しごとのはなし その① 輸出入実務
本業のはなしです。
わたしのキャリアは大きくわけて3つ。
せっかくなのでそれぞれについて3回にわけて書いていこうとおもいます。
※大学卒業後すぐテレビコマーシャルをつくる仕事をしていましたが、その後のキャリアに直接的なインパクトがないため割愛しています
①「輸出入実務」
忘れもしない25歳の初夏。派遣会社に登録し「未経験でもやる気があって英語ができる」という条件の外資系物流の求人に「英語ができない」くせにやる気だけあって挑戦。
集団面談で英文の業務書類を読まされたのですが、わたしの前が帰国子女のかただったのが幸いしました。お題は北米在住の個人宛の貨物に添付された送り状。電話番号、郵便番号、番地の読み上げの場合は一桁ずつ区切るだけでもOKなので素直にゼロからナインまで大きな声でしゃべり、帰国子女の英語の特徴(主に強弱とリズム)を聞いたまま真似して合格。
勤務開始して担当エリアが割り振られ、わたしは厚木エリアに。米軍基地があるためか英語を話すお客様も多く、問い合わせされても早口の英語で何度聞き返しても意味が分からず「FXXK!(察してください禁止用語です)」とののしられ、こりゃ本気で勉強しないとやばいぞと真剣に習い始めました。
集団面談で一緒だった帰国子女以外にも同時期の派遣社員グループには英語が堪能なかたがごろごろしていたので、積極的に彼女彼らの真似をしながらも自主練ならぬGABA(当時、自由が丘にあった語学学校)に通いました。
外資系の職場はわたしのような派遣社員にも平等に接してくれ、社員に混じって「国際航空貨物取扱士(IATA)」に合格したときには受験料を負担してくれました。世界中の都市コード、空港コード、トランジットや法令、輸入規制について英語で出題されるので、過去問をやるだけでもかなり鍛えられた気がします。
資格もとり、もっといろいろな貨物を扱ってみたいなとおもいメーカーの物流部門やフォワーダーに移りましたが、この1社目での経験がどこに行ってもわたしを助けてくれました。実際にその後お世話になったほぼ全ての職場でここの物流サービスをつかっているため「XXといえば山田さん」というタグがつき、旧職場と現職場をつなぐハブとしてどちらからも重宝がられました。
今の職場に至っては他部署にまで噂が拡がって「XXについてご相談なんですが、山田さんに訊けってアドバイスされて」と開発サンプルの輸入時期には内線がよくかかってきます。旧職場でも嬉しいことに「うちのチームはみんな山田さんのことを知ってますよ!」と辞めたあともご縁が続き、ちょっとした頼み事であったり、急ぎの手配のときにはすぐさま関連部署のサポートがはいります。
当時の時給は1,450円。20年近く経ったいまでも活用できるスキルを1年で身につけられたことを考えると価値は3,000円かそれ以上ありました。仕事はお金「だけで」選ぶな、という意味がわが身に置き換えるとよくわかります。特に若いうちはその後の人生につながる「知見」や「関係」に時間を割いたほうがいいとおもいます。
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はなしを戻しましょう。
輸出入のしごとは原則、公用語である「英語」ができること。モノ(商品)・紙(書類)・金(費用)の流れを理解していること、が必要です。
海外商品開発の新人さんの失敗あるあるとしては上代(商品の販売価格)を設定するときに輸入諸掛に含まれるものがよくわからないまま決めてしまい、あとからべらぼうに費用がかかることが発覚・・・というものがあります。
具体的には。現地での卸価格に対し、輸送手段や資材、必要手続き、検品(検針)さらには関税率と仕入量によって指数が変わります。そこを考慮しないとえらいことになるんですね。
赤字くらいで済むならまだなんとかなるのですが、そもそも輸入規制がある原材料の商品をうっかり輸入して通関でひっかかり許可がおりず全量廃棄(しかも有償で)という涙しかこぼれない事案もあります。
昨今ではドライバー不足問題もあり、せっかく空港や港湾についた貨物の引き取り車両の手配がとれないという悩ましい問題があります。実際に港に行くとずらっと並ぶ4トン車や2トン車のなかは年配のかたばかり。この先どうなるんだろうなと考えると、抜本的な輸送手段の見直しが求められているのが現実です。
他法令をよく知らない担当者との仕事は組成かデータシートをまずメーカーから取り寄せてもらい、該当省庁に確認からはじまります。わたしはJETROはじめ専門機関とのやりとり自体に喜びを感じるので、おそらくこの仕事が向いているのでしょう。カケンやBOKEN、食品分析センターといった理系の専門職の皆さんとの確認業務に知的好奇心を刺激されてやみません。
・・・長くなりました(笑)
40歳を過ぎ、現職場でも最も頼りにされているのがこのキャリアです。経験がいきる分野であること、関連するサービスに精通していること、が理由としてあげられます。年数を重ねるたびになにかを蓄積できるような仕事を選ぶと、歳をとることが楽しみになります。
最近では個人的に相談をいただくケースもあります。もしこの記事を読んでくださった皆さんのなかで輸入か輸出に興味があるかた、いらっしゃれましたらそっとご相談くださいね。
次回は②商品づくりについて書きます!
トリスと金麦と一人娘(2023 春から大学生になり、巣立ちます)をこよなく愛する48歳。ぜひどこかで一緒に飲みたいですね。