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◆ラブレター ~大好きな愛犬へ~

こゆき、18歳。
今朝からご飯を食べなくなって、夜中の3時からさっきまで、寝ても起きても辛そうにクンクン鳴いていた。
去年は、大きな乳がんの摘出手術を乗り越えて、元気だったのになあ。
ここ何日かで、一気に老けちゃったね。
でも、どんな風になっても、動けなくなっても、ままはこゆきちゃんが大好きだからね。

初めてこゆきと出会ったのは、薄雪が舞う初冬のことだったね。
あなたはままがお勤めしてる就労支援事業所の利用者さんの飼い犬でした。
買ってもらった犬用のネックレスをキラキラさせて、初めて出会うわたしを警戒していたっけ。

でも、それからほんの数ヵ月後。
あなたは、飼い主の利用者さんに連れられて会社にやってきた。
飼い主さんが「うちはお金がなくて、もう飼えないから、アサさんが飼ってくれないなら保健所に連れていく」と言った時には、度肝を抜かれました。

何も知らないあなたが飼い主さんの腕の中で、見たことのない場所を不安がって震えている姿を見たとき、激しい怒りと共に「絶対わたしがこの子を幸せにする!」って決めたよ。
初めてあなたを抱っこした時のあたたかさは、一生忘れません。

妹と、妹の旦那さん、妹の息子、そしてわたし。
知らない人たちと暮らすことには、最初とっても怯えていたね。
あなたは賢い子だから、簡単には人に心を許さなかったね。
だけど、少しずつ氷が解けて行くように安心して横で眠ってくれた日は、愛しくて可愛くて、本当に幸せな気持ちになりました。
本当に、ありがとうね。

前の飼い主さんには2歳って聞いてたのに、獣医さんに連れて行ったら「6歳だよ」と言われた時には二度目のびっくりを味わいました。
でも、すぐにそんなことはどうでも良くなったよ。
何歳でも、あなたはあなた。
わたしにとってはいつだって可愛い愛娘のような存在になったんだ。

お散歩に連れていくほど仲良しの
クジラのぬいぐるみ

うちに来てすぐ、あなたのおてての小さな出来物に気づいた時は、血の気が引いたなあ。
3ヶ月も経っていなかったっけね。
獣医さんに行ったら、皮膚がんの一種だと聞いて、本当にうちで引き取って良かったと思った。
麻酔にもキャンとも言わず耐えるあなたのことを、獣医さんが「我慢強い犬だなぁ」って、褒めてくれたっけね。
手術が終わって白い包帯を巻いた小さな小さなおててを見るたびに、ままは可哀想で涙がこぼれたよ。
でも、すぐに回復して、一緒にお散歩に行ったよね。

クールなあなたは、あんまり犬らしい遊びを好まなかった。
だから、妹ちゃんの投げるボールにも見向きもしなかったし、ままが振り回す紐にも、すぐ興味を失っていたよね。
そんなあなたのことを、つまらながった妹ちゃん一家には「可愛くなーい!」なんて言われてたけど、基本的には人にあんまり興味のないあなたが時折嬉しそうにしっぽをふりふりする姿が、ままは愛しくて愛しくてたまりませんでした。

なぜか生の人参が大好物で、買い物してきた袋ごと、咥えて抱えてたことがあったよね。
妹ちゃんのパンをいつの間にか自分のベッドに運んで、卵みたいにあたためてたこともあったなあ。
あなたはどこか上品で気高くて、食べたいものをどんなにそばに置いていても、勝手に袋をぐちゃぐちゃにして食べるようなことはしなかったね。
粗相も老犬になるまで滅多にしなかった。
本当に本当に手のかからないお利口さんだったよねえ。

前の犬は、ままが泣いているとそばに来て、大丈夫?ってぴったりくっついてくるような犬だったけど、あなたはままが泣いていても「何のこっちゃ」みたいな顔をして、知らんふりだったよね。
でも、そんな姿も愛くるしくて、いつも癒されてたよ。

寝るときは、いつも一緒で、今も一緒。
あなたのぬくもりを、死ぬまで一生感じていたいって、毎日思うよ。

結婚して引っ越す時も、大変な思いをさせちゃったよね。
ぱぱは当時完全なる猫派で、おまけに喘息もちのアレルギー体質。
最初は妹一家のところに置いていかなきゃいけないかと辛かったけど、あなたと離れるなんてあり得なかった。
だからぱぱにお願いして、一緒に暮らすことにはなったけど、その時期だけは一緒に寝られなくて、寂しい想いをさせちゃったことは、今でも申し訳なく思ってる。
でも結局ままは、ぱぱを置いてあなたと寝ることにしてしまいました。
だって、愛娘だもんね。

今となっては、ままを仲間はずれにしてあなたとデレデレしているぱぱを見るたびに笑ってしまいます。猫派が聞いて呆れるよねえ。
いつの間にか、ぱぱにとってもあなたは大切な愛娘みたいになってたんだよ。

ぱそこんしているぱぱの膝に乗って寝るの図

ままが抱っこしようとしてるのに、逃げてぱぱのとこに行くんだもの、そりゃあデレデレもするよね。
本当に、あなたは子供のいないわたしたち夫婦の天使なんだよ。

お散歩があんまり好きじゃなくて、10分も歩けばすぐに「抱っこ!」ってなるあなたを抱いて帰ってくる道のりは、まるで筋トレでした。
髪の毛にりぼんをつけようとしても、すぐにフルフルして飛ばしてしまう仕草も、可愛くて笑っちゃったよね。
無限に毛布をほりほりする動画も、永久に見てられる愛しさです。
今はもうおばあちゃんになってしまって、寝てるか、ご飯やおやつを食べているかしか出来なくなっちゃったけど、あの頃の姿も、今の姿も、ままにとっては変わらない愛しさに満ちています。

あとどれくらい一緒に居られるかわからないけど、ままはずーっと最後まであなたと一緒だからね。

すっかり起き上がるのも難しくなってしまったあなたにできることがあまりにも少なくて苦しくて、今、横でこれを書いてるよ。
なるべくそばにいるから、どうか、少しでも安らかに、思い残すことのないように、残された時間、たくさんわがままを言ってください。

大好きだよ。
居てくれて、ありがとう。
今日も一緒に寝ようね。

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