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供養

お母さんへ

あなたの期待するような感謝と光に満ち溢れた優しい愛の言葉はきっとここには並ばないでしょう。

ここまで育ててきてくれてお金をかけてくれて、そういった面では不自由なく過ごしてきました。

それはとても幸せなことです。恵まれていることです。

しかし、私はあなたに対してどうしても埋められない溝を抱えているのです。感謝と共に憎しみを抱えているのです。

あなたは私のことをたしかに愛しているでしょう。

小さい頃から私の手を引き導いて、怪我をしないよう辛い思いをしないよう心を配ってくれました。

しかし、私が道に迷い思い悩み立ち止まった時にあなたは自分の信じる道へ正しいと思う道へ私のことを引きずり縛り付けようとしました。

私の幸せを願いながらも私のことは見てくれませんでした。

それでも、その世界から飛び出した私をあなたは世界から隠し恥じました。

愛とはなんでしょう。

私もまたあなたを愛しているのでしょう。

だからこそ、

今まで愛を受けてきた期間に比べればほんの少しの、その少しのだけど強烈な私という存在への否定がなによりも強く根深く心に残り苦しいのです。許せないのです。

最近は笑い合って話すことも増えました。

家族でテレビを見ながら笑い合いながら過ごす夕食の時間にあなたは幾度となく「幸せだなぁ」と呟きますね。

その度に私は身勝手ながら傷ついています。

私をこんなにも深く傷つけたことなど無かったかのように幸せを噛み締めてるあなたを見ると無性に悲しくなります。

私はこれからも一生、この家族の中に入っていけないのだと。同じ幸せを噛み締めることはないのだと心底感じるのです。

この傷は私が私にかけている呪いです。

あなたに不幸になってほしいわけじゃない、ただ感謝されて当たり前だと思わないでほしい。

私を深く傷つけたことを心に留めて生きてほしい。

私はなんて子どもなのでしょう。


あなたの心を

同じように根深く強く傷つけたいとは思っていません。


だけどいつか、

巡り巡ってこの手紙があなたの元に届いたとき

ほんの少しでも心に小さい傷を残せればいいなと思います。






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