に釣りの先輩に頂いたエギを投げ続ける。全くアタリはなく、あと3投で帰ろうと思った矢先のこと。

2回しゃくってフォールさせ、またしゃくろうとするとしゃくれない。いつものごとく「根掛かりかー!」と青くなったのもつかの間。手元に、生物の動きが、明確に伝わってきた。

グンっ、グンっ、グンっ。エギにかかっている生物が抵抗し、海底に向かって後退しようとしているのが、見えないけれどはっきりとわかった。グンっと生き物が水を押すたび、ゆるくしていたドラグがジジッ、ジジッと鳴って糸が出る。大きなイカが水を噴射して後退する様子が私の頭に鮮やかに浮かんだ。日曜日の、気が付いたら釣れていた小さなイカとは、大違いの感触だった。

イカは食べておいしい釣りものだけど、ひきを楽しんだり興奮するような釣りではないと思っていた。魚のように走ったりしないので、難しい駆け引きなどなく、陸にあげるのは容易だと思っていた。

ドラグを締めれば、足元まで引いてくることは簡単だった。しかし陸にあげようとした瞬間…イカが水面から出た途端ものすごい勢いで水を噴射した。私は思わず悲鳴を上げていた。そしておそらくイカの足が、コンクリートに張り付いて、その力でイカからエギが外れてしまった。それはもう一瞬の出来事…私は初めての経験で完全にパニックで、大きかったはずのその姿を拝むことも出来ず、気が付いたら相変わらず静かな海面とコンクリートの境目を見つめていた。

イカが大噴射した水のあと。これがスミだったら私は真っ黒になってただろう汗

私の足元には噴射された水に濡れた跡が残っていて、今のは夢じゃないとかろうじてわかる。でも私の手を震わせたイカはいない。

大きかったであろう魚をバラしたことは何度かある。でもそのときのひきとは明らかに違う、魚とは全く違う形をした生き物の呼吸が、あまりにも強烈で、忘れられなかった。

始めたばかりの私にそうそう釣れるものじゃないだろうと思っていたので、完全に油断していた。私の投げたエギにかかったイカも必死だった。準備も覚悟も整っていない私にイカは必死に抵抗し、生死をわける最後の瞬間、全力でその身をエギから引きはがし、元いた世界へ戻っていった。命がけの生命の、パワーと頭脳の完全勝利だった。

自分の至らなさと悔しさを噛み締めつつも、興奮はいつまでも冷めなかった。あの透明でなよなよとして頼りなく見えるイカの意外な力強さ…大きな獲物を逃したけれど、一方で、とても意義のある感触と経験を手にしていた。

1本のラインで繋がったイカと私はそのとき、2匹の動物どうし、対等に向かい合い、命のやり取りをしていたのだ…と気が付いた。いや私にそこまでの必死さや真剣みなどなかった。ただそのやり取りが終わってみれば、そうだったのだと気が付いた。いや…そうでなければいけないのだと、学んだ。人間にとってはある種ゲームであり、「今日のお酒のあてが手に入るといいなー」みたいな軽い気持ちかもしれないけど、狙われている方は命がけ。それをいつも心の片隅において、釣りをしたいと思った。そして掛けたからには、今回にようには負けたくない。


夜の釣りには苦手意識があったけれど、エギング…ドハマリしそうです。それにしても、私の未熟なしゃくりでも大物が食らいついてくれるエギって、すごくないかい??(笑)すばらしいメーカー陣に感謝。高いけど泣



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