◆目指せ暫定国土最東端②/ミドル夫婦の車中泊de道の駅めぐり
1.いよいよ本土最東端へ
現状の日本国土最東端・納沙布岬を目指して始めたこの旅も、2日目。
目覚めはイマイチだったものの、朝の明治公園の風景は美しかった。
新鮮な空気を吸い込んで気持ちを切り替えたわたしたちは、とりあえず周辺を散歩してみることに決めたのだった。
あ、ちなみに前記事はコチラです⬇️⬇️
根室市の【明治公園】は、過去に『日本の歴史公園100選』や『近代化産業遺産』にも選ばれたことのある名所で、産業遺産の認定物である古い3基のサイロやバーベキュー広場、噴水や子供向け遊具スペースなどを有する広大な公園だ。
ちょうど宿泊した日は雨上がりの気持ちの良い風が吹いていて、ジョギングや散歩を楽しむ観光客や地元の方々の姿を数多く見かけた。
比較対象物がないので判りにくいが、このサイロは現在の北海道のあちこちで見かける酪農のサイロよりはるかに大きく、かなりの迫力を醸し出している。
何しろ景色はキレイで静か、その上設備まで完璧とくれば、確かに車中泊オススメスポットと呼ばれるのも頷けるのでありました。
公園散策のあとは、いよいよ納沙布岬を目指すことになった。
明治公園からは、たったの30分弱。
全体的に建物が低く、案外坂も多い市街を通りながら走り続けると、他の岬の多分に漏れず風力発電の風車が立ち並ぶ沼だらけの道を経て、納沙布岬に至る。
岬が近づくにつれ、やはりというか何というか、どんどん霧が出てきてしまった。
しまいには濃霧注意報まで出てしまい、つくづくと海の景色に縁のない自分たちに溜息が出る。
場所的にはそろそろ歯舞群島が見えてくるはずのあたりを走り始めてもなお真っ白な霧の中で、ちょっぴりしんみりしてしまった。
納沙布岬はしかし、先端の方まで地味に街があった。
途中で見かけた歯舞漁協は大きく、はるか岬の先端近くまで駐在所があるのには驚いた。
治安良くないのかな…?
結局朝の8時前には岬周辺にたどり着いたのだが、早くも開いている食堂もあり、観光地の商魂逞しさが垣間見えて微笑ましい。
とりあえず、まずは北海道最初の灯台とやらを見に行ってみることにした。
灯台自体は最初に置かれた当時のものというわけではないようだが、それなりに古いようで、中は立入禁止になっていた。
裏に回ると【納沙布岬野鳥観察舎】という小さな小屋があり、そちらは入ることができる。
とりあえず中に入ってみたのだが、何しろ海は大荒れの荒れ荒れな上に濃霧だったので、観察する野鳥の姿もそれほど見ることができなかった。
北海道最古の灯台をあとにして少し歩くと、いよいよ日本の暫定国土最東端、納沙布岬に至る。
看板には『根室十景 納沙布岬』とあり、最東端の記述がない。
そういえば日本最東端の碑というものがないね、と言ったら夫が『それはあくまでも今の実効支配区域の話だからじゃない?』と言った。
そうか。ここに碑なんて建てたら、北方領土を諦めたことになるのだな。
宗谷岬もだけど、他国との隣接区域は本当に考えさせられることが多い。
実際にこの目でこの土地を見ると、どこぞの議員みたいに簡単に『北方領土なんて、くれてやればいい』なんてやすやすと言えない気持ちになってくる。
最東端は、あくまでも暫定なのだな。
納沙布岬の周辺には、このような政治的匂いを感じさせるモニュメントが至るところに点在している。
まぁ、確かに右も左も思想を表出させるにはうってつけの場所なのだろう。
しかしなあ。それもそれで地域住民の人は大変だろうなぁ、とすっかりお気の毒になってしまった。
いくら海を隔てているとは言え『国境の隣接地』というものが孕んでいる諸問題をまざまざと見せつけられるような思いがする。
あれ?てか…
本土最東端のモニュメントあったわ!!
わたしの感傷を返してちょうだい??
更に公園のような場所を進んでいくと、そこにはあの有名なばかでかモニュメント【四島の架け橋】もあった。ちょっと距離感がバグるほどの大きさである。
晴れた日ならあちらからも目視できるのかなあ…などと考えながら、せっかくここまで来たので、とりあえず岬の食堂で食事でもしよう、という運びになった。
先述したように、納沙布岬周辺は結構先端まで集落のようなものがぽつぽつとあり、突端付近には食堂や公共施設も点在している。
到着した8時前には、すでに岬の食堂は『営業中』の幟を掲げており、明らかに観光客と思しき先客の姿も数件見受けられた。
まぁ、価格は全体的に観光地価格なのだが、出てきたご主人の何とも言えないのんびりとしたお人柄溢れる接客トークに癒され『トロさんま丼』『花咲ガニ鉄砲汁』『毛ガニ鉄砲汁』を注文する。
根室というとイコール蟹!!となりそうなものだが、根室港はさんまの水揚げでも屈指らしく、このトロさんま丼は本当に美味しかった。
新鮮で歯ごたえのある身と、タレ、白髪ねぎが臭みを消して絶妙な仕上がり。
ただ…やはりと言うべきか、鉄砲汁は幼い頃からガチのやつを食してる道民的には微妙と言わざるを得ない感じであった。
んまぁ、一度茹でて冷凍したやつなのか何なのか、ダシはまったくもって味が出てなかったと思う。
とは言え身はパンパンに詰まってたので、ダシを楽しむより身を突っつきたい人には良いのかも知れない。
ご飯のあとは、お土産屋さんでどの旅行でも恒例として購入しているご当地マグネットを購入した。
納沙布岬のお土産屋さんは些かぶっきらぼうな感じではあったが、ラッコのマグネットが可愛かったので騒いでいると、お会計の時に「ラッコ好きなの?あんなん、こっからでもたまに見えるよ」と教えてくれた。
何でも納沙布岬から見えるラッコは『千島ラッコ』と言い、日本で生育されている『アラスカラッコ』よりもはるかに体が大きく、存在感があるらしい。
「昨日もいたよ」というお言葉を頼りにそこらじゅうの海という海を30分以上眺めてみたのだが、空は少しずつ晴れてきたにも関わらず、ラッコも島も見えなかったので、ここいらで断念することにした。
2.【道の駅 おだいとう】から野付半島めぐり~【道の駅 麻周温泉】
次に目指したのは【道の駅 おだいとう】だ。
ちなみに『おだいとう』は『尾岱沼』と書く。
変わった地名だな?と思って調べてみたところ、どうも【野付湾】の別名らしく、水深が2〜5mというこの比較的浅い湾のことを昔の人が『沼』と呼んだとしても不思議はない感じはしたが、由来を見つけることはできなかった。
さて、いざ納沙布岬を離れようとした段になって、空はにわかに晴れ始めた。本当に海との相性がいまひとつな我々なのである。
納沙布岬から野付半島に至るには、元きた道を一度戻って高規格道路を通り、国道44号線から前日に通った【道の駅 スワン44ねむろ】を経由して、国道243号線に乗る。
ここへ至る頃には、空はさっきまでの暴風と霧雨が嘘のように晴れ、夏まるだしの景色となった。
しかし納沙布岬からの道のりで驚いたことだが、すれ違う車のキャンピングカー率の高いこと!
車中泊は本当にブームなんだなあ、と改めて思い知らされるなどした。
そうこうしているうちに、車は平均していなてえ別海市街に差し掛かる。
そこから更に海岸線の道を進んでいくと…
うおー!!!宗谷岬アタックからの悲願だった島が…!!島が見える…!
ここまでの道のりは、本当に長かった…
樺太…見えない、利尻…見えない、ここへきてやっと、わたしたちは初めて「海の向こうに島がある」という風景を目にすることができたのだった。
そうか…あれが国後島か…
気温は、さっきまでの肌寒さから打って変わって一気に34度を記録していた。
それでも爽やかな風の吹き渡るその海を、わたしたちはパーキングに車を停めて、ややしばらく眺めていた。
日本最大の砂嘴・野付半島と国後島がコラボする野付湾のその風景は、一生忘れられないものになりそうだった。
そこからまもなくで、わたしたちは【道の駅 おだいとう】に到着した。
【道の駅 おだいとう】は、全長26kmにも及ぶ日本最大の砂嘴・野付半島を臨む野付湾=尾岱沼の畔にあり、納沙布岬からは車で約1時間半ほどの距離だ。
全体的にはこじんまりとした印象だが、着いてすぐの駐車場には四島返還を叫ぶ銅像があり、スンッと背筋が伸びるような感じがする。
しかし、そのすぐ横にはでけえホルスタインを象ったベンチなどがあり、ものすごい温度差にいささか脱力する。
いやあ、うん。観光地だもんな。大事だよ。こういうのも大事。
この道の駅では、来る前から目をつけていたものがあった。
それが日本一の大きさを誇るという野付産のホタテ!!
何しろあらゆる貝類の中で一番好きなものがホタテのわたくし。これはもう絶対に外すわけにはいかないのだ。
事前情報では、この道の駅で名物の「ジャンボホタテバーガー」が食べられるという触れ込みだったが、スタッフの方に訪ねてみたところ、それは【野付半島ネイチャーセンター】というところに行かなければ食べられないのだという。
ちょっとガッカリしかけたが、まぁ行けば食べられるなら問題ない。
とりあえず前菜的に、まずは『野付産ジャンボホタテフライ/3個 ¥1000』を頂いてみることにした。
調理してから揚げ始めるシステムになっているようで、出てくるまでには数分を要したが…このホタテ……
やばい。やばいしか出てこないくらい美味い。
なにしろとにかくでかいのである。
比較対象と一緒に写真を撮らなかったことが悔やまれるが、大袈裟でなくちょっと小さめな大人の手のひらくらいある。
それが粗目のパン粉を纏ってカラリと揚げられており、ひと口かじると程よい衣のさっくり感のあと、プリっと弾けるような貝柱の食感が歯の間で踊り、続いて中はちょっとレアに仕上げてあるため、トロンとしたホタテの甘みがおくちいっぱいに広がる。
いかん。これは無限に食べられるやつだ。
ここには他にもホタテ入りスープカレーなどがあり、昼時のせいもあってか、結構な人の入り具合だった。
このまま売店の側にいると、ついついホタテフライを「あと1個、あと1個」と注文しかねないので、展望台から尾岱沼の眺めを見てみることにする。
感無量で展望台を降りると、道の駅構内ではボランティアの人たちによる『野付半島に関するアンケート』が盛んに行われていた。
バイクで訪れた観光客の方々も、熱心に話を聞きながらアンケートに回答している。
わたしたちも特に時間制限があるわけではないので、些か長いそのアンケートに答えてゆくことにした。
アンケートの概要を大まかに説明すると『現状の野付半島をどう思うか』『観光資源としての価値を見出すことができるか』『野付半島がこの先消えてしまうとしたら、助けたい気持ちはあるか』といった感じの内容で、とにかく地元でも「この先の野付半島をどうして行きたいか」「どれくらいお金をかけて維持していくべきか」といった大きな問題に対して、確たる答えを見出せないでいる雰囲気が垣間見える。
野付半島は、前述したように『砂嘴』である。
砂嘴とは、長年の間に海流によって運ばれた砂が堆積して出来た地形のことで、しっかりした地盤がある陸地で出来た本物の『半島』と比較すると、元来がいかにも心許ない存在だ。
そんなわけで、温暖化による海面上昇や気候変動が叫ばれて久しい昨今、野付湾の恩恵を昔から受けているこの地域では、砂嘴の浸食が深刻な問題となっているらしい。
アンケートでは「例えば野付半島を見るために通行料を払うとしたらいくらくらいが妥当か?」というような質問もあった。
わたしは個人的に幼い頃、別海町を通った記憶が色濃く残っていたので、ある程度のお金を払ってでもノスタルジーに浸りたいという思いがあったが、特にそういった思い入れのない夫は、半島部分にそれほどのお金を払う価値があるだろうか?と首を傾げた。
実際に価値を感じられるかどうかの答えを出すためには、まずは突端近くまで行ってみるしかない。
そう結論づけ、わたしたちは野付半島まで足を延ばしてみることに決めた。
アンケートは蒸し暑い玄関付近で行われたので、とりあえずの小休止でソフトクリームを頂く。
地元産の別海牛乳を使って作られたというそれは、上品な練乳を思わせるコク深い風味があるにも関わらず、あとを引かずにさっぱりと食べられるソフトクリームだった。
ついでにと勢い余って購入した『べっかいのコーヒー屋さん』というコーヒー牛乳も、比較的あっさり目。更にさけるチーズもふんわりあっさりだったところを見ると、季節のせいもあるのか、別海牛乳は比較的さっぱりした牛乳なのかも知れないね、と元・酪農家の夫と頷き合った。
さて、いよいよ野付半島に向かって出発!と言う段になって、やはりと言うべきか何と言うべきか…
大粒の雨が降ってきた。
さっきまで34度あった気温も、車に戻ると23度。
はぁ??ものの1時間ちょっとで一気に気温が10度以上も落ちる??
意味わからん!!
「よほど俺たちに北方領土を見せたくない何者かがいるようだな…」と夫と2人で謎の寸劇を繰り広げながら、雨の中を進んでゆく。
野付半島に車が入ると、画像では判りにくいが、両側が海の一本道という日常離れした風景になってくる。
ひたすらに海沿いのため、晴れた日ならさぞ素晴らしい景色かと思うが、この日はどちらかと言えば雲の模様を見るのにうってつけの日となったようだ。
途中、雨の境界線が海に降り注ぐ不思議な光景と出会う。
しかしここまで来て、わたしたちはふと考え込んでしまった。
もし、ここが有料道路だったら来ただろうか…?
いや、確かに日常では見難い風景だから、一度は多少のお金を払ってでも見てみたいと思うのかも知れない。
でもそうなったら、リピートは難しいのかも知れないな…という結論に至った。
何しろ島はここまで来なくても見えるのだし、平たく言うと、この場所にはこれ以上観光客を惹きつけるものが他には何もない。
もちろん、環境的商業的漁業的価値はあるだろうし、なくなってもいいとは絶対に思わないのだけれど…。
『砂嘴』という大いなる自然の気まぐれとも言うべき恵みの地を、果たして人間のちっぽけな力などでどれだけ維持できるものなのだろう?
例えば何億、何十億、何百億を注ぎ込んだところで、年々地球規模の問題で侵食され続けている全長26kmもの巨大な自然の建造物を、それほど長く保てるのだろうか…?という根本的な疑問にぶち当たってしまったのである。
そんなことを夫と議論しているうちに、車は【野付半島ネイチャーセンター】へたどり着いた。
そういえばあちこちで適度な量の北海シマエビ料理を探していたのだが、ここへきてやっと『北海シマエビのボイル・5本入』というメニューに辿り着くことができた。
もう何十年も昔の話なので記憶も定かではないのだが、その昔、夏休みになると家族で釣り旅行をしていた頃、別海町を通ったことがあった。
確かその頃は、道端のあちこちに露天や直売所みたいなものがあって、もっと気軽に北海シマエビを食べられたような気がするんだけど…。
しかし、今回の旅では冷凍の大入り北海シマエビに出会うことはあっても、こうしてボイルに出会うのは初めてのことだったのだ。
お値段は、この5匹で1100円。で、お味はと言うと…
うん、さすがに濃厚!
むぎゅっと締まった身はぷりっとして食べ応えがあり、殊に頭部分に入っている味噌は、身と一緒に食べると旨味も増して最高に贅沢な風味だ。
まぁ、秒で食べ終わっちゃったからね!!これで北海シマエビは思い残すことはないね!!5匹で1100円!もう食べることもないであろう!
続いては、ホタテフライに続いて念願だった有名ご当地グルメ『別海ジャンボホタテバーガー』
メニューのそばに置いてあった説明書を見ると、何とこのバーガー、自分で組み立てるのが醍醐味らしい。
でも、めんどくさいので組み立てたやつを頼み、そんなにたくさん食べられないので半分に切ってもらってしまった。空気読めなくてごめんなさい。
結論から言うと、さっとローストしたパンにプリっとホタテがみっしり詰まったホタテ春巻き的なものを挟んだこのバーガー、確かご当地グルメコンテストでも受賞歴があると聞いたことがあるが、さすがの貫禄ともいうべきお味でした。
ちょっとコ〇ダ珈琲あたりにありそげな美味しさだったね。
ちなみに『別海ジャンボホタテバーガー』は、単品で980円。
このメニューをダメ押しとして、わたしの中のナンバーワンホタテは野付産で確定してしまったのだった。
すっかりおなかがいっぱいになったあとは、二階の展示スペースへ。
ここでは、野付半島周辺の歴史や生態を学べるようになっている。
中でも興味深かったのは、野付半島にその昔存在したのだという伝説の街【キラク】の逸話だ。
文献などに記録されているわけではないが、確かにこの辺りは国後島へ渡るための中継地点として栄えた過去があるらしく、平成の発掘調査では番屋跡と思われる遺構や生活用品などが見つかったのだそうだ。
ロマンの乏しい現代に於いて『砂の半島に存在した幻の街』とは、何とも想像を搔き立てるテーマである。
ちなみに、二階には展望ブースもあるが、望遠鏡は有料となっているのでご注意されたし。
余談だが、わたしはこのスペースで隣に夫がいると思い込み、ずっと知らないおじさんに野付半島の夜明けについて語り続けていた。ハッと振り向いたときの、おじさんの気の毒そうな眼差しが忘れられない。
ネイチャーセンターの駐車場からは、半島の先端の方まで更に3kmほど進めるようになっているらしかったが、天候も天候だったためにここで引き返すことにした。
幻の街の遺構でもあったら面白かったのかも知れないんだけどなあ。
そしてまぁ。
わたしたちの旅ではよくあることだが、引き返そうと決めたとたんに空は少しずつ晴れてきた。
野付半島は、どちらかと言えば帰り道の眺めの方が良いかも知れない。
本土の知床半島、別海、国後島を臨み、両脇は海。羅臼岳もしっかりよく見える。
まぁ、晴れた日じゃないと、この景色の真価は問えないのかもな…などと話しながら、ここからわたしたちは野付半島に別れを告げ、今夜の宿泊地である【道の駅 阿寒丹頂の里 RVパーク】を目指すことにした。
ナビをセットすると、ここから【道の駅 阿寒丹頂の里】は車で約2時間半ほどの距離である。
これまでとは打って変わって内陸をゆく中標津⇒弟子屈の経路は何となく見覚えがあったため改めて調べてみると、やはり【道の駅 摩周温泉】を経由する道であった。
早速ナビに経由地を追加し、そのままどんどん進んでゆく。
摩周温泉までの道のりは、北海道では割と見慣れた山道が続いた。
途中で通った中標津町は割と都会で、回転ずしの名店【根室・花まる】の看板も目に入ったが、せっかくここまで来たのだから札幌にも支店があるチェーン店は我慢しよう!と断念。
更にトコトコ進んでゆくと、何と途中の牧草地で夫が野ヅルを発見した!
実を言うと、近年は冬になるとわたしたちの街にも鶴がやってくることが増えたのだが、まさかこんな真夏に、しかもこんな間近でつがいの鶴を見る機会に恵まれるとは思ってもみなかったので、大層驚いた。
二羽の鶴は仲睦まじそうに、てくてくと並んで歩きながら森の方へ向かってゆく。
あの後姿をじっと見ていると、確かに何らかの幸せを呼び込んでくれる鳥にされても仕方がないのかも知れないな…。
そうこうしているうちに、車はあれよあれよと言う間に弟子屈町に入り、いよいよ【道の駅 摩周温泉】に到着した。
この道の駅は、近場に一大観光スポットの摩周湖があり、温泉施設も近接している上にオリジナルメニューや地盤産品も豊富なことから、北海道でも人気が高い道の駅だ。
足湯コーナーなどもあり、わたしたちが訪れたときは、地元の方と思しき親子連れがキャッキャと足湯を楽しんでいた。
館内は観光案内所との併設となっており、行った時にはちょうどフォトギャラリーなども開催されていた。
とにかく施設がべらぼうにキレイで趣があるので、見学するだけでもちょっぴり楽しい。
ちなみに、こちらの道の駅には『くりーむ童話』さんというアイスクリームのお店の支店が入っており、様々なフレーバーのジェラートやソフトクリームを楽しむことができる。
中でも、過去にご当地アイスグランプリで最高金賞を受賞したこともあるという『桜餅ジェラート』は絶品!
ほんのりとした桜フレーバーに絶妙な塩気が効いていて、つぶつぶ食感を残すもち米まで入っているというのだから驚きだ。とにかく一度は食べてみて欲しいご当地アイスである。
また、たまたま時期が良かったのかも知れないが、ソフトクリームは地元産の『摩周ルビー』という品種のイチゴを85%も使用したソフトクリームで、こちらも大変味がよかったのでオススメしておきたい。
こうして【道の駅 摩周温泉】を堪能し、お土産も購入したわたしたちは、今夜の宿泊地である【道の駅 阿寒丹頂の里 RVパーク】へと本格的に足を向けたのであった。
3.【道の駅 阿寒丹頂の里 RVパーク】~【国際ツルセンター】~【釧路湿原】
摩周温泉から阿寒丹頂の里までは、車で約1時間。
道道53号線を南下して突き当たった274号線を鶴居村方面に抜けて、240号線との合流を更に少し南下する。
55号線はひたすら山道の丘陵地帯で、牛があちこちで散見された。
鶴居村を抜けて阿寒に差し掛かると、途端に巨大なデントコーン畑が眼前に現れる。
山の多い日高地方で農家を営んでいた夫は、その広さにただただ驚嘆していた。
ところで【阿寒丹頂の里】と聞くと、いかにも阿寒湖から近そうに思えるところだが、実は【道の駅 阿寒丹頂の里】は、阿寒湖からは相当離れた釧路寄りの、南の方にある。
その昔の市町村合併で、阿寒町と音別町が釧路市に組み込まれたためなのか、ここらあたりの距離感のバグっぽさはちょっと不思議だ。
しかしまぁ阿寒湖はまたの機会に立ち寄る予定なので、今回はおとなしくこちら方面を回ってゆく。
結局【道の駅 阿寒丹頂の里】に到着したのは、閉館間際の18時すこし前だった。
ここは温泉施設と完全にくっついた道の駅で、隣には野菜などの直売所もあるほか、小さいながらもRVパークも併設されている。
この日の朝、色々あって目覚めが悪かったために、急遽朝の6時すぎにRVパークを予約したのだが、スペースはすでに先客で埋まっていた。
とりあえずさらっと道の駅を下見して、食事を摂ることにする。
こちらのRVパークは、一般の駐車スペースより少しばかりトイレが遠く、無料の車中泊ご遠慮くださいスペースにばちばちのキャンピングカーがゴロゴロ停まっていて、ほんの少しの理不尽感を感じることを除けば最高に素晴らしい車中泊施設だった。
料金は1500円と一見お高めに見えるが、一人分の温泉入浴券+ドリンク1杯無料もしくはお食事20%OFF券がついてくる。もちろんゴミも捨てられて、もう少し追加料金を出せば電源も確保できるのだから、かなり優良と言うべきなのではないだろうか。
「ほとんどのお客様は、無料ドリンクで1杯600円(だったかな)のビールを頼まれます」と係の方は笑っておられたが、それに入浴券もつけたら1100円なので、実質400円でRVパークを利用していることになる。
初めてのRVパークが大変太っ腹な施設だったことに感謝しつつ、アルコールが飲めないわたしたちは、有難くお食事20%OFF券を使わせて頂くことにしたのだった。
レストランは、ちょうど夕飯時だったために結構な混み具合。
フロントそばにある待合席で、確か15分ほど待ったと思う。
鹿肉料理などの観光客向けメニューもあったが、とりあえずせっかく釧路に来たんだし、と、夫は釧路の有名B級グルメ『スパカツ』を注文した。
それじゃあわたしも見た事がないものを…と、『中華カツ丼』を注文してみる。
昨日食した根室名物の『エスカロップ』は「バターライス+カツ+デミグラスソース」だったが、釧路名物の『スパカツ』は「パスタ+カツ+ミートソース」である。
考えるまでもなく、相違点はベースがパスタかご飯か、ソースがデミグラスかミートか、と言ったところなのだが、両メニューの類似性に釧路市と根室市の関係性が垣間見えるようで、しみじみと面白い。
味に関して言うと、今回は圧倒的に根室市のエスカロップに軍配が上がったが、スパカツの方は麺が太くてもちもちと歯ごたえもよく、濃厚なミートソースと合い美味しかった。
そして中華風カツ丼。
こちらは着丼してみると、白いご飯の上に生レタスがもりっと敷いてある上に、薄いカツ、それに何の具も入っていない味気薄な中華風のタレがかかっているだけの代物で、何と言うか「どうして中華風でイケると思った…?」と思わざるを得なかった。
しかし何はさておき、ここはRVパーク利用のため20%オフなのである。
それで全てを良しとすることにした。
食事のあとは、いったん車に戻って準備し、入浴券をもらった温泉に入った。
道の駅隣接の【丹頂の里温泉 赤いベレーのお湯】は、お湯数も少なく、いかにも地元密着型の小ぢんまりとした温泉だ。
泉質はぬるんとしているが上がり心地はさっぱりで、汗はそれほど出ないのが夏向きだと思われた。
実を言うと、ここの温泉には貸し切り風呂があるとネットに書いてあったので、本当は仲良く貸し切り風呂にでも入って、旅の序盤から地味にギスギスしていた空気を回復したいと目論んでいたのだが、着いた時にはもう予約がいっぱいだったため、諦めた。
お風呂のあとは蒸し暑い車内に戻り、結局また汗を流す。
夏に入ってからの車中泊では、夫が買っておいてくれた車用の網戸キットが大活躍だった。
まぁ完全に涼しくなるわけでもないけれど、ないよりはかなり良かったので、バッテリーや扇風機までは必要ないと感じている車中泊民志望の方にはぜひオススメしておきたい。
そんなわけで、ギクシャク感を拭えなかった車中では、それほど会話もなかった。
愛犬がいなくなってからの旅は楽しくもあったが、やはり狭い空間で2人きりになることが増えたせいか、ぶつかり合いも必然的に増えることになった。
自宅からは車で4時間以上。距離にして約240kmも離れた山奥の道の駅で、わたしは何だかしみじみと虚しい気持ちを噛み殺していたのだ。
しかし、前日はあまりよく眠れなかったせいか、気づいた時には深い眠りに落ち、あっという間に朝を迎えていた。
夕方辿り着いた時にはよく観察していなかったのだが、改めて朝あちこちを見回してみると【道の駅 阿寒丹頂の里】は温泉施設だけでなく、散策路やキャンプ場とも近接していた。
周囲に泊まっていた車中泊民も早朝から散歩を楽しんでいるようで、そこかしこににこやかな家族連れや、それを嬉しそうに見上げながら追いかけるイッヌたちの姿が散見された。
虹の橋の向こうにいる愛娘愛犬を思い出し、少し物寂しい気分になりつつも、わたしたちものろのろとお散歩へと赴く。
2人並んで歩いているうちに何となく手を繋いだりなどして、昨日までささくれていた気持ちも少しずつ落ち着いてきたのだから、やはり自然は偉大だと言わざるを得ない。
新鮮な朝の空気をしっかり楽しんだあとは、車に戻って帰路につく本日の予定などを軽く確認した。
とりあえず、釧路湿原だけは何としても寄って帰りたい。それに、来る途中でスタンプを押し漏らしていた【道の駅 しらぬか恋問】もできればゲットしておきたいところだ。
時刻は朝の9時半すぎ。
とりあえず、夜までに帰宅すれば良いとなると、まだ時間には充分な余裕がある。
まずはRVパークのすぐ真向いにある【阿寒国際ツルセンター】でも見学してみようじゃないか、という運びになった。
【阿寒国際ツルセンター】は、入場料480円。
決してお高くはないのだが、受付のおすすめ上手なお姉さんの魔力により、結局寄れるかどうかも解らない5施設合同のフリーパスをうっかり購入してしまった。
結論から言うと、ツルセンターを合わせて2施設しか行かなかったので、約70円ほどが赤字となってしまったのだが、時間に余裕がある方なら5施設の入場料合計2500円ほどのところが1030円で手に入るフリーパスなので、ぜひ上手にご活用頂ければと思う。
正直なところ、単なる暇つぶし感覚で立ち寄った施設ではあったけれど、少しばかりうらぶれた雰囲気も含めてそれなりに楽しめたので、480円の入場料を払う価値はあったと思う。
ここに来なければ知ることのできなかったツルの生態が、なかなかに興味深かった。
丹頂鶴といえば、だいたいテレビなどの映像で見る時には雪景色を背景にしていることが多いため、てっきり寒いところを求めて移動する渡り鳥かと思っていたのだが、釧路のツルは餌付けの結果すっかり定住するようになったのだと言う。
また、日本に生息しているツルのほとんどは釧路でやんわりと生育されるようになっているそうで、冬になるとこの近辺に集まってくるそうだが、暖かい季節はあちこちに分散しているらしく、なるほど妙なところで野ヅルと遭遇するわけだ!と深く納得した。
あとひとつ、ツルに関しては衝撃的だったことがある。
日本では、鶴と言えば何となく縁起の良い鳥のイメージで、それはおそらく「ツルは生涯パートナーを変えない」という、どこかで聞いた話も多分に影響しているのではないかと思うのだが、阿寒国際ツルセンターの文春砲によると、何とツルも浮気をすることがあるらしい。
そんなん聞きたくなかった!
ガチャン〇ンの中身くらい知りたくなかった!
と、大声上げて駄々をこねたいくらいの衝撃だったが、もういい年のおばさんなので、駄々をこねるのはやめておいた。
ともあれ、この施設の展示物は全体的に手作り感があって、観る者をほのぼのとした気持ちにさせてくれるあたたかさがあった。
屋外にはツルの飼育場もあり、ヒナや丹頂以外のツルにも会うことができた。
不思議なことに、ここはこれだけたくさんのツルに恵まれているのに、わざわざ他の施設から借りてきているツルなどもいるそうで、本当に隅から隅までツル尽くしの場所であった。
中には、飼育員に恋をしてしまったゆえに、どんなツルにも靡かないという一途なやつなどもいて、最後までツルフルコースを楽しめる場所だった。
余程の鳥嫌いでもない限りは、おなかいっぱいになるまでこのデカい鳥のことを学べるので、好奇心&知識欲旺盛なお子さま連れにもぜひおすすめしたい。
ここからは、いよいよラストの見せ場となる予定の釧路湿原展望台を目指すことになった。
阿寒国際ツルセンターからは、車で約26分。
比較的ドライブしやすい田舎道を進んでゆくと、周囲は背の低い植物が密集した湿地帯の様相を徐々に帯びはじめ、やがて車は混み混みの【釧路湿原展望台】に到着した。
あちこちを歩き始めて知ったことだが、どうも道北及び道東の観光地では、かなりの確率で妙に人馴れした鹿と遭遇する。
この釧路湿原展望台も例に漏れず、敷地の芝生では悠々と草を食んでいる鹿どもがおり、観光客の目を和ませていた。もしかすると準公務員か何かで、芝生の草の手入れを請け負っているのかも知れない。
館内では、湿原に生息している生き物の紹介や地質に関する展示などがあり、たくさんの観光客で賑わっていた。
釧路湿原は、世界自然遺産に登録された時から一度行ってみたい場所であった。
しかし地元民にそのことを告げると、だいたいみんな少しだけ眉を顰めて「えー?それほどの場所でもないよ…?」みたいなことを言われていたのだが、実際に来てみた結果、何となくその理由がわかったような気がする。
まぁ、なんだ。
日頃アホみたいな自然に取り囲まれている北海道民からすると、この景色はパッと見、地元の山らへんと何がどうそんなに違うかよくわからんのである。
想像では、すぐに目の前に広がる湿地帯に張り巡らされた桟橋みたいな道をてくてく歩いてそこかしこの沼を観察できる場所…みたいなイメージだったのだが、それをするにはどうもきちんとした装備がいる様子で、軽率にでかけて行くような場所ではないらしい。
しかし、一応施設のすぐそばには散策路のようなものの案内看板があったので、せっかくだからと行ってみることにした。
施設近くの散策路は、ほんとにごくごくありふれた北海道の林道であった。
途中の道にはタヌキの巣穴があって、中から這い出てきたコロコロのタヌキの子供に観光客の皆さまが人だかりを作っていたりしたが、実家の裏山もこんな感じなので、野生動物への餌付けの可能性に震えつつ、どんどん先に行く。
散策の途中、湿原の生態を説明する看板がいたるところに設置されていたが、これらは悲しいほどに色褪せていて、中には読むのが困難になりつつあるものもあった。
これだけの観光客を呼び込む世界自然遺産なのに、どうも予算は充分じゃないのかな…などとあらぬ心配をしながら進んでゆくと、やっとテレビで見たことがある展望台にたどり着く。
うん!!!
飽きるな!!
これはなるほど、1度行った人たちが「それほどでもない」となってしまう釧路湿原の雄大な眺めなんだろうなあ。
散策路は、短い方でほぼ1時間ほどのコースだった。
駐車場に向かって右回りと左回りどちらからでも行ける道ではあったが、わたしたちが選んだ順路は帰り道にどぎつい昇り階段があったので、できれば『木漏れ日の階段』部分は最初にクリアする方のめぐり方をオススメしておきたいと思う。
1時間のウォーキングのあとは、釧路湿原展望台の建物に戻って「丹頂シェイク/450円」なるものを頂いた。
シンプルに丹頂をイメージした、赤い苺がちょこんと乗ったストロベリーフレーバーのシェイクだったが、うっすらと汗をかいた体には妙にしみ込んで、地味に美味しく感じられた。
4.釧路市内~【道の駅 しらぬか恋問】~チーズ工房【白糠酪恵舎】~帰宅
釧路湿原を後にしようと決めた頃には、時計は11時半を回っていた。
いよいよこの旅ラストのランチとなるため、できればそろそろ海鮮を食べておきたい。
ネット検索の末、いくつか候補があがったが、結局釧路発祥の有名回転寿司【なごやか亭】で食事していくことにした。
釧路に来るまで知らなかったのだが、【なごやか亭】は釧路を発祥として現在は関西にまで出店先を広げ、札幌や帯広を始めとした道内の都市部にも複数の支店があるらしい。
わたしの周囲では【根室 花まる】や【トリトン】に比べるとかなり知名度が低く、恥ずかしながら道東を旅するまでは存在すらも知らなかった。
しかし実際に入ってみると、店構えもさることながら、非常に「ちゃんとした」メニュー作りにすっかりお気に入りになってしまった。
最初に食べたのは、こちらの『味噌のせ大海老』
文字通り丁寧に取り出された濃厚な海老みそがプリトロ大海老にちょこんと乗せられたメニューで、まんまと掴みを持って行かれてしまった。
まぁ、画像をご覧頂ければ何となく水準はお解り頂けることと思うが、ネタの良さは言わずもがな、メニューにかかる手間を惜しまない感じの良い回転寿司なのでした。
見つけた方はぜひ入ってみてください!
さて、ここでいよいよ釧路を離れようという段になって、夫が突然また「フォロワーさんが教えてくれた店に行ってみたい」と言い出した。
そこは釧路の海鮮直売所で、聞くところによると水族館と一体になったお店らしい。
水族館と一体に…? お魚屋さんが…?
一抹の不安を覚えつつ、海鮮直売所【釧之助】へ向かう。
辿り着いてみると、そこは今日明日限定の水族館無料開放で家族連れがひしめきあう、確かに「水族館とくっついた珍しい海鮮直売所」なのでありました。
水族館部分は、とにかく尋常じゃない行列だったので、入場は早々に諦めた。
写真はこれ以上撮ることは出来なかったが、それでも【釧之助】は寄る価値がある。
何しろ、とにかく海産物の品ぞろえが圧倒的であった。
生もの・冷凍の海鮮はもちろんのこと、自社ブランドの海産加工品や飲食ブースもあり、中でも売店で購入できる揚げたてのかまぼこはかなりのクオリティだった。ここからあとは帰るだけなので、クーラーボックスをフル活用して一気におみやげを見繕う。
購入してきた塩辛や松前漬けも大変美味しかったので、釧路近辺でお土産ものに困った人は、是非一度足を運んでみることをおすすめしたい。
さて、たっぷり買い物をしたあとは、高規格道路を使って30分のところにある【道の駅 しらぬか恋問】をラストの寄り道とした。
道の駅のガイドブックによると、こちらには地元のチーズ工房が手掛けているソフトクリームがあるという。最後にそれを食べて、この旅の締めくくりにしよう、と決めた。
【道の駅 しらぬか恋問】は、海沿いを走る国道38号線にある。
名前に『恋』が入っているため、おおよその方のご想像通り、全体的におばちゃんには些か気恥ずかしくなるような造りが特徴だ。
こちらは恋問海岸というロマンティックな名前の浜に建っているためこんな感じのアプローチになったようだが、現行の建物はもうすぐ取り壊されて新しい施設になる予定らしい。
これはこれで面白い気もするのだが、新しくて綺麗な道の駅が次々乱立する世相の中、色々思うところもあるのだろうなあ、と売店の方のお話を聞きながらしんみりしてしまった。
ちなみに、ここにあるはずだった【チーズ工房白糠酪恵舎】のソフトクリームは販売されていなかった。
スタッフの方にお尋ねしてみると、道の駅からは車で40分ほどかかる山の中にある工房まで行かないと、食べることができないらしい。
帰り道からは若干わき道に逸れることになってしまうのだが、ここまで来たら絶対に食べたい!ということになり、寄っていくことにした。
【チーズ工房白糠酪恵舎】は、結構な山奥にあった。
「いかにも職人」といった感じの、決して口数は多くないご主人がお店に出ており、些かつっけんどんな感じで応対してくださる。
評判は高いようで、それなりに辺鄙な場所にあるにも関わらず、次から次へとお客さんが来ていた。
自家製リコッタチーズがかかったホエイ入りのソフトクリームは、まさに絶品。絶妙なチーズの塩味が濃厚なソフトクリームと相まって、唯一無二の味わいをもたらしてくれる。
美味しすぎてはしゃぎながら感想を述べると、それまで無表情だったご店主が俄かにはにかみながらソフトクリームについて語りだしてくださったので、めちゃくちゃいいものを見たようなお得感があった。
当然のことながら、ソフトクリーム意外にも美味しそうなチーズがいくつか販売されていたので、サルーテという珍しい塩でコーティングされたハードタイプのチーズも購入する。
ここから、帰路は約3時間半。
最後はまた野ヅルに飛び出されたので、車から降りて写真を撮った。
仲良さげに歩くつがいのツルを「あれは本妻かな…?」などと眺めつつ、次の車中泊こそはケンカをしないよう、固く心に誓うのであった。
北海道内を旅慣れている人は、だいたい口を揃えて「道東はいいぞ」と言う。今回の旅で、そのことが何となく解った気がした。
道東はとにかく食べ物に恵まれ、ほぼハズレというハズレがなかった気がする。何しろ印象深い食べ物が多い。
それに、景色。
日高山脈を越えた先にあった風景は、わたしたちの日常にはないものも数多く、スケールが大きかった。
どうやら、道東を知らずして北海道を語ることはできないようだ。
生粋の道民であるわたしたちでさえそう思うのだから、外からやってきた観光客の方々が味わう感動はもっと大きいのだろう。
スタンプラリーを主目的とした車中泊旅だから、今までは割とスタンプを押したら終わりだと思っていたけれど。
とりあえず次もまた、道東方面を視野に入れようと話しながらの帰宅となったのでした。
ここまで長い旅日記に最後までお付き合い頂いた方がもし居られましたら、どうもありがとうございました!
それでは、このたびはこの辺で!
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