悪意のない悪
ナンパ、というか軽い声掛けレベルのものに1回だけ遭ったことがある。
対して妊婦に間違えられたのは今のところ2回。
あまりに屈辱的で、忘れられない。
妊婦と間違えられて電車で席を譲られるというようなライトな感じではなかった。
1人は観光地のおばさん。
施設を見学していたらガイドのおばさんが説明をしてくれて、そして最後に「お腹触らせて♡」と言われた。
もう1人は家を買う時にお世話になった銀行の人。
夫が契約書にサインする場に同席して、諸々の手続きが終わったあと。
世間話タイムみたいなところで「お腹大きくなりましたね、何ヶ月でしたっけ?」。
誰か別のお客の奥さんと勘違いしていたようだ。
悪意はないのかもしれない。
しかし悪意がないからこそグサッとくるものがあった。
その時着ていた服はいずれもワンピースで、ウエストの切り替えがないものだった。
それらのワンピースは捨てた。
そのうち1着はお気に入りのお店の、少し高いワンピースだった。
だが、もう着られない、着るのが怖いと思い捨てた。
それ以後はウエストの切り替えがあるものじゃないと買えなくなった。
そのあたりから、お洒落が楽しくなくなった。
ナンパやらストーカーやら、そんなものは出会ったことがない。
痩せていた時ですら。
私は相当醜いのだろうか。
今は肥満も加わって、「微笑ましい妊婦さん」になっているのだろうか。
昔から子どもが苦手で産む気はさらさらない。
「妊婦さん」に憧れたことなど一度もないのに。
人は悪意なく他人の楽しみを奪う。
トラウマを植えつける。
自分も悪意なく他人を傷付けているのかもしれない。
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