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次男ひとりで初めてのバスの旅〜実行当日、次男の成長に泣きそうになった。

前回のあらすじ

隣市のプール教室からひとりでバスで帰ることになった次男(小5)
初めて歩く道、初めてのバス乗り場、初めて乗るバスと全く土地勘のない場所で親が持たせた地図とバス情報だけで挑む。


さて、プール教室当日がやってきた。

往路は車で送って行く。

運転しながら「忘れ物はない?」「バス乗り場までの道は覚えた?」「わからなくなったら駅員さんとか店員さんに聞くのよ」と心配のあまりあれこれ言ってしまう私。

助手席の次男はお財布代わりのポーチのチャックをジーっと開けたり閉めたり遊びながら余裕の表情。

その中にジュースかお菓子買えるように200円入れてあるからね、と話しているうちに、駄菓子屋ならともかくスーパーで200円って買えるものあまりないのでは?と心配になってきた。

「100円追加で渡すわ!帰りに300円分好きなもの買っていいよ!」

小学生にとって300円はかなり嬉しい金額。

「えー、ラッキー!毎回300円もらえるならずっとバスで帰ろっかなー!」

ニッコニコの次男に、なんでそんなに楽観的でいられるの……と脱力してしまった。

と、そこでバスカードを購入したものの使い方を説明してないことに気付く。
急いでスマホでバス会社HPの「初めてご利用される方へ」ページを見せて予習させる。
全くバスに乗ったことがないので乗車時にカードを通すことも降車時に精算することも知らないのである。

そうこうしている間にプール教室に到着。
私は仕事へ、ここからは次男ひとり。

「頑張ってね…!!」

「はいはーい、バイバーイ、バイバァーーイ」

かなり思いのこもった私の言葉になんとも気の抜けた適当な言葉を返された。
そして職場へと車を走らせながら助手席に光るものを発見。

アッッッ、100円玉!!

さっき追加で渡した100円、早速落としてるじゃないか!
おおいに不安を煽られながらの勤務開始となった。


バタバタと仕事を片付けているうちにプール教室の終わる時間が過ぎていることに気付く。

教室からバス乗り場まで大人で徒歩20分、子供なら30分近くかかるだろうか。バスに乗る前にお菓子を買うと言っていたから、まだバスには乗っていないかな。

そんなことを考えながらふとスマホを見るとメール通知が。

バス乗り場の近所に住む親戚から「バスに乗り込む次男くんを見かけたよ」と。

「××駅行きのバスに」

××駅。

××駅?

えっ……ええっ?!?!

自宅とは全く違う方向のバスーーー!!!

ど、どうして。いや見間違いの可能性もある。どのバスに乗ったか確実なことはわからない。

しかし本当にそのバスに乗っていたら。


もう仕事どころではない。
しかし仕事はしなければならない。

ミスしないよう必死で集中しながら頭の中は見知らぬ道を行く次男が浮かび冷や汗が出てくる。
とはいえ携帯を持っていない次男に連絡をとることはできないから次男が今どこにいるかなんてわからないし、今すぐ仕事を抜けることもできない。

今の自分にできることはない。

イレギュラーなことが起きたときの対処方法はいくつか話してある。
困ったときのお助けポーチに数千円と自宅住所と親の電話番号。駅員さんや店員さんに相談し電話を借りるか、タクシーも可。

しかし私の携帯に着信は来ていない。


そうして1時間が過ぎた。
正しいバスに乗っていればとっくに帰宅しているはずの時間だ。

少し仕事を抜けて自宅に電話をかけさせてもらう。

……出ない。

もう一度。

……出ない。

そこで仕事に呼ばれる。勤務中だ、仕事しなければ。
寄り道しているだけかもしれない。もう少し様子を見よう。


30分経った。

再度自宅に電話する。


「はいもしもしー、なぁにー?」

出た!次男だ!!
いつもどおりのお調子者の次男の声を聞いた瞬間その場に座り込みそうになってしまった。

「帰ってこれたんやね、大丈夫やった?」

「うん、さっき帰ったでー。いけた、いけた〜」

軽い調子で答える次男。
寄り道して遅くなってただけ?親戚の目撃情報は間違いだったのかな?

「途中何もなかった?順調に帰れたの?」

「……へへ、ちょっと間違った〜」

やっぱ違うバス乗ってるじゃん!!
あぁ、帰ってきてくれて良かった!!

「お母さんが帰ったら詳しく教えてな!よく頑張った!おつかれさま!!」

そこから猛スピードで仕事を片付け急いで帰宅した。
そして次男から話を聞いた。

バス乗り場までは全く迷わず歩いて到着。
お菓子を買おうとしてお金が少ないことに気づいたが、ちゃんと計算してジュースとお菓子を買った。

そしてバス乗り場へ。
6つの乗り場のうち自宅方面へのバスが出ているのは3番、4番乗り場。
その3番乗り場から違う方面へのバスも出ていて、間違って乗ってしまったらしい。

でも乗ってすぐに間違いに気づき、1つ目の停留所で下車。
そこから歩いてもとのバス乗り場まで戻り、正しいバスに乗って帰ってきたとのこと。


間違いに気づいて自分で対処したんだ。えらい。

その間違って降りた停留所からもとの乗り場まで調べると徒歩20分はかかりそうである。プール教室1時間半の後、バス乗り場まで徒歩30分、知らない道をさらに20分歩いたことに。

よく頑張ったなぁ……お母さん泣きそうだよ。

次男は失敗を話すのが照れくさいようで言葉少な。

「別にぃ、ふつうにいけたで」

なんでもない顔で話してくれた。

知らない場所で連絡手段もなく不安だっただろうに。
いつまでも小さい子のように思っていたけど、自分で考えて行動できるようになっていたんだね。

「でもちょっと疲れて帰りのバスですこーしだけ寝ちゃったー」

そりゃそうだよねぇー!がんばったもんねー!

ちょっとリッチなコンビニスイーツを買ってきて二人で食べた。


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