俺独自のゲームワールド[俺独ゲー]3-4 〜魔人襲撃編〜

同刻…
「エルガゴームに頼まれてんだ。ちょっとやられてくれないかい?」
ミランは地下でキースが閉じ込められている牢屋の前で、階段に座っていたマスクの男が出した毒ガスを浴びた。
「ミラン!ゴホッゴホッ!何だこのガス!?ゴホゴホッ。」
キースは牢屋の中から扉を叩くがミランは毒ガスを吸ってしまったのかフラフラと倒れる。
「ゴホッゴホッ、(これは魔法?[デバフガードの魔法衣]を来てるのに毒にかかったわね。弱体化する魔法を効きにくくする魔法衣だから魔法以外の攻撃ね。)私に何をしたの。」
「ありゃ?俺の[毒煙(ヴェノム)]を喰らって喋れるなんて。すごいな。俺の[毒腐]は相手の特性を無視して弱体化できる毒を発生させる能力だ。君の服は[デバフガードの魔法衣]かな?それも無意味だよ。俺の能力は[毒腐の魔人]だ。魔法じゃないからな。」
「毒腐の魔人!?あんたもエルガゴームの仲間だったの!?ゴホゴホッ。」
「ああ、俺は[毒腐の魔人]ザクス・カマラーダ。一時同盟という形でエルガゴームと協力してんだ。まあこの界域を共同で管理するってだけの同盟だけどな。」
ザクスは顔の前面を覆い隠すガスマスクをかきながら倒れ込むミランを見ていた。するとザクスがしゃがみ、ミランの顔を覗き込みながら興味深そうに声を上げた。
「ありゃ。君、ライト家の人間だろ?そうだよな?黒髪に緑の目。その特徴は。」
「ゴホッ、だから何よ!ゴホゴホッ」
「ライト家って言ったら魔法使いの名家じゃねーか?なんか面白い魔法見せてくれよ。」
ザクスは階段に背中をもたれさせてミランの魔法を期待しているようだ。しかしミランの持っている[乱魔法]は使用する魔力が少ない為魔法を早く撃てる代わりにランダムな魔法が出てくるというスキル。これは品のない魔法だと言われてきた。

5歳の時、私のスキルが初めて発現した。そのスキルは[乱魔法]。両親はともに困惑した。魔法使いの名家であるミラン家で初めての乱魔法だとミランに伝えた。しかし乱魔法は、自分の好きなタイミングで好きな魔法を使えるという魔法使いのアドバンテージを満たしていない。
望む魔法を出す事ができないからであった。魔法使いの1番求められるものは[自由度]だ。その自由度が乱魔法には無かった。その為、上級魔法使いからは[劣化魔法]や、[下級魔法]と呼ばれていた。その事を知り、私は魔法学校に行くのを躊躇って家に引き篭もるようになっていた。自分の魔法のせいにして逃げた自分も許せなかった。私は、魔法使い試験に出てこの魔法でも合格できる事を証明したかったのだろうと今となったら分かる。魔法使い試験では運良く出て欲しい魔法が乱魔法によって出た為、B級魔法使い試験に合格することができた。そうやって自分の魔法にも強みがある事に気づく事ができたのだ。ケイゴも言ってくれた。「羨ましい」と。ケイゴのように乱魔法を良く見てくれる者もいる。今はこんなにこの魔法が好きになったのだ。そしてこれからもこの魔法で戦っていく以上、こんなところで負けてる訳にはいかない!!
「[乱魔法・ダブル]!!」
私は倒れたまま新しい魔法を発動した。この魔法は通常の乱魔法より詠唱に時間がかかるが、ランダムな2つの魔法を融合させて放つ技である。打ち消し合わない魔法同士であれば、そのまま合体して相手にぶつけられる。
今回は炎と雷が同時に出た。その名も…
炎雷!!」
ボオッ!!バリバリっ!!
ザクスの全身を炎雷が包み、爆発が起きた。その影響かガスの濃度が薄くなり、力が戻ってきた。
「今のうちに…!」
ミランは急いで近くの鍵掛けにあったキースの牢屋の鍵をとり、キースを出す事に成功した。
「ありがとなミラン…!助かったぜ!」
「ええ…でも今ので決着が着いたとは思えないわね。」
爆破の煙が晴れてくるとさっきザクスがいたところには紫色のジェルの物があった。そのジェルが剥がれ落ち、中からザクスが現れた。
「ふぃー!あぶねーあぶねー。あんな爆発まともに喰らったらやっべぇなぁ。びっくりしたぜ。」
「(……!ザクスの腕!さっきまでは無かった火傷が!少し当たったみたいね。)キース、戦えそう?」
「ああ。と、言いたいところだが、生憎俺様の愛用品のナイフが無いんだ。これじゃあ戦え…」
「はい。さっき洞窟に落ちてたのを拾っておいたわよ。」
ミランはキースに洞窟で拾ったキースのナイフを投げた。(刃はしまってあります。ご安心ください。
「おっ!ナイスゥ!これなら戦えるぜぇ!」
ザクスは2人を前にしてさっきより楽しそうになった。
「ククク、すごいなぁ!連携がとれている!俺たちの同盟とは大違いだ!少しはエルガゴームも見習ってほしいもんだよ!」
ザクスは手からさっきとは違う紫色の液体を出した。
「俺も魔人だ!そう簡単には勝てねーぞ!いっちょやるかぁ!!」
「行くわよキース!」「そうこなくっちゃな!」
作戦なんてないが、とにかくザクスの意識を奪ってここから脱出しケイゴ達と合流するのが目的だ。倒せなくても良い。ここから脱出する猶予を得る為に戦うのだ。
「[毒煙波(ベノムウェーブ)]!!」
毒の煙が波のようにこっちに流れ込む。
「キース!煙は上に上がっていくものよ!屈んで避けて!」
「了か…ぐはぁっ!!」
屈んだ瞬間に煙が下に流れ、キースの顔に流れた。
「ごめーーん!!」
「[毒煙波]は俺の技なんだ。動きを変えられないとでも思ってたのか?」
キースは毒煙をしっかり吸ってしまったのだろうが、それでも起き上がりザクスに向かってナイフを突きつけた。
「[ダガークロス]!!」
十時型に斬りつける技だが、ザクスに触れる直前にさっきザクスの全身を包んでいたジェルがナイフを止めた。
「何っ!?刃が…進まねぇ!」
ジェルは柔らかそうな見た目してる割にゴムのように反発して刃がなかなか進まなかった。
「ククク。刃が通らねぇーだろ。一回引いてみな。」
「くそ。そうするしかないな…って、あれ?ジェルにくっついて…取れねぇ!!」
ナイフをジェルが包み込みベタベタにされていた。
「[乱魔法]!!」
ミランがザクスに向けて風の魔法を撃ったが、それすらもザクスのジェルによって止められる。
「ククク、残念だったな。魔人にここまで相手出来ただけ、かなり強かったと思うぜ。でも俺の勝ちだ。お前らの足にジェルが引っ付いてんだろ?」
ザクスは表情の見えない顔で笑って、2人の足元を指さしてくる。2人は自身の足元を見るとジェルが足を取り込み、足を一歩も動かせなくなっていた。
「…っ!!こんなに実力差があるなんて…!」
「くそ!こんなところじゃ終われねぇのに!」
「毒煙を喰らってしばらく寝ててくれ。安心しろ。体に害は無い、ただの睡眠ガスだ。」
そう言い、ザクスが手を伸ばしガスを出そうとした。それを見たキースとミランは顔を見合わせて頷いた。
「「もう無理だ!!」」
「あ?どうした突然。」
「俺様達じゃ相手にならない!」
「後は任せたわよ!」
「??誰に任せるって?」
その瞬間ザクスの頭の後ろに黒い穴が開き、勢いよく誰かが飛び出してきた。それを見たザクスはベルジュだと勘違いした。
「…っ!!?びっくりさせんなよベルジュ。突然出てきて何のつもりだ…あ?ベルジュじゃね…」
「サラマンドロー(火炎之番人)」
ボオッ!!
「「ケイゴ!!」」
「待たせたな!お前ら!」
ジュ〜…
ザクスのジェルが焼きつくされ、またもやザクスは火傷を負った。するとガスマスクの紐が焼き切れ、マスクが落ちた。
「まさか…同盟相手にも見せた事ねぇ顔を敵に見られるなんてな…!」
その顔は右半分が爛れ、鋭い目つきをしている男だった。だが爛々と光った目でケイゴを見据える。
「お前、ケイゴって言うのか!さぁ!楽しませてくれ!ケイゴ!お前面白そうだからな!」
あぁ!俺の仲間に手を出したらただじゃおかねぇって事思い知らせてやるよ!

3-4  完

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