"当たり前"と思っていたこと

1990年代に大学生活を送り、社会人となった。ブランクがありながらも、映画に関する仕事をしている。2020年、いま担当している映画をきっかけに、色々なことに思いを馳せるようになった。

あの当時、"当たり前"と思っていたことが、実はそうでもなかったのかもしれないということ。

比較的男性が多い大学に進学した。男子学生たちは「女子大(とりわけお嬢様女子大と言われるような学校)」の女の子たちとつきあうことがステータスだったようで(古)、同じ大学の女性は人とも扱われていないような感じだった。同級生の男子と話をしていたとき、とある男子学生が来て、言った。「同じ大学の女と話してたら口が腐るぞ。俺たちは、女子大の女の子と付き合うぐらいの身分なのだから」というようなことを言って去っていった。そのときの私は、”そうだよね、私なんて女じゃないし"と納得してしまった。いま、そのときの自分に喝を入れたい。どうして言い返さなかったんだろう。

先日、同年代で同業の友人と話をしていたとき、「昔は、パワハラもセクハラも普通だったよね」という話になった(よくなる。でもそんな思い出話にひたるのはもうやめたい)。セクハラを受けても、それをいかにうまく受け流して切り返すか、が、「こいつ面白いな」と思われるための腕の見せどころだった。そんな風にその社会の中で立ち回ろうとしていた。

私たちが生きた20〜30代は、仕事をしている人にとっては「妊娠したら終わり」のような時代だった。大げさかもしれないけれど、そういう切迫感があった。いま改めて、やっぱりそれはおかしいと思う。でも"当たり前"と思ってしまっていた。個々人ではどうにもならないくらいに、世間ごとそんな風潮だった。何がきっかけでこんな風に時代は変わってきたのだろう。なんだっけ?

きっと色々な苦労があるだろうと思うけれど、私たちの一回り以下の女性たちは、結婚、出産をし、しなやかに生きていて素敵だなあと思う。でもきっと、いつの時代だって、苦労はつきものだろう。隣の芝生はつい青く見えてしまう。