旅の休息はお城の街で~弘前編 #くるま旅日記
パートナーのりゅうちゃんの出身地である青森県弘前市へやってきた。弘前へ着くなり、りゅうちゃんは地元の仲間たちがやっているダンスフェスを手伝い、そして八月一日から開催される「弘前ねぷたまつり」にも参加するのだそうだ。そういうことだから、旅はいったん小休止。長い車上生活に少し疲れていた私は、駅前のホステルに泊まり、二ヵ月ぶりのベッドとキッチンがあるありがたい環境で、青森探検を楽しんでいる。
ここがりゅうちゃんの地元でなければ、訪れることもなかったかもしれない弘前は、私にとってかなりぐっとくる街だった。どこからでも見上げることのできる青森県の最高峰・岩木山が、まず初めに私の心をつかんだ。のびのびと山裾を伸ばした岩木山は津軽富士とも呼ばれ、不思議と拝みたくなるような崇高さを備えている。弘前の人たちが岩木山を大切にしていることを、何の疑いもなく信じられる、そんな山なのだ。そしてその北東部の津軽平野に広がる一面のりんご畑は、今はほんのり赤みを帯びた小さな実が付いており、のどかで微笑ましい気持ちにさせてくれる。これが、弘前の人が故郷を離れたときに思い出す風景なのだと、誰に聞かずともわかった。
それに、弘前城の周りに今も残る、「鍛治町」「桶屋町」「紙漉町」など当時の城下町の風景を想起させる地名も面白い。車中泊旅の中では熊本城や小倉城、姫路城などを眺めてきたけれど、お城の近くに長期滞在するのは初めてのことだ。津軽藩政下に栄えたこの街の様子を思い浮かべながら、市場で買い物をしてホステルで自炊をしたり、図書館で本を読んだりといった日常生活を送るのは、初めてで新鮮なことだった。その道中には、旧市立図書館や旧外人教師館などの洋館があり、古く趣のあるものが大切にされている様子にはホッとする。
思えば、旭川でそのように、地域の過去や、古いが故の価値などに考えを巡らせながら暮らしたことはなかった。この弘前編が終われば、次は念願の北海道車中泊旅だ。今まで持てなかった視点で故郷を眺めつつ、キャンプもたくさんして夏の北海道の自然を楽しみたい。
*あさひかわ新聞 くるま旅日記「果報をたずねて」③ (2023/07/18掲載)
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